厚木アルカリ七沢温泉

神奈川県の有名温泉地といえば、「箱根」だ。
けれども、どういうわけか個人的に箱根が好きになれない。
「混雑」というイメージが先行してしまうのと、なんだかそのむかしの「雲助」たちの血が混じっているのか、いまだに「略奪的」な感じが払拭できないでいる。

それなりの年齢になって気がついたのは、箱根の温泉は火山性だけということではない「多様な性格」があることだ。
これが、ひとつの温泉地としての箱根の魅力なのだが、なんだかあんまり語られないのも違和感の源泉なのである。

火山性の温泉は、全国各地にある。
日本列島が火山列島だから、当たり前ではあるけれど、ところかわって豪州オーストラリア大陸や中国大陸にだって温泉は珍しい。
日本人のふつうが、あんがい世界のふつうではないことの例にもなる。

富士山を中心にした国立公園は、「富士箱根伊豆国立公園」という広大な地域で、1936年(昭和11年)に、十和田国立公園、吉野熊野国立公園、大山国立公園とともに指定された、わが国初である。

伊豆諸島が入っているのは、伊豆半島が「伊豆島」だったからだろう。
伊豆島が本州に衝突するのが、およそ100万年前だという。
その衝撃でできた地表の「皺」が、南・中央・北のそれぞれの「日本アルプス」である。

この衝突点に、三嶋大社が建立されているというから不思議である。
だれが、いつ、どうやって、この地だと特定するほどに気がついたのだろうか?
小田原から箱根越えをすれば、たどり着くのが三島である。

もっとも、全国に400あまりある「三島神社」の大本である三嶋大社の主神は、伊予の国「大山祇神社(おおやまずみじんじゃ)」からやってきたというから、はなしは簡単ではない。
それに、なぜか「伊豆」と「伊予」の双方が、相手を「本社」といっているのだ。

伊豆諸島の「造島」の神様には、なんだか複雑な経緯があるのである。

そんなわけで、伊豆(半)島は、いまだに「止まっていない」ため、年間4センチという結構なスピードで、本州を北西方向に押し続けている。
この方向に、箱根山、富士山、甲府盆地、そして南アルプスがある。
その、南アルプスに掘ろうという長大なトンネルが、中央リニアなのであって、静岡県知事が文句をいっている原因もこれだ。

地球のためにレジ袋を有料化するという、「人為」がどれほど地球によいかはしらないが、かなりの「利権」になることは確実なので、来月からの不便を強いられる我々の哀れは、無知と無気力ということの結果でもある。

そんな人間界のことなど関係なしに、火山の熱がふきだす酸性温泉と、本州の基盤はるか地下にもぐり込んだ伊豆島の織りなすみえない地質構造の複雑性が、箱根にもアルカリ性の温泉を噴出させているのだ。

伊豆島が本州に衝突するはるか前、丹沢島が本州に衝突して、丹沢山系となり、ひずみの「皺」は秩父となった。
秩父の山々の西側は、山梨県の笛吹川温熱帯で、こちらも強アルカリ性の温泉が噴き出ている。

昭和の大歓楽街、「石和温泉」はその南端付近にあたる。

人間の移動における時間距離という感覚からすれば、自動車交通が発達した現在でも、神奈川県中央の表丹沢を超える道路は存在しないから、厚木を出発しても、相模湖からかなりの迂回をしてようやく笛吹川にたどり着く。
こうして、表丹沢の厚木からおなじ泉質の笛吹川温熱帯まで、いまでも半日を要するような旅程である。

ましてや、自動車も道路も整備されていない、ついこの間をかんがえても、とてもおなじ地層から涌き出る「兄弟温泉」とはおもえなかっただろう。
そんな「つましさ」が、人間の営みであった。
逆にいえば、とてつもないエネルギーを内包しているのが地球なのである。

そういう意味で、とてつもない傲慢な態度をしているのが、現在の人間なのである。
自然環境を、いま生きている人間がコントロールできると信じ込むことが、すでにどうかしていると反省すべきなのだ。

すくなくても、「エネルギー保存の法則」や「質量保存の法則」を思いだせば、植物が二酸化炭素を蓄えるということはないし、地球の生物はすべて二酸化炭素を食べて生きていることに気がつかないといけない。
人間が食べる食糧のほとんどが、「炭水化物」という名の「炭素」なのであって、それは「二酸化炭素」を化学的に蓄えたものからできている。

だから、「低炭素社会」というのは、悪辣な「イデオロギー」でしかない。

そんな地球を感じるのが天然温泉だ。
神奈川県と山梨県に湧出する、強アルカリ性の温泉こそ、フィリピン・プレートが千葉県側の北米プレートと静岡県側のユーラシアプレートのはざまに沈み込むことでうまれる「恩恵」なのだ。

地球の壮大な営みのほんの一部に体を沈めることで、痛んだ神経と精神を癒やすことができる。
新宿から電車で一本、バスに乗ろうがタクシーにしようが、とんでもない場所がすぐそこにある。

厚木七沢温泉、おそるべし。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください