台湾承認という踏み絵

『台湾』なのか『中華民国』なのか?というややこしい問題も内包しているのだけれども、ここにきて一斉に「国家承認」というはなしが現実味をおびてきている。

豪州や欧州の流れもあるが、なんといってもアメリカ合衆国の動向が注目される。
この国は、「わが国とちがって」三権分立が確立しているから、日本のマスコミが混同する「政権=行政権」のはなしと「議会=立法府」のはなしは、ちゃんと分けておかないとわからなくなる。

台湾承認を進めているのは、政権ではなく議会の方なのだ。
もちろん、上下両院の議会には共和党と民主党の対立があるのだが、こと「台湾」というよりも「大陸」に対しての目線では、このところ両党共に一致している。

日本的ないいかただと、「挙国一致」の状態なのである。
ただし、議会のことである。
アメリカの行政は議会の決定に従う、という順番だから念のため。
わが国だと、行政が「挙国一致」になるので「挙国一致内閣」となる。

北京政府と国交回復したのは、共和党のニクソン政権だった。
このときのスターは、キッシンジャーということになっているけど、上に書いたように議会の承認がないと、大統領だって好きにはできない。
だから、ニクソンをして、この外交上の重要決定において、「怪物を育ててしまうのではないか」という懸念をもっていたという。

半世紀が経ったいま、ニクソンの「懸念」が、それどころか歴史的まちがいだったという結論へと議会では話が進んでいる。
政権側もこの流れに反することはなさそうだから、支持率で劣る現職には決断しやすい環境ができつつある。

もともと、「一つの中国」を要求されて、これをまるまる呑んだからできた米中国交正常化だったので、アメリカの同盟国はぜんぶがこの要求を呑み込んだのだった。それで、中華民国は国連の常任理事国を追われ、一斉に「断交」の憂き目にあった。

けれども、アメリカは、すぐさま『台湾関係法』という「国内法」をつくり、事実上の関係を維持してきた経緯がある。
日本もこれにならったが、法整備をしてはいない。
ゆえに、アメリカとはちがって、大陸から文句をいわれても「民間事業です」と言い切れたことを「よし」としている。

その国内法を強化しだしたのがアメリカ議会で、アメリカ政府高官が台湾高官との直接的な交流をするように命じた『台湾旅行法』を制定したし、最新の法律は、国交がなくても高度な兵器を相手に売却できるとした、『台湾武器輸出法』もつくっている。

各役所の官僚が起草するのが「ほとんどの法案」になっているわが国民としては、アメリカ議会の活動にかえって違和感すらある。
あちらでは、議員立法「しか」なく、官僚が立法に関与すること自体がかんがえられないからである。

そんなわけで、ここまで法律ができてくると、次は「国家承認しかない」という段階しかのこっていない。

これは、アメリカの国務長官演説ではっきり強調したように、とうとう「国家」と「党」は別物という認識をしはじめたことに原因がある。
国民国家とそれを支配する党は別で、倒すべき敵は党であると明言したのだ。

大陸への認識は、自由世界の一致があるだろう。
すると、台湾に対しては、急速にわが国のいい分も生まれてくる。
それは、根本的な「台湾の帰属問題」なのである。
わが国は果たして台湾を、「独立国家」として認めていいのか?

そもそもが、日本なのではないか?

「下関条約」の有効性と、敗戦による国民党支配との流れに対する大問題なのだ。
どさくさに紛れて、マッカーサーが蒋介石の台湾占領行動を阻止しなかったので、じつは国際法的に台湾の帰属問題が宙に浮いている状態が続いている。

あたかも、日本に戦後賠償を要求しなかった蒋介石を、わが国でも「偉人」とか「恩人」あつかいにするひとたちがいるけれど、すべての日本政府と国民の資産を没収したのだから、どこが「偉いひと」で「感謝」しなければならないものか?

むしろ、日本人だった台湾島住民(「本省人」という)に対する、大量虐殺(赤ではないから「白色テロ」といわれる)を国民党独裁政権はやっている。

つまり、少なくてもわが国の立場からすれば、党と国を分けてかんがえれば、敵は国民党である、という立場を自由圏のお仲間うちに強調しないと筋が通らないのである。
そして、その国民党は『中華民国』を仮面にしているのだ。

国民党一党独裁を破壊したのは、内側から出世して国民党総統になった岩里政男(李登輝)氏である。
こうして、現政権をささえる新党ができ、民主化を成功させたのだから、現代政治における「偉人」とは、このひとをいう。

さては、日本国は岩里政男氏の顔に泥を塗るのか、はたまたこの人物のいう「主張」を実現するための行動をするのか?が問われているのである。
大陸の「赤」も、台湾島の「白」も、似たもの同士なのである。

その意味でも、わが国は、『台湾』は日本領なのである、と主張すべきなのだ。

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