桃が満開の山梨に疎開した

桜と桃が満開の山梨とは、例年のことなのか?
先月の3月26日が、旧暦の3月3日の「桃の節句」であった。

さいきんの遠出は、もっぱら「自動車」になった。
時間に追われていないから、あんまり高速道路をつかわなくなったのは、昨年の島根県足立美術館への旅で覚えた「地元の情緒」も味わえるからである。

「タイムマシン」をテーマにしたSF小説はあまたあるけど、現代社会のホンモノのタイムマシンは、第一に飛行機、第二に高速鉄道、そして第三に高速道路での移動だろう。
たかが三世代や二世代ほどの時間経過で、その時代ならありえない距離をありえない速さで移動してしまう。しかも、安全に、安価で。

距離あたりのコストで、遠距離ほど安いのは飛行機だ。
つぎに、高速道路。
あんがい、高速鉄道は高くつく。
総エネルギー・コストと比例しているのである。

鉄道が安全に走れるのは、線路があるからで、その線路の敷設や保線に必要な総エネルギーが他の手段にくらべて、膨大だからである。
走っているとき「だけ」でみてはいけないのは、電気自動車も水素自動車もおなじである。

そんなわけで、高速道路すら利用しないで、一般国道や生活道路をつかうと、自動車の移動はあんがい安くかんじる。
走っているとき「だけ」でみると、ガソリン代しかかからないからである。

「経済」をかんがえるとき、やっぱりすこし前なら単純な「効率」しか考慮しなかった。
だから、高速道路をつかうコストと時間コストを比較して、そのひとの「時給」をあてれば、目的地まで高速代を負担しても「合理的」であるという「解答」がえられた。

しかし、じっさいに事故が発生したり、自然渋滞があったら、高速道路の意味がなくなることもある。
一般道と「どっちが得か」をかんがえるのは、けっこうな難題だった。

これに、「ゆっくり旅」でその土地の雰囲気を味わいたいという価値観がくわわると、「経済」として答えもぜんぜんちがってしまう。
そんなわけで、経済のかんがえ方は、いまでも数式が重視されてはいるものの、じつは「人間行動」を「心理」からみないとわからなくなったのである。

わが国の、経済学部への入学試験にやっとこさ「数学」をくわえる学校が出てきたが、現実は数式から「人文学」の世界に重心がうつっている。
もちろん、数学的な考察を全否定したいのではないけれど、だ。

人混みにわざわざ行くのはいけないのは、自分のためなので、疎開といっても集団ではなく、家内と二人でである。
他人と濃厚接触しないためには、やっぱり自動車での移動がのぞましい。

ふだんから山梨のお気に入りの温泉に行くものの、この温泉には宿泊施設がない。
それで、いわゆる「温泉旅館」に、久しぶりに夫婦で泊まることになったのである。

「疎開」といっても三・四泊しかしない短期だが、これまではおなじ宿に連泊するのはたいがいが二泊までだったから、今回は「長め」である。
それで、「素泊まり」というプランにした。

場所は、石和温泉である。
いつもは温泉街を避けていたから、よくかんがえると、石和温泉の旅館に泊まるのも温泉に入るのもはじめてであった。

昭和36年に一面田んぼのこの地に温泉が出た。
高度成長期にあいまって、一大発展したのが「石和」である。
バブル期には、東京の奥座敷ともいわれたし、そのお色気路線で、社内旅行で石和といえば、留守にする奥方がいぶかったものである。

いまはすっかり住宅街に囲まれて、駅前には全国的大型ショッピングセンターが横たわっているから、東京の郊外にやってきた感じがする。
温泉ホテルは、マンションや住宅地域のなかにあるという感じだ。

石和温泉は、丹沢島が500万年前に本州と衝突してできた、丹沢山地と、これにつらなる「シワ」にあたる秩父の裏側に流れる笛吹川の地下にある熱水帯の最南端だ。
よって、表丹沢の神奈川県厚木市にある飯山温泉と七沢温泉とは、本州最深部でつながっている。

それが証拠に、どちらも、わが国では希少な「アルカリ性単純泉」が湧出しているのである。
わが国で大多数の火山を熱源とする温泉なら、「酸性」を示すことになるからである。

気の毒なことに、宿はガラガラで、閑散としているのは駐車場をみればわかる。
日が落ちる前に温泉に浸かり、颯爽と街に出たものの、こちらも閑散としていて、ようやく一軒の居酒屋をみつけた。

戸を開けるなり、「お食事ですか?」というので「呑みです」とこたえたが、店内に客はいなかった。
主人は「もう閉めようかとおもった」というが、せっかく遠くから来なさったならと、あんがい気さくなのである。

はなせば、ご親戚はみな横浜で、しかもわが実家の近所であった。
奇遇とはこのことで、桃の花の見所は今週まで、それから花の間引き作業がはじまると説明をうけた。
桃の実がほしい人間の生活がある。

なんだ、石和温泉、いいじゃないか。
そうこうしていたら、家内が会社から出勤の要請をうけた。
ただの一泊での帰宅になった。
宿は気持ちよく残りのキャンセルに応じてくれた。

これで、次回の山梨も、石和になること確実なのである。

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