ガラパゴス化の「執事」1

日本にホテル学校はある。
専門学校だけでなく、大学もある。
さいきんでは、カジノ学校が盛況だという。
しかし、執事学校はない。

欧米では、いまでも執事は重要な職業で、そのニーズはたかい。
大邸宅に棲まう主人をささえるのが優秀な執事というのはほんとうで、さらに「従業員(執事)つき住宅」や、プライベート・ジェットの客室乗務員、ヨットの客室係、別荘のコックや従業員といった「細部化」した需要も当然視されている。

国王が棲まう宮殿並みのサービスレベル、あるいは最高級ホテル並のサービスレベルをもとめるなら、主人が支払う賃金も「年20万ドル」と突出する。
「執事」は最低でも年8万ドルが相場だというし、女性の主人に仕える女性の執事である「メイド」なら7万5千ドルからなので、ふつうにホテル従業員になるより、はるかに高額賃金である。

ここで注意したいのは、執事は単純労働の家事スタッフではないことだ。
「プロ」なのである。
それに、清掃だって「邸宅」ともなれば広大だから、素人がかんたんに請け負えるものではない。
だから、執事とはことなる「プロ」として優秀な家事スタッフも、年収では6万ドルから9万ドルが相場だ。

2018年から主婦のパート労働で、税金や社会保障を考慮すると「お得な上限」が年収150万円(約1万5千ドル)に増えたとはいえ、この金額の差はなにか?
国民を貧乏においやる施策のうえで、働けといわれているようなものだ。
ハワイでおきたホテル従業員のストライキは、「この仕事『だけ』で生活できる給料をよこせ」である。

雇用主からすればその負担額は、年間3万5千ドルから100万ドルを超えるひともいるという。
「100万ドル超え!」
自宅やプライベート空間への出費として、人件費だけでかるく1億円超えというのは、いったいどんなひとたちなのだろうか?

アメリカなら事業に成功した大富豪だろうし、ヨーロッパなら土地資産をたっぷり保有する貴族なのだろう。
以前、家内とベルギー旅行をしたときに宿泊した「シャトー・ホテル」は、公爵家の自宅で営業していたが、関東地方ほどの面積の国で、塀で囲われたこの邸宅内を一周する散歩コースは4時間だった。

ユーモア小説の大家ウッドハウスのジーヴス・シリーズは全14冊、英国が舞台という「典型」を世界にひろめた功績がある。その一冊がこれ。

小説にしろドラマにしろ、物語では超優秀な執事が登場して、難問をあっさり解決してしまうが、不思議なのは「労働条件」である。
劇中でこれを話題にしたらシラケるのだろうけど、読み手の「常識」を前提にしているのだろう。

わが国にも戦争に負けるまでは、貴族がいたから、執事もいたろう。
現在唯一というのが、「日本バトラー&コンシェルジュ」で、24時間3交替365日体制だと月額750万円(税別)になるというから、だいたい国際相場とおなじだ。
休日も考慮すると、3人体制ではなく4人でないとまわらない。

経済成長と共に、ほんらいは、日本人でも大富豪がもっといてよいのだが、かつて発表されていた「長者番付」という高額納税者リストには、土地を売った農家の名前がおどっていた。
宅地化のための売却だったから、その年一回だけの登場であった。

これをひとは「土地成金」といって、さげすんだ。
いまは、会社役員の「高額報酬」が怨嗟のネタになっている。
世界には、年収30億円以上のひとが5万人ほどいるのをしらないのだろう。4人家族なら20万人のお金持ちになる。
すると,一億円で高額だと批難されるものなのか?ケチなはなしではないか。

「格差」はいけないこと、という認識が強いのは「平等」意識のなせるわざだが、なにごとも「いきすぎる」と、かえってはなしがゆがむ。
「あるところからとる」のは、徴税役人の発想で、これを国民がすなおにみとめれば、金持ちになると損をする、というゆがみがおきる。

富裕層を「恨む」ようにばかり仕掛けるのは、日本も「恨の国」にしたいのかとうたがう。
そっちの方向ではなくて、どうしたらもっと稼げるのか?にいかないと、社会が二分化して固定してしまう。
「金持ちがいるから、われわれが貧乏なのだ」というのは、古典的革命思想そのものの恐ろしいかんがえかたである。

所得税をはらった後のおカネを原資に、土地と建物を担保に入れて住宅を購入する。
それで、この世を去ると、相続税がやってくるのは「理不尽である」とだれもいわない。
第一段階の所得税をもうはらって購入したのだ。「死亡」という理由で第二段階の税金を払わされる根拠はなにか?

それで、「二重課税」をみとめて相続税を廃止した国があるが、じつは富裕層が国外に逃げるのをふせぐ意味がある。ふつう、金持ちがいない国を「貧乏国」というのだ。
オーストラリア、ニュージーランド、香港、中国、シンガポール、マレーシア、タイ、ロシア、スイス、イタリア、モナコ、スェーデンがあって、金持ちがたくさんいそうな国であることがわかる。

ちなみに、アメリカには相続税の課税制度はあるが、基礎控除が6億円(夫婦で12億円)だから、ふつう一般人には及ばない。
金持ちをいじめるために増税したわが国は、3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)だから、悲しくなるほどおカネを貯めると損をする。

というより、一般人がふつうに課税されるという「平等」ができた。
おめでとう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください