リズ・チェイニー氏の除名処分

アメリカ共和党が動いている。

「反トランプ派」の急先鋒で、民主党ペロシ連邦下院議長が仕掛けた、議会内「1月6日委員会」の副委員長に、共和党員のまま就任したのがこのリズ・チェイニーというひとである。

もうすぐ12月なので、10ヶ月以上もトランプ氏の「犯罪」を追及している委員会なのだが、困ったことに民主党が用意した「証拠」が全部「事実と違う」と否定されてしまって、むしろ、民主党が「仕掛けた暴動なのではないか?」という疑惑すら浮き上がってきてしまっている。

彼女は、ブッシュ息子政権で副大統領をつとめた、ディック・チェイニーの長女であり、30才前半の若さで、同政権の国務副次官補(近東担当)にも就任している。
その後、2016年の連邦下院議員選挙に、ワイオミング州から立候補し当選して今日に至っている。

ただし、2013年に連邦上院議員選挙に出馬した際には、翌年に自ら「撤退」を表明することになったから、決して「順風満帆」ということではない。

さてこの度、その地元ワイオミング州の共和党から、来年の中間選挙における「共和党候補」としてという前に、党内予備選挙にさえ「出馬できない」旨の決定がなされた。
なんと、「党員として認めない」という決議がされた。

要は、「除名決議」である。

どうしてこうなるのか?といえば、彼女が「軍産複合体の申し子」であることが、ばれてしまったからである。
そもそも、ブッシュ親子が「軍産複合体」と結託した、「ネオコン」であって、父のディック・チェイニー氏は、ブッシュ父政権の国防長官だった。

ちなみに、ブッシュ息子大統領時代の国防長官は、あの、ラムズフェルド氏であった。
このひとは、ある意味正直で、産軍複合体の利益代表であることにはばからなかったし、自慢していた節まであった。

だから、あからさまな「戦争を欲する」姿は、外国である日本にいてもよくわかったので、現地では差し詰め「いっちゃっている」おじさんだったろう。

それでも、いちど成立した政権は、簡単にひっくり返ることはない。

ブッシュ父は、カーター政権以来珍しく2期目の選挙で落選し、クリントン政権に「移行」したことになっているけど、実は民主党も「産軍複合体」だから、似たもの同士なのである。
それで、ブッシュ家とクリントン家は仲がいい。

つまり、アメリカには3分割された勢力がある。
共和党は、「主流派と保守派」があって、民主党には「極左と穏健派」があるから4分割に見えるけど、共和党主流派と民主党穏健派は、バックが「産軍複合体」という意味で「お仲間」なのだ。

念のために「民主党穏健派」という「用語」だけれど、武器商人とか国際金融資本と結託した「戦争を欲する」ひとたちのことだから、ダブルスタンダードの言葉の綾に注意したい。
なお、戦後のアメリカ大統領で、任期中に戦争を「しなかった」のが、トランプ氏「ただひとり」であることが、「事実」なのである。

日本人が持つイメージとこの事実が「真逆」なのは、それだけマスコミ報道が、戦争を欲するひとたちの側にいることを示している。
「有事」となれば、テレビの視聴率が上がって、新聞も売れるからである。
だから、トランプ氏の「本物の平和主義」が、「危険」なのだ。

そんなわけで、リズ・チェイニー氏には、党内保守派の「突然変異」ともいえるトランプ氏が宿敵となる。
たいがいの政治家が「利権」を貪るのに対して、トランプ氏は本人が認める「十分な金持ち」だから、そんなものに興味が無い「変人」なのである。

このことの根底に、アメリカを建国した「清教徒」の流れがあることを忘れてはいけない。
共和党の歴史を遡れば、リンカーン大統領にあたって、さらにたどれば初代ワシントンに行きつく。

ワシントンは、アメリカに党派争いはない、と断言している。
なぜなら、建国を勝ち取った国民全員が「共和主義者」だからだ、と。
これが、アメリカという「共和国の本質」なのである。

日本では「共和党」を、金持ち優遇の党として認知されているきらいがあるのは、産軍複合体の利権にまみれたひとたちが、ときたま政権を得るからで、それをあろうことか共和党「主流派」と呼ぶのである。
建国以来の「共和主義=保守本流」の人々からしたら、まさに「笑止」なのだ。

しかしながら、はじめはヨーロッパから食うや食わずの移民がやってきて、せっかく新大陸にやってきたのに、やっぱり喰えないひとたちが多数になったら、民主党ができた。
だから、民主党が強い地域が、東西の沿岸部になったのである。

その意味で、南北戦争をやって共和党と闘ったはずの「南部」が、いま共和党の牙城なのは、歴史の皮肉である。
これには、かつての南部が、ヨーロッパ最貧のアイルランド系移民による成功と挫折というストーリーがある。

あの名作、『風と共に去りぬ』とは、まさにアイルランド系移民の「恨み節」なのだという、野口悠紀雄の指摘はぐさりとくる。
そのアイルランドが、ITと自由化によって、英国をも凌ぐ経済大国になったことを、現代アメリカ人は知っている。

そんなわけで、子供時代から、あたかも「子役」として、父親の選挙応援をしながら育ったリズ・チェイニー氏にとって、若かくして得た高位の「ふつう」が、まさにトランプ氏という変人によって崩壊の危機に立たされて、徹底抗戦した挙げ句の、地元からの「三行半」となったのである。

これを突きつけた地元の民意とは、彼女への「民意を知らないひと」という評価に過ぎない。

このシステムが、わが国に「ない」のである。

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