日銀劇場の終幕

日本が危ない、のは、台湾危機だけではない。
もう一つ、「日本円」の危機だ。

当然ながら、「円防衛」の最前線は、日本銀行である。
誰から防衛するのかといえば、「外国為替市場」である。
いまどきなら「ヘッジファンド」といってよい。

しかし、これには通貨価値を評価するための、「ファンダメンタルズ」がある。
いわば、一国経済のさまざまな指標にあらわれる「実力」だ。

日本経済の「成長力」とか、「インフレ率」とか、いろいろある。
このところの「状況」では、政府負債である「国債残高」の問題が、日本経済の脆弱性を語るのに、よくいわれる指標になっている。

ギリシャ危機が起きたとき、国家経済の実数ではなくて、「比率」にしたとき、わが国の国債発行残高は、とっくに額でギリシャを凌駕していたけれど、専門家たちは分母の経済規模が比較にならないほど日本の方が大きいので、問題外だと論評していた。

しかし、その比率の分母に日本経済の規模があるから、ギリシャどころの比率ではない「重み」について、誰もいわない不思議があった。
いまからしたら、「いってはいけないこと」だったのかもしれない。

この意味で、気の利く小学生の方が、正しい判断ができたにちがいない。

いま、学校の先生が大変なのは、世の中で「いっていいこと」が、かなり怪しくともそのままいわないといけないから、子供たちのなかでは、「こいつ日和ってやがる」といわれても聞かなかったことにするしかない。

そうやって、信頼関係が「師弟」のなかで醸成できないので、卒業式に『仰げば尊し』を歌わないように教師が要請するようになったのだろう。
これがまた、表面的に日教組の主張する「平等」の政治運動が浸透するのに都合がいいのである。

どちらにしても、「多」に日和ることの重要さを、子供に擦り込んでいるので、逆に「個性」ということを強調して、誤魔化すのである。

つまり、最初から「個性重視」なんてやりたくもないしできっこないので、一クラスの人数を減らしたり、学級当たりの教師の数を増やすのは、どちらにせよ「少子化」でも教師が失業しないようにする準備なのだろう。

なにせ、公立学校の教師も「公務員」なのだ。

そうやって、学業に優れたのではなくて、テストの点数を取れる=出題された問題に間違えずに答えること、に長けた子供が、おとなになって、日銀や大銀行のエリート行員になるのである。

ゆえに、「多」に日和ることを旨とする。

それで、銀行の本業である「貸金」をしたくても、バブルの後遺症であった「不良債権処理」にヒーコラしたから、金融庁さまが「(不動産)担保をとれ」と命じるので、これに日和って従った。

すると、貸出金額より大きい価値のある不動産担保をあらたに差し出す貸出先がないために、日銀さまがどんなに「金融緩和」をしても、貸出が増やせない。

あげくに、日銀さまが印刷する日銀券の担保になるのが、「日本国債」になったから、これを銀行が買わされて、わずかな「金利」を得るに至った。
それで、銀行のなかの「多」に日和るひとたちが、みんなが買うからと、とにかく国債を買うことにしたのである。

こうして、ギリシャではEUに頼ったから破綻の憂き目をみたけれど、わが国は自国の銀行に頼ったので、おいそれと潰れないのである。

しかし、これらの銀行が国債を買えるのは、預金者の預金でもって支払に充てるので、銀行に口座がある日本国民が、知らぬ間に国債を買っていることになっている。

評論家たちが、日本国債は日本人が持っているから、ギリシャのようにはならないといった日本人とは、銀行口座を持っている一人ひとりの日本人のことをいう。
なんとも、一般人に「あんただよ」とはいわない、絶妙ないいかたなのである。

もちろん、銀行に口座を持っている日本人の多くが、自分の預金が国債になっているとは気づかない。
この「おめでたさ」は、自分でかんがえる訓練をさせない、日本独特の教育制度がつくったものだ。

そんなわけで、日銀は「インフレ目標2%」という、「大ぼら」吹いてきたのは、達成できっこない目標を、わざと政治的にアナウンスして、あたかも市場をコントロールしている「風情」をつくってきたのである。

なぜならば、それが日銀の存在価値だからだ。

しかし、世界経済のファンダメンタルズが激変した。
西側指導者によるロシアの資源を横取りする計画の実行である「ウクライナ危機」が、トリガーとなったのである。

この意味で、国債発行という「麻薬」をやりすぎて、とっくに重篤な中毒患者に成り果てた「多」に日和るひとたちが、その発行残高と金利の関係に、ほとんど禁断症状の発作が炸裂しそうな状況になってきた。

それが、英・米とEUによる「金利上昇」だ。
こうして、日本だけが「マイナス金利」を維持する、世界で唯一になった。
つまり、「円」取り引きが、巨大な富をうみだすと、世界のヘッジファンドが気づいたのである。

なお、国際決済銀行(BIS)は、わが国の「メガバンク」に質問票を送りつけて、「日本国債売却の条件」を聞きだした。
すなわち、わが国の銀行が保有する「国債」が、金利の上昇によって「大損」の対象になるからである。

その答えたる、上限は「1.5%」である。

「2%」のインフレ目標が大ウソだとわかるのだけれど、このために、日銀は金利をなにがなんでも上げることができない。

それでまた、政府が出す国債を買うしかないので、もう日銀が引き受けた国債は6割のボリュームに膨らんでいる。
つまり、わが国経済は、「時限爆弾の時限スイッチがON」になったのである。

ところで、「無策」が評判の自公連立政権(たまたまいま「岸田政権」という)は、社会主義の基本たる「補助金」が大好きだ。
産油国だったアメリカのガソリン価格は、ガロンからリットルに換算して、さらに円にすれば、250円~300円/Lという水準になっている。

これは、ヨーロッパもおなじだ。
なのに、どうして全部輸入の日本でのガソリン価格が160円~170円程度なのか?
国民がしらないうちに、税金が投入されて燃やされているからだ。

だから電気自動車(EV)にしろ、などという世迷い言をいいたいのではない。
これがまた、国債発行・日銀引き受けのパターンを加速しているといいたいのだ。

時限爆弾の「爆発力=破壊力」を日々増しているといいたいのである。

さてそれで、日銀は世界のヘッジファンドに勝てるのか?
「多」に日和るひとたちには、相手にならない「ならず者」たちである。

栄光の「円」は終わって、わが国は中南米並みのヤミ経済が出現することになるだろう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください