クリミアと米国と日本

170年前、ロシアに対してオスマン・トルコ、イギリス、フランス、サルデーニャ(統一前のイタリアの一部)連合軍が戦ったのが「クリミア戦争」だった。
なんと、我々が知っている「イタリア」が統一されたのは、最近の1870年だ。

「エルサレム」の統治をオスマン・トルコに要求するということを口実にして、南下を図るロシアに、連合軍が対抗したのだった。
主戦場は、黒海に突き出すクリミア半島だったけど、太平洋のカムチャツカ半島にも及んでいる。

イギリス軍に従軍して、戦傷兵の看護にあたって大活躍し、「白衣の天使」となったのは、ナイチンゲールであった。
ただし、彼女は上流階級の子女で病弱であり、実は統計学者であったから、作戦のまずさによる兵の消耗に怒って、英軍の将軍を更迭させてもいる。

その後、彼女はロンドンの自室で療養しながら、英国政界の「フィクサー」となる、という凄いひとなのだ。

クリミア半島のややこしさは、そこに住んでいる住民の「民族」にあって、基本的には「ロシア人」なのである。
「ソ連」は、連邦国家ではあったけど、所詮はモスクワ中央による属国の連邦だったから、穀倉地帯のウクライナ共和国も、「一連畜生」であった。

それで、気前のよさと自身の権力誇示のために、スターリン(本名は、イオセブ・ベサリオニス・ゼ・ジュガシヴィリ:ジョージア出身)によって、この半島をウクライナに「くれてやった」のだった。

ちなみに、「グルジア」が「ジョージア」になったのは、「反ロシア」という事情がある。
広大な「中央アジア」もソ連の属国であった。

最近これらの国々(トルコ、アゼルバイジャン、カザフスタン、ウズベキスタン、キルギスの5カ国+トルクメニスタンとハンガリー)による、「チュルク諸国機構」が誕生し、ウイグル情勢に睨みをきかせ、「一帯一路」に楔をうった。

強権で一方的な輩には、集団で対抗する、という常道だ。
だから、強権で一方的な輩は、甘言を弄して「分断」を図るのも定道である。

ウクライナというのも複雑で、首都のキエフは、かつての「ロシア帝国」の首都でもあった。
ロシアの作曲家、ムソルグスキーの代表作で元はピアノ組曲である、『展覧会の絵』(オーケストラ編曲はラヴェルによる)での『キエフの大門』こそが、「首都」の証であった。

それに、クリミア半島の西側先っちょにある、「特別市セヴァストポリ」には、軍港があって、この市はなんと2014年に「独立」して、ロシアと条約を締結した後に「併合」されている。
これをウクライナが認めないのはわかるけど、「国連」も認めていない。

いまや「逆神」と化して、人類に禍をもたらすのが「国連」になったから、「正統」なのは、セヴァストポリの方で、手順を踏んで「併合」したロシアにあるから、あたかも、「朝鮮併合」と似ているので、我が国の立場ではロシアが正しいのだけど、「国連のポチ」が外務省なので、変なことになっている。

セヴァストポリ港を手にしたロシアは、「不凍港」を得たのである。

しかし、「黒海」というのは、イスタンブールが繁栄し滅亡したように、ボスポラス海峡が「入口・出口」の内海だから、いまでもトルコが押さえている。
ついでに、中央ヨーロッパの水上交通の要である「ドナウ川」も黒海にそそぐ。

1453年、東ローマ帝国の首都、コンスタンティノープル(イスタンブール)陥落の悲惨な掠奪のドラマは、攻めた側の大将が涙するほどの凄惨を極めた。

そんなわけで、反露の歴史的国民感情があるトルコが、ロシアを牽制してくれているといえるし、ロシアはトルコが邪魔でしょうがない。
そのトルコは、EU加盟をしたくてもできないが、NATOにはとっくに加盟(1952年)している。

エルドアン現大統領が、輸出のためにトルコリラの切り下げを推進したら、インフレが止まらない(20%弱)という事態になって、大揺れしている。

これを横目に、「ウクライナ疑惑」を抱えるのがアメリカの現職大統領で、「ロシアゲート疑惑」を晴らしているトランプ氏の攻勢がはじまった。
ちなみに、ウクライナ検察は、とっくにバイデン氏の子息を「起訴」しているのだ。

このひとは、ウクライナのエネルギー大手企業の役員に名を連ねていたけれど、「裏金」によるウクライナ政界工作をやっていた、というのが起訴理由である。
さらに、オバマ時代の副大統領だったバイデン氏は、ウクライナを公式訪問した際に、当時のウクライナ大統領に米軍撤退を示唆して、息子のビジネスを援護していたという「疑惑」は、スキャンダルの火種なのである。

日本人からしたら、えらく遠い世界の話に見えるけど、とっくにグローバル化が進んでいるので、どこでどうつながっているのか?がバカにならないレベルになっている。

風が吹くと桶屋が儲かる、というのは、もう笑い話ではない。

そのバイデン氏が大統領に就任した初日に出した「大統領令」で、純石油輸出国になっていたアメリカが、中東依存の輸入国になった。
それで、アメリカならずも我が国でもガソリンをはじめとした石油製品が大幅値上げとなっている。

ところが、いまや世界最大の石油産出国は、サウジアラビアではなくて、ロシアなのだ。
再生可能エネルギーにシフトしたドイツは、天気頼みなってエネルギーが自国でまかなえなくなった。

それで、燃やすものはロシア依存になって、燃やさない電気はフランスの原子力発電所の電気を買っている。

ドイツ人は、自分ちの電気がドイツ国内の原発の電気でないことで満足するという、阿呆ぶりを世界に示して、かつての同盟国として日本政府も憧れを禁じ得ない阿呆ぶりだ。

やっぱり、プーチンが笑っているにちがいない。
そのプーチン氏の動向を、「ソ連」を引き摺ったわが国のマスコミは、報じない、という惰性をまだやっている。

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