トラベルクロックの不思議

そのまま、旅行用の時計のはなしである。
携帯電話にはアラーム機能がついているから、いまはむかしほど売れないのかもしれない。
しかし、旅先のホテルなどで仕事をしようとすると,いがいと時計がへんな位置にあって、不便なのだ。

定宿で時計の位置がわかっていても、不便とおもえば持ち歩きたくなるし、はじめての宿ならなおさらだから、わたしの宿泊をともなう出張には、かばんのなかにトラベルクロックがはいっている。

講演会ならデジタル式を講演台におくと便利だから、そのときにはそれ用を持参する。
しかし、そうではないときや海外だと、圧倒的にアナログ式がよい。
時間をあわせるのに苦労がすくないからだ。
それに、海外だとさらに宿の時計の正確さがわからない、という不安もある。

むかし、イスタンブールのホテルで、モーニングコール(「Wake up Call」といわないと通じない)が遅れて、飛行場に駆け込んだことがあるから、海外で時間の正確さを確保するのは、自己責任だと痛感した。
もちろん、この宿の部屋に設置されていた時計は正確にうごいていなかったが、あんがいそれがいまでも「国際標準」なのだ。

さいきんになって、10年以上前に買った、折りたたみのアナログ式トラベルクロックの調子が悪くなってきた。
買い換えを検討していて気がついたのは、どうしたことか「ドンピシャ」にほしいものがみあたらないのである。

10年前とほとんど変わらないモデルが、進化せずに販売されているのはみつけた。
ここで止まっている。
止まっているのは時計ではなく、それを進化させる能力とそれに投じるまさに「時間」ではないか?
これはどうしたことか?

トラベルクロックなんていまさら「売れない」から、適当なものを販売しているのか?
いや、販売のまえに、どういった「設計思想」で設計され製造されているのかがわからないのだ。
いまどき、たかがトラベルクロック、ではあるが、されど「ない」となると黙っていられない。

安ければいい、という思想なのかともおもえるが、ドイツ製の電気ひげそりで有名なメーカーの「逸品」というふれこみの高級トラベルクロックもあるし、だれでもしっているブランドの高額商品もあるようだ。
しかし残念だが、わたしには「ドンピシャ」ではない。

ひげそりメーカーの「逸品」は、手をかざすとセンサーがはたらいてアラームが止まり、その後スヌーズ機能がはたらく、という機能がわたしには余計なのだ。
このセンサーにいったいいくら支払うことになるのか?

わたしにとって、この余計な機能がなければ、「ドンピシャ」にちかくなる。
ちかくなるけど、「ドンピシャ」ではない。
「厚み」も気に入らないからだ。

1000円程度のもので、コンパクトなのになぜか「電波時計」(国内対応)になっているものもある。
国内対応の電波時計を海外に持っていくと、誤作動のリスクがある。
購入者は国内「しか」旅行をしない、という設計思想なのだろうか?
どういうことなのか、わたしにはわからない。

わたしの要望は、折りたたみのアナログ式で、電波時計ではなく、ステップ音のしない「静音」式のもの、それに蓄光できるものがあればよい。これだけだ。
ところが,これが、探してもないのだ。

折りたたみがいいのは、その「薄さ」である。
かばんのなかに滑り込ませることができるのは、たいへん魅力だし、大型のスーツケースでも間仕切りのポケットにはいるから、小さくてもさがす必要がない便利さがある。

アナログ式がいいのは、海外の時間あわせと視認しやすさである。
デジタル式こそ、正確さが本領だから時間あわせはめったにしないくていいという方向だろう。
だから、デジタル式は、時間あわせが面倒でも頻度のなさですくわれている。

電波時計は上述のとおりのリスクがあるし、トラベルクロックで、そこまでの正確さは要求しない。
機械式ではなくて、ふつうのクオーツの精度があればことたりる。

ステップ式の時計は、「チッ、チッ」と、どうしても作動音が気になることがある。
出先でこれが気になりだすと、ねむれなくなる。
作動音が無音なのはデジタル式になるから、ここは妥協がひつようだが、それが「静音」タイプということだ。

暗くなれば自動的に秒針を止める機能の目覚まし時計はあるが、自動であろうが手動であろうがトラベルクロックのサイズでそこまではもとめない。

さいごは、針の視認性で、外国では室内照明が日本のように明るくないから、蓄光できるものがのぞましい。

欲をいえば、時間あわせのダイヤルが極小なのがこまる。
アラーム設定のダイヤルがおおきくつかい勝手がいいのはあるが、これも「国内」を意識しているのかしらないが、時間あわせがちいさすぎて面倒なのだ。
もうすこしおおきいものになればいい。

ついでに、電池も単4だとありがたい。
外国でボタン電池をさがすのは、日本のように容易ではないことがある。

それにしても、以上のようなリサーチは、とっくにできているはずなのに、どうしてかくも「ドンピシャ」な製品がみつからないのか?
単純に、機構や技術的な問題なのか?
それとも、やる気がないのか?

あるいは、価格が高くなって「売れない」という判断をしているのか?
もしそうなら、消費者をバカにしているか、作り手自身が製品をバカにしている。
「トラベルクロックなんて、こんなもんでいいだろう」と。
すると、これは、あいかわらずの「プロダクトアウト」ではないか?

上で紹介した、「逸品」のお値段は税込みで6,000円を超える。
けれども、その能書きは有名デザイナーの秀逸なデザインの説明ばかりだから、「プロダクトアウト」の域をこえているとはおもえない。
それが、わたしに余計なセンサーになっているのだ。

ちゃんとした製品を欲するものは、ちゃんと存在するのである。
それは、「マーケットイン」からうまれる。
わたしの要望する機能を満たすと、いったいおいくらになるのだろうか?
ぜひ、欲しいから、メーカー各位にはおしえてもらいたい。

もしかしたら、外国人観光客の日本土産になるかもしれない。
こういうのが欲しかった、と。
そのときは、ぜひ「MADE IN JAPAN」と刻印があってほしいものである。

安くて(適度に)いいものを大量に、というもう半世紀も前の、70年代の成功体験からの思想から脱却ができていない。
トラベルクロックが、意外なことをおしえてくれた。

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