無謀な「中央リニア」

1966年から日曜日の午後7時に放送された『ウルトラQ』が懐かしい。
30分番組なのに、いまの2時間スペシャルを凌駕していたのは、作り手たちの密度が濃かったからにちがいない。

何話だったか記憶がないが、まだ茅葺き農家がある山間部を、目にも止まらぬスピードで駈け抜ける鉄道がでてきて驚いた。
東海道新幹線の開業が、1964年だったから、その「未来性」は、まったくの衝撃でもあった。

この鉄道が、果たして「リニア」だったかも記憶は定かではない。
しかし、新幹線の新幹線なので、まるで静岡県の宇津ノ谷峠にある、「明治のトンネル」、「大正のトンネル」、「昭和のトンネル」を思いださせる。
東海道線、東海道新幹線、そしてこの番組の新幹線が、やっぱり「東海道」をそれぞれに走るのだ。

東海道新幹線がどんどん速くなって、そのかわりブルートレインと呼ばれた寝台特急がなくなった。
「夜汽車」はとっくに死語となったが、哀愁だけはいまにも残っている。
夜行の急行列車なんて、結局一度も乗らずに消えていた。

阪神淡路大震災のとき、東海道の電話網がパンクして、東阪間の連絡が困難になった。
その後の対策と電話事業の自由化で、鉄道系、道路系など、東阪の通信網が新しく引かれた。

当時、実際にどうやって東阪で連絡をしたのかといえば、NTTにお願いして、北陸経由の回線でつながったのである。
こんなことから、社員の緊急連絡名簿を東阪において、別経路での連絡網を確保することもやった。

いわゆる、「サブ・システム」のことをいう。

つまり、「メイン・システム」があっての「サブ」である。
だから、ふだんは当然に「メイン・システム」を利用して、いざというときの保険が「サブ・システム」になる。

東海道新幹線は、東阪の交通における「メイン・システム」である。
では、サブ・システムはなにかといえば、在来線のことをいう。
中央リニアではないのである。
なぜかといえば、中央リニアは、名古屋までがいまの計画になっていて、大阪まで行くのはいつのことか?

だから、東名における「あたらしい交通システム」である。
しかし、どんなダイヤで、何人が利用するのか?をかんがえると、おそらく、東名間であっても、いまの新幹線がメイン・システムのまま残るのではないのか?

運行本数による待ち時間を考慮すれば、新幹線と到着に要する時間も変わらないことになる。

すると、ずいぶんと高価な東名サブ・システムを造ることになる。
投資金額だけでなく、静岡県のひとたちが案じている、大井川の水源問題や、現在世界一の隆起スピードである南アルプスに、高速鉄道のトンネルを掘ることの安全性も疑問視されている。

原発建設で問題視される、断層の上にあるかないかでいえば、「中央道」という高速道路だって、日本列島の中央構造線の真上を通っている。
中央構造線とは、いわば、断層の親玉である。
魚の背骨のように、この線から大陸側と太平洋側で、地質構造がぜんぜんちがうからである。

だから人間がつくる道路も、中央構造線の真上しか、すき間がないから、ここしか通れないのである。
あとは、造山活動による山なのだ。

なので、中央構造線をかすめるようにトンネルを掘って、そこを飛びながら走行するのがリニアなのだ。
しかも、「新システム」の理由は、都会の「新交通システム」とおなじく、運転手がいないことも含めている。

「リニア」を完成・実用化してどうするのか?
原発と同じように、政府は外国への輸出を図るらしい。
しかし、原発と同じように、コケるのだろう。
建設費と運行費が高すぎるのである。

運行費には電気代が大きくのしかかる。
なにしろ、超電導の電磁力で車体を浮遊させるからで、そのための原子力発電所がいる。
いまの、実験線の電力も、新潟の原発から引いている。

ふつうの火力発電所だと、見えるコストが莫大になるから、その辺の国には輸出できない。
つまり、「原発とセット」なのがリニアなのである。
そんなわけで、アメリカみたいな平たい大陸に向いている鉄道なのだが、アメリカが欲しがっているのは、「新幹線」のほうなのである。

いざというときの保険としてのサブ・システムなら、在来線をリフレッシュさせるほうがよほどいい。
ただし、前にも書いたように、エネルギー効率という点で、鉄道は飛行機やバスに劣ることを忘れてはいけない。

線路を敷設し、それを維持するために要するコストは、空港や道路を造って維持するよりも大変だからだ。
アメリカで鉄道が廃れた理由はこれである。
逆に、わが国は人口密度が高く、狭かったから鉄道が普及した。

そんなわが国でも、大陸的な北海道で鉄道事業が厳しいのは、人口密度が低くて広いからである。

「ひとの移動」ということに、重大な変化がやってきた。
公共交通機関が、自動車などのプライベートな空間移動に変化しようとしているばかりか、オンラインでの会議がさかんになって、そこに行く必要が減ってしまった。

奇しくも静岡県の抵抗が、国民利益にかなっているかもしれない。

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