割引や値引きは経費である

ちょっとした備品の買い増しには極度の抵抗をするのに,割引や値引きには寛容なことがある.
とくに,クレームが原因のばあいは,その傾向がつよまる.

ところで,宿泊業では割引や値引きをどうやって「記録」しているのであろうか?
あるいは,だれの権限で可能なのか,あらかじめ「ルール」はきめてあるのだろうか?
そして,たとえば,この一年で,値引き額の総額や割引額の「総額」がわかるしくみはあるのだろうか?

と,問えば,おおくの企業で「あれ?」にならないか?

売上になってしまう

だから、記録は「記録しよう」という意志がなければのこらない.
だれの意志かといえば,それは経営者の意志である.
法律できまっている「決算」や「納税」とはべつに,経営者のために数字をまとめるしくみがないとできない.
だから、法律は「最低限」のルールなのである.

それは,「二重帳簿」である,といった経営者がいた.
コンサルタントとして「痛い」経験だ.
どんな数字をみたい,ではなく,決められた数字があればよい,という発想だった.
それで,数字をみているのか?と質問すれば,「みている」という.
みてわかるか?と質問すれば,「わかる」という.
なにがわかるかと質問したら,「赤字だ」といった経営者がいた.

婚礼はなんのための事業か?

上記の問題を,ホテルの婚礼事業にあてはめると,そらおそろしいことになる.
ホテル自体が婚礼で売り上げる項目は,部屋代と飲食代,飲食代にまつわるサービス料だ.
神官や巫女も,牧師も,司会者も,衣装代も,写真代も,引き出物も,照明・音響も,招待状の印刷代も,おおかた外部専門業者へ業務を委託している.だから,ホテルは,これら業者から手数料を得るのだが,それは委託料の支払いとの差額のことである.

お客とのやりとりで,割引や値引きをする,というのは,いったいどこの売上対象からなのか?というと,たいがいが,「部屋代」からになる.
その「部屋」こそ,婚礼需要の競争のために,大枚はたいて改修投資したのではなかったか?

つまり,ホテルは,専門業者に軒先をかしていると上から目線でいたら,いつのまにかリスクはすべて負担しているというありさまになっている.

数字をみるのではなく経営をみる

「数字が苦手」という経営者はおおい.
従業員や部下には,「苦手を克服する努力をしなさい」といっているのに,である.
このブログでなんども指摘している(おそらくこれからも,しつこく)が,その「苦手」の原因は,わかるはずのない納税用資料の損益計算書をみるからである.
わからないものをみて,わかったふりをしなければならないから「苦手」になる.
こんなもの,役に立たない,と決めればすっきりするのにである.

お節介な税理士先生が,お茶でも飲みながら,「このところ原価が上昇してますね」とか,「いやー社長,そろそろ長期固定比率を改善した方がいいですよ」なんて言ったりする.
それでどうする?が問題なのだ.
その答は,いわゆる財務諸表にはない.

財務諸表に記載するまえの,早い時期に,どうやって問題点を発見し手当てするかが経営なのだから,こうした行動をしていれば,他人からとやかくいわれる筋合いはない.
しかし,財務諸表に記載されてから気がついたのでは,まったく後手にまわっているのだ.

値引きや割引は,あらかじめ,のルールが重要で,そのルールにおいてどんな情報を記録するかを決めればよい.
つまり,ルールづくりが経営なのだ.
あとは,その記録を追求できるようにすれば,「総額」もわかるようになるだろう.

こんな努力もしないで,最近は単価があがらない,とボヤくだけなら誰にだって経営者はつとまる.

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