甘えのNHK受信料問題

今年2017年の師走を「飾る」ニュースは,6日の最高裁判決であった.いわゆるNHK受信料にまつわる「初の憲法判断」に注目があつまった.賛否うずまくなかで,ちゃんとした報道をしたのはどこだったか?当のNHKは翌日7日に,会長が妙なコメントをして,なっちゃいない感を全国にくまなく放送した.まるで「完全勝訴」のような振る舞いだったからだ.さらに,民放各社の報道もこれに追随した.業界で談合でもしているのだろうか?

判決文「主文」は以下のとおりだ.「本件各上告を棄却する.各上告費用は各上告人の負担とする.」

裁判費用が「折半」なのに,原告のNHKが「勝訴」というのは変だ.たしかに,「放送法は契約を義務づけている」のだからNHKの主張どおりにみえるのだが,「消費者側拒絶時の契約締結の要件」という判例ができたことが真の注目要素だ.この「要件」によれば,NHKが受像施設が存在するとして,B-CASカード等の証拠を用意して,裁判をおこさなくてはならず,しかも,口頭弁論終結時にもテレビ受像機が設置されていなければならない.これらの「証明」をどうやってNHKがやるのか?といえば,不可能であろう.つまり、かぎりなく敗訴に近い判断ではないか?最高裁は,とても面倒な「判断」をした.

問題はやっぱり国会である

日本の最高裁判所は,めったなことでは判断すらしない.国会に委ねるという態度だ.つまり,「国会依存」.三権分立とはどういうことだったのか?もういちど中学校の教科書を確認したい.

その国会が,立法府という本分をわすれて,選挙を経てもスキャンダルを追及している.まことになさけない状況にある.しかし,これも国民の意思だ.

欲張りな国民の甘えがNHK問題の根幹である

民放は見たいがNHKは見たくない,というからいけない.テレビを観なければいいのだ.そもそも,テレビ受像機があるから,放送法での受信料が発生するのだから,テレビを廃棄すればよいだけだ.それをしたくないと,欲張って甘えるからいけない.

かつては国民がテレビを買うと,国家経済は潤った.世界のテレビ市場はわが国製品が席巻したからだ.ところが,「純粋に日本製」のテレビなど,もうほとんど存在しない.パナソニックも,シャープも,テレビ事業で屋台骨がかたむいた.組み立てたのが日本国内という意味の日本製になった.そういえば,iPhoneやiPodがどこ製なのか,気にするひともいなくなった.

工業製品の受像機だけが問題ではない.4Kだ8Kだといって「画像の美しさ」をうたうのは,カラーテレビが世にでた頃とおなじ発想による宣伝手法だ.映像技術がどんなに進んでも,残念ながら,もはやテレビで観なければならない番組はほとんどない.震災クラスの災害も、全国放送がカバーできる情報では荒すぎて役にたたない.民放ふくめ,同じような情報を垂れ流すばかりだから,被災者や関係者にとっての重要情報は地元ラジオの方がよほど便利だ.まして,インターネットの存在感は,3.11で発揮された.「東京オリンピックをカラーテレビで観よう!」というキャンペーンをまたやるのだろう.56年前とおなじ手法に,乗るひとは何人いるのだろうか?そちらに興味がわく.

わが家では,テレビで,ニュースも天気予報も観なくなったが,じつはなにも困らない.おかげで,いわゆる「偏向報道」の被害もない.新聞もあれば,ネット配信のニュースもあるし,雑誌記事もある.好きな番組はオンデマンド契約をしている.テレビ放送を観るより,YouTubeの方がよほどためになる.

テレビを観るのは,情報リテラシーがないひとになった.「情報弱者」が指摘されてずいぶんたつ.NHK受信料は,情報弱者からの強制取り立てだ.だから,テレビを観ようとすると貧乏になる.こうして,テレビは,格差社会の推進をする機関となった.

旅館にテレビは必要か?

入浴して夕食をすますと,やることがないから自室に引きこもる.間がもたないからテレビを観る.それに飽きたら就寝する.お客様にこんな滞在をふつうにさせている旅館という商売に,だれも疑問をもたなかった.「非日常」だのと言っても,お客の滞在パターンは,日常そのものだ.

「経費削減」に血まなこをあげて,必要経費まで削減し,客数をうしなった旅館とて,テレビを客室から撤去しなかった.撤去すればNHK受信料という経費が削減できるのに,である.

テレビがなくてもWi-Fi環境があって,モニターにスピーカーセット,それにアマゾン・プライム・ビデオか,グーグル・キャスト端末を借りられるほうがよほど気が利いている.蔵を改装したとある高級旅館では,大型モニターに5.1chスピーカーセット,これにiPodホルダーが設置されていた.ド迫力の音量と音質で,映画と自分の端末にある音楽を堪能できた.

もはや高額所得者と若者はテレビを観ない.非日常をもとめてやってくるこれらの人々がターゲット顧客なら,発想をかえて受信料を削減すれば,宿は二重に得するはなしにかわる.

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