山梨県立富士山世界遺産センター

一口に「世界遺産」といっても「世界文化遺産」として、「信仰の対象と芸術の源泉」をもって登録された。
その登録をしたのは、「悪名高きユネスコ(国際連合教育科学文化機関)」で、2013年のことであった。
ちなみに、「世界遺産」には、このほか「自然遺産」と「複合遺産」の、全部で3種類がある。
すると、どうして富士山は、複合遺産に「ならなかったのか?」が気になるところだ。

「ゴミ問題」での指摘を受けて、「自然遺産」にならないからだった。
つまり、「汚い」と。
それで、この「汚名」を晴らすための努力がどんなふうにされているのか?
もちろん、「関係者」の努力はあるだろうけど、そうしたアッピールがされているかがわからない。

「富士山世界遺産センター」は、山梨県立と静岡県立の二箇所ある。
本記事は、山梨県の話に限定するのでご注意願いたい。
なお、富士山にまつわる博物館や資料館は、それぞれの自治体がそれぞれに開館している。
なので、一カ所では完結しない。

だから、富士山をグルリと一周する「ツアー」でないと、これら施設をなかなか制覇できない。
「富士山ミュージアム観光」というジャンルがあってもいい。

さてそれで、ここには「二つ」の施設がある。
一つが、「センター」としての「北館」と「南館」と名付けられた、「本体」だ。
北館が展示館、南館が売店と情報センター、それにレストランと展望台がある。
どちらも、入館料は「無料」である。

もう一つが、駐車場に入口・出口がある、「富士山自然観察園」で、こちらは短い「散策」をしながら、溶岩流のど真ん中を体験できるようになっている。
案内板にある所要時間は、15分(「じっくり観察30分」)とある。
ほとんど誰も行かないので、ためしに行ってみた。

駐車場の歩道から、けものみちに入るような風情であるけれど、「総合案内板」の横に、「入口・出口」というちいさな看板があるので、そこから森に分け入るようになっている。
1分もせず、あっという間に「別世界」となるけれど、この「放置感」は「自然」とはちがう。
ところどころにあるのは、「溶岩の種類」を示して、コース確認の掲示板と溶岩の解説がある。

それらの「汚れた感じ」は、「自然放置」の賜で、肝心の溶岩も「苔むした」なかにあるので、よくわからない。
これは、「センター北館」にあった、噴火直後から苔や草が生えて、それが「土」になり、さらに木が生えて葉が腐葉土になり、といった人の一生を何回やったのか気の遠くなる時間をかけて、森ができたことの「追体験」ではある。
だけども、ここで何を「自然観察」してほしいのかということがピンとこない。

しかも、「城の展示」で書いたように、ここも全部日本語解説のみなのだ。
この「おざなり感」は、地方自治体の施設に共通する。

駐車場にあるクルマのナンバープレートを観れば、関東近郊どころではない「滋賀」とか「平泉」とかという、富士山が見えない地域からの訪問客が、ここぞとばかりの熱心さで展示をつぶさに見学していた。
しかし、自治体の役人の習性ともいえる「総合」という言葉に象徴される、「ピンボケ」が、おそらく億円単位の「センター」にも注ぎ込まれて、地域住民の富が収奪されている無様を観察することを強要される。

前述した、富士山の「自然のなり立ち」と、世界遺産の「文化」を混在させてしまうので、なにが言いたいのかわからないのだ。
このあたり、クリエーターと役人の「つばぜり合い」を感じてしまう。
あるいは、クリエーターによる言いなりで、しこたまデザイン料を請求されたか?

「映像もの」も、制作のミクロにおける「こだわり」が、全体としての主張と合致しないので、「飽き」を誘発する。
15分間隔で放映される「8分」の映像は、巨大模型と連動させているつもりだろうけど、最長で7分待って観るべき価値があるか?

むしろ、火山灰の種類毎に、ちいさなサンプル瓶を持ち上げてその「重さのちがい」を体験させたり、溶岩に方位磁石をあてがって、針が回転する「磁性」を確認させる、「自然体験」のほうが、よほど印象に残る。
それに、前述した「富士山自然観察園」の案内板にある、溶岩流(剣丸尾(けんまるび)溶岩流;最も新しくて千年前)は、この場所を通過して、国道139号線の地形を形成した。

それは、中央道にも被っていて、河口湖インターと富士吉田インターは、この溶岩流を横断しているのだ。
河口湖インターより大月方面へは、この溶岩流の真上を走る。
溶岩の厚さは、3〜6メートル。全長20㎞。
今なら、富士急ハイランドも富士吉田市の中心部を溶岩流が流れたことになる。

園内を散策中に聞こえる「絶叫」は、富士急ハイランドのジェットコースターからである。

そんなわけで、いつぞや「静岡県」のセンターも期待値を低くして訪問しようと思う。

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