デリカシーに欠けるけど名店

「ご飯が旨い」で有名な店である。
精算時にレジ横にあった「店案内チラシ」を手に取った。
妙に残り僅かな枚数だったけど、「割引クーポンつき」だと教えてくれた。
「次回にこのチラシを持ってくれば10%割引しますよ」と。

そこで、「次回」チラシを持参して精算レジで差し出すと、店員さんはおもむろにクーポン部分を、「手でちぎって」保存用レシートにホチキス留めしたら、残りのチラシ本体をそのまま「棄てた」。

一歩まちがうと、クレームになるシーンである。

もちろん、店員さんが悪いのではない。
そうやって「処理しろ」と命じている店主や経営者が悪いのである。
では、どこが「不味いのか?」を分解してみよう。
複数箇所あるのだ。

先ずは、客に断りもなく「ちぎった」ことがある。
このチラシの「所有権」は、もはや「客にある」のだ。
店は、前回の精算時に客に渡したのだから、この時点で店のチラシの所有権は客に移ったことになる。

たとえ自分の店でつくったチラシといえども、店の自由にはならない。
これが、「所有権の絶対」という概念なのである。
そして、所有権の絶対なくして資本主義社会は成りたたない。
正規に購入した物品を、売主から簡単に返却を請求されたら困るのとおなじだ。

すると、この店員さんの「ちぎる」という行為も、持主に確認する必要があるのだ。
そして、もし「同意を得られなかった」ばあい、どうするのか?となるのだ。

なぜなら、このチラシの割引表示は、左下隅に点線で囲まれて「お会計10%オフ このチラシをご持参いただいたお客様はお会計時にお食事代10%値引き致します。」としか書いていないからである。
割引の「要件」としては、「このチラシの持参」しかないのだ。

しかも、手で「ちぎった」だけでなく、持参した客の同意なく、そのまま「棄て」てしまった。
まったく、所有権の絶対を失念しているのだ。

じつは、このチラシ、あんがいと製作費用がかかっていると推察できる。
両面フルカラー印刷で、写真を多用しているばかりか、オリジナル・デザインと思われる地図もある。
すなわち、プロの手がかかっている。

いったい何枚製作したのか?
そして、どのくらいの時間をかけて配付しきったのか?
わたしが手にしたときは、特段の案内はなく、自由に持ち帰らせるような配置だった。

ならば、何のために製作したのか?

よくわからない、というのがわたしの勝手なこたえである。
とにかく、有名店なのだ。
勝手に「想像」をめぐらせば、常連ではなく遠方からの客にアッピールするために製作したのではないか?

本人から話題として誰かにみせて欲しい。
ところが、製作にあたってプロの方から質問されたのではないか?
「割引」とかつけなくていいですか?と。

はなからかんがえていなかったけど、なるほどねぇ、になった、じゃぁつけよう、というその場の雰囲気で決めたようにおもえる。
プロの質問は、仕事上このところ「安さ」のアッピールとか、「値引きクーポン」をつける注文が多いから、単純に確認した「だけ」だったとおもう。

しかし、店側は、「プロがいうなら」になって、「割引」をつけることにした「だけ」だというストーリーだ。
これを裏づけるもう一つの「証拠」は、この店はHPを出していない。
つまり、「映像資産」は、チラシ用につくったものだけだろう。

そんなわけで、マーケティングにも役立たない、変なチラシになった。

すると、制作にあたったプロというのも、「印刷」のプロか?という想像の展開ができる。
しかしながら、とっくに「繁盛店」だから、新たな顧客づくりが必要なのか?
あるいは、業容の拡大を意図しているのか?

遠方から行かないといけない、わたしの個人的要望は、是非全国展開して欲しくなるし、外国にだって進出可能な「味」である。
けれども、主人はぜったいにそんなことはかんがえてもいないし、想像したことすらないはずだ。

もしや、税金対策で「宣伝費」を捻出したのかもしれない。

一方で、アバウトな店もある。
日本語がたどたどしい中華料理店だけど、注文時にサービス券を持っていないと告げると、一枚くれる。
餃子3個とか、春巻き1本とかの「サービス内容」が印刷されている。

次回注文時、このサービス券を渡して希望内容をいえば、たとえば餃子が3個無料でついてくる。
びっくりするのが、精算したとき、サービス券も返してくれるのだ。
「無限」につかえるという鷹揚さ。

なぜかこの店の近くに行って、それが食事時ならば、無意識に足が向く。
ただし、量があって嬉しい歳でもなくなったから、ちょっとヘビーなのが玉に瑕なのだ。

さて、たかがチラシというなかれ。
所有権の絶対もマーケティングの無視もはばからない店であっても、「旨い」から繁盛しているので「許されている」のだ。
味でひとを不機嫌にさせるような店だったら、たちまちにクレームではすまない「事件」になるだろう。

名店にだって、学んでいいことと悪いことがある。

ちなみに、事前に「スキャン」しておいたから、棄てられても余裕なのであった。

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