海洋投棄に関するロンドン条約

ホテルに勤務していて、「条約」に関係する件で投資をしなければならなかったことに、この条約の締結と批准があった。

大規模な高級ホテルは、業として大量の廃棄物がでる。
その主なものは、「生ゴミ」だ。
調理の下ごしらえで廃棄されるもの、お客様が食べ残した残飯、それと作りすぎて余った料理に目がいく。

しかし、調理場からの排水に流れる細かい食材や油脂などは、グリストラップ(Grease(油) Trap(止める、罠))というマスに溜めるようになっている。
もちろん、直接公共の下水に排水してはいけないものだ。

そこで、グリストラップに溜めた汚物は、さらにこれを微生物による分解槽に送ってバイオ処理する。
この処理に用いる微生物も、特殊開発されたものなのでタダではない。
むしろ、高価といっていいだろう。

そうして分解したものは、最終的にヘドロ(汚泥)となる。
これを、定期的にバキューム・カーで吸い取って、つぎに船に乗せ替えて、12海里外の公海上に海洋投棄していた。

しかし、1996年の「議定書」によって、これができなくなった。

わが国において「発効」したのは、2006年である。
よって、発効前までに、「陸上処理」の方法を考案しなければならなくなった。
そうして、ホテル内に真空処理施設を新規設置して「焼却」可能にし、ついでにふつうの生ゴミの乾燥機も導入してゴミの総重量を削減した。

億円単位の投資であったと記憶している。

ついでにいえば、このとき、汎用コンピュータとかパソコンのOS、ウィンドウズの「2000年問題」もあったから、その対処をふくめて、えらく忙しかったのである。
誤解をおそれずにいえば、あまり生産的な投資とはいえないおカネをつかわされた感がした。

ただし、かなりはやい対応をしたので、ミレニアムの前には完了・整備済みとしたから、期限の2006年がずいぶん先におもえたものだ。
この「はやさ」については、「企業の社会的責任」ということもキーワードだった。

さて、「ロンドン条約」そのものは、1972年に採択されて、わが国では1980年に締結している。
じつはこの条約は、水銀、カドミウム、放射性廃棄物等の有害な廃棄物を「限定的」に挙げていて、これらの海洋投棄「のみ」を禁止する取り決めである。

だから、最終消費者にもっともちかいホテル業においては、関心がうすい条約だった。
ホテルが業として、水銀、カドミウム、放射性廃棄物等を廃棄するとはかんがえにくいからである。

もちろん、「厳密」さを追求すれば、食品等にふくまれる水銀やカドミウムは微量あるかもしれないけれど、もとが基準値以下なら、そのまま通過するだけのホテル業では、あえて考慮の対象にはならないはずだ。
しかし、真空処理で圧縮するので濃度が高まらないかは念のため調べて安全性を確認した。

そんなわけで、よくよくかんがえると、「条約締結」に8年も費やしたのはなぜか?問題は放射性廃棄物だと、素人でも推測できる。
水銀は水俣病、カドミウムはイタイイタイ病の原因物質で、わが国としては苦い経験があったから、その規制に関しては進んでいた。

だから、消去法で「放射性廃棄物」が残るし、原子力推進の国是のなかで、「調整」に手間取ったとかんがえられる。
ちなみに、条約の窓口は外務省で、原子力発電の窓口は経産省、技術開発では科学技術庁の文部科学省と、三つ巴になっている。

最近では、これに環境省という三流省庁がくわわって、四つ巴となった。
結局のところ、福島のトリチウム水を「薄めて海洋投棄する」ことが、政府方針となったのは、環境大臣の決断による、ということにして、二流省庁の外務省と文部科学省が逃げた。

一流省庁の経産省は、そもそもが興味ない。
この省庁が「一流」なのは、科学を無視する神経をもっていて、法律が科学に優先できるという、中世錬金術師の最高峰、アグリッパも口あんぐりの主張をしてはばからないところにある。

走っているときだけ、電気自動車は二酸化炭素を排出しないから「エコ」だといったり、水素が「資源」だといったりする。
地球上に水素は水素のままで存在していないから、水素を得るには水を電気分解したりしないと得られない。

高性能充電池を作ったり、電気分解するときの電気はどこからやってくるのか?
原発の運転を止めているから、ほぼ火力発電所でえた電気だし、もっとも安価な石炭火力発電を禁止するのもどうかしている。

さて、水で薄めれば安全だ、という「屁理屈」を、コロナのごとく鵜呑みにするひとたちがいる。
1キログラムの猛毒を、たとえば100万倍に薄めて、それをぜんぶ海洋投棄したら、結局は1キログラムの猛毒をぜんぶ海に棄てたのとおなじことだと気づかないのか?

トリチウムの半減期間は、12年である。
プルトニウム239の半減期間は、2万4千年だからトリチウムは安全だというなら、もうできのわるい高校生を嗤えない。

それでもって、世界の原発はこんなに放射性物質を廃棄している、という相対論を地図付でだしてきた。

赤信号みんなで渡れば怖くない。

ぼくもう笑っちゃいます。

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