日本はEUに加盟できない

2015年にドイツのメルケル首相が来日したおり,安倍首相に日本のNATO(北大西洋条約機構)加盟を提案したというニュースがあった.もちろん,日本として現状ではこの提案をお断りしたということなのだが,「北大西洋」という地域にはこだわっていないことは確かだろう.それは,西ドイツが加盟した1955年より前の1952年に,地中海の国であるギリシャとトルコが加盟していることからもわかる.もちろん,ドイツも北大西洋に接していない.

ところで,現在のEUのはじまりは1957年に発足したEECであった.
この組織の加盟要件には,「欧州」と地域要件が明記されているから,日本は加盟できないのだが,仮に地域要件をはずしても,日本は加盟できない.
その理由は,政府債務比率要件である.これを,「経済収斂基準」とよぶ.
財政赤字GDP比3%以下、債務残高GDP比60%以下,でなければならないのだ.

日本の数字の実態は,各自お調べいただき,また,じっさいにどうやって政府財政を立て直すかの議論も横において,単純な事実として,日本はEUに加盟できないことだけはしっておこう.蛇足だが,同時代においてもEECの加盟経済要件を日本は満たしたことはないから,今日までもふくめて日本はEECからECそしてEUとなっても一度も加盟条件を満たしたことはない.

あれ?
世界の経済大国ではなかったか?

いまでも,中国の国家統計数値がただしければ,世界第三位のGDPをほこる国なのだが,中国の国家統計というものの評価しだいでは,もしかしたら日本は世界第二位をキープしているかもしれない.
しかし,残念ながら,日本もかなりの張りぼて国家であるということだ.
これは,間違いなく,「政府依存」が原因だろう.

やっと貿易黒字をだしている

かつての「貿易黒字大国」はとっくに過去のはなしである.
中曽根康弘総理が,NHKテレビの特別放送で,国民に「アメリカ製品を買いましょう」と呼びかけたのは,日米貿易摩擦からはっした苦肉の策だった.
石油や鉄鉱石のほとんどを外国から輸入しているのに,製品化して輸出すると儲かってしまう.
これぞ,明治以来の悲願だった「貿易立国」の理想郷だった.
この放送をうけての国民の反応は,「買えと言われても,アメリカ製品で欲しいものがない」というのがおおかただった.

いまや,かつかつの貿易収支になって,赤字になったり黒字になったりしているのが日本のすがたである.
70歳以上の「大人」には,日本の貿易収支がかつかつであるといっても,にわかに信じられないのではないか?

安定しているのは資本収支になった

「経済の成熟化」のもうひとつの顔である.
外国に投資した見返りのお金がやってきて,トータルで黒字になっている.
ていよくいえば,利子で食っているお金持ち,なのである.

人口減少という「縮小」が避けられないから,ほんとうは国内投資ではなくて,外国投資が望ましい時代になっている.
だから,資本収支の黒字をいかに増やすか?というのは,方向として正しい.

超高級ホテルが存在しない国

国民の数は縮むのだが,訪日外国人の数はふえている.
しかし,外国からの直接投資がほとんどない状態だから,訪日客のたいはんはビジネス客ではない.
英国人のデービッド・アトキンソンさんが指摘しているが,なぜか日本国政府は「人数」にこだわった目標をたてている.これに「単価」も目標にくわえれば,数量×単価=売上,という公式になるが,不思議と「人数」が前面に出ている.

どうやら,低単価なのを人数でかせごう,というかんがえのようだ.
首相を頂点とする日本政府の最重点課題は,「生産性向上」というのが,いかにあやしいものかがわかる.
おなじ人数なら,高単価のほうが生産性は高くなる.
こういう算数ができないのが,平等主義に凝り固まった役人の限界である.その役人がひきいる政府に民間が依存しているから,生産性向上をかんがえるのも政府の仕事になった.もはや「高級官僚」という八百万神を拝むしかない宗教国家に堕落した.
観光政策の政府委員として,アトキンソンさんの活躍に期待したい.

知らないうちに「スタンダード」になるのを,「デファクトスタンダード」というようになった.
パソコンのOSが,ウィンドウズで世界統一されたのが典型例である.
いま,世界の宿泊施設で,デファクトスタンダードとなっているのは,一泊$40,000以上の宿を「超高級」というカテゴリー分けしていることだろう.

わがくにに,「超高級ホテル」は一軒もない,という事実は知っておいてよい.
わたしの古巣の帝国ホテルでも,最高級の客室は$10,000ほどだから,世界標準の1/4でしかない.
ちなみに,世界一の超高級ホテルは,スイスにあって,一泊$100,000である.
生産性は,単純比較で10倍のちがいになるから,日本のサービス業の生産性が低いのは,こんなところから議論すべきだろう.

加入できないなら行けばいい

世界水準のお金持ちが,日本にほとんどいない,ということが,日本に超高級ホテルがない理由でもあるのだが,これは世界水準のお金持ちが日本にきても泊まるところがない,ということでもある.だから、こない.

ならば,ちょうどよさそうな国に行けばいい.
わたしのお勧めは,欧州でもいまだに未開の旧東欧圏である.
忘れてはならないのは,これらの国はみなEU加盟国であるから,政府債務に関しては,あきらかにわが国よりも先進国である.
「おもてなし」の輸出である.

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