政治家リズ・チェイニーの爪の垢

16日(日本時間17日)、全米でもっとも人口が少ないワイオミング州で今回中間選挙の予備選で「最大の山場」となる選挙結果がでた。

それは、リズ・チェイニー候補の落選である。

彼女は、連邦下院共和党のNo.3で、ブッシュ息子時代の副大統領だった、ディック・チェイニー氏の長女という血筋からも、将来の共和党大統領候補にもなり得る人物だ。
その証拠に、前回の中間選挙では、70%の得票で「圧勝」している。

しかしながら、2020年の大統領選挙で、「トランプ離れ」を始めて、2021年1月6日の議事堂暴動事件の責任を追及する、下院委員会の副委員長にペロシ議長からの推薦を受けて就任し、「反トランプ」の急先鋒を務めることになった。

舌鋒鋭いトランプ批判は、共和党内でもっとも過激で、とうとう地元ワイオミング州共和党から「除名」されることにもなった。
なので、今回の共和党予備選出馬は、「無所属」から、ということになる。

このあたりが、予備選挙がない日本ではなじみがなく、また、どうして政党内の予備選挙に無所属で、しかも、除名処分を受けた人物が立候補できるのかも、日本的潔癖症からはかんがえられないことである。

もっとも、民主党も「無所属」のバーニー・サンダース上院議員が、2度も民主党大統領予備選挙に出馬して、2020年には党指名直前までの快進撃をしていたら、民主党本部から超高級別荘を受けとるかわりに立候補を取り消した。

彼の「凄み」も、支持者を前に、堂々と貰った別荘のことを披露してはばからず、立候補を取り消す理由として、「貰ってうれしい」とも述べたことにある。

これには、驚きを禁じ得ないが、これでバイデン氏が党指名を受けることになったから、さしものアメリカ人も懲りたかと思いきや、すでに高齢のサンダース氏が2024年大統領選挙の有力候補になっている。

要は、アメリカ人と日本人の「正直」の定義がちがうのである。
この意味で、どんな方法であろうが「勝てば官軍」を強くイメージしているのは、白人文明なのであった。

そんなこんなで、リズ・チェイニー氏は、除名されても選挙資金集めには余念がなく、候補者のなかでダントツの資金をもって臨んだ選挙だった。
さすがは、「RINO(Republican In Name Only:名ばかり共和党)で、資金提供者は民主党とおなじ大富豪が中心だ。

そして、彼女の戦略は、なんと州内民主党員に共和党へ鞍替えさせて、彼女に投票させるという「画期」があった。
日本だと住民票を移して、応援選挙区をテコ入れするのが問題になったことがあるけれど、発想がちがう。

しかしながら、ワイオミング州は、前回の大統領選挙で、70%がトランプ氏に投じた実績があって、そもそもが「共和党の州」なのである。
だから、共和党を除名された彼女に、今回ははじめから「勝ち目はない」のが、データでもしれる。

それでもなんでも、とにかくなにがなんでも、「反トランプ」なのである。

結局、トランプ氏が推薦状をだした新人の対抗馬が、40ポイント弱の差をもって圧勝するという「歴史的大敗記録」も提供した。
「敗戦の弁」においても、つぎは次回大統領選挙にトランプ氏を出馬させないために全力をつくすと宣言したのである。

これは、FBIがフロリダのトランプ氏別荘を捜査して、刑事事件の立件による「阻止支援」をいっているのだろうけど、合衆国憲法第2条第1節にある、大統領被選挙権の規定に、刑事被告人や有罪確定者の記載はなく、過去には収監中の人物も立候補している。

だから、なんだかチェイニー氏の主張はズレている。

軍産複合体を代表する「利権第一主義」が、かつては「共和党主流派」といわれてきた「名ばかり共和党」だし、いまでは民主党もおなじだ。
すなわち、共和党ブッシュ親子、クリントン夫妻、オバマ、バイデン一家のひとたちで、チェイニー父娘もバリバリの「利権保守」なのだ。

本稿では、この利権第一主義と、真っ向逆の「共和党トランプ派(国民第一主義)」が、どんな闘いをしているのかには言及しない。
ただし、徐々に「潮目」が、共和党トランプ派に傾いていて、すでに中間選挙の共和党トランプ派候補者のほとんどが、党内予備選を制している。

それゆえに、彼女の孤独な闘いが、妙に潔いのである。

もちろん、彼女は「旧態依然とした利権の権化」だから、そんな人物に投票しないのは有権者の多数として「当然」だという意見もあろう。
しかし、「前回」は、「圧倒的勝利」だったのだから、票が圧倒的に浮動しているともいえるのである。

果たして彼女は、信念のひとなのか?それとも、単なる頑固者なのか?

どちらにせよ、こんな政治家が絶滅した日本から見たら、彼女の爪の垢でも煎じて、わが国の政治家たちに飲ませたいものである。

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