私学医学部イジメ再び

今度は、聖マリアンナ医科大学の入試に対して、文部科学省が「不適切」と結論づけたと報道された。
過去に8校あって、どちらも私学助成金が全額不交付になったり、減額されているという。

指摘は、現役男子に偏った「高得点」だというから、これも以前にあった通りである。
すなわち、女子と浪人が「低得点」になる、ということなのだろう。

他校の以前の例では、「伸びが違う」ということを教授陣が認めていた。
すなわち、傾向として、「高得点ではなかった男子」が、入学後に「伸びる」から、医師国家試験の合格結果が「ちがう」ということをいっている。
すると、「高得点だった女子や浪人」は、伸びないということだ。

学校側が主張することを、統計的にでも示してくれるとありがたいのだけれども、残念ながら「言葉だけ」になっている。
こうしたことの発表すら許されないのだろうか?
現代医学に統計はつきものなので、きっとちゃんとした専門家が学内データの分析をしているはずである。

世間から、「解剖学者とされている」という、養老孟司氏は、東京大学医学部教授という職にいた。
わが国では、大学を最高学府というけれど、その中の「最高」といわれているのが「東京大学」だ。

けれども、東京大学内にあっての「最高」は、「医学部」とされている。
受験戦争の象徴とされる、「偏差値」において、70以上どころか80レベルでないと合格しない難易度は、とにかく飛び抜けていることは確かだ。
一世を風靡した、受験マンガ『ドラゴン桜』においても、「東大医学部に合格するのは宇宙人だ」というセリフがある。

「偏差値」とはなにか?を確認すれば、まず「正規分布」がわからないといけない。
正規分布というのは、グラフにすると、きれいな左右対称の「山型」になる分布をいう。

たとえば、試験の結果なら、横軸は「点数」、縦軸は「人数」を示す。
何点のひとが何人いるかをグラフにしたものだ。
だから、山の頂上にあたるのは、「もっともたくさんいる」ということと、「平均点」を示している。

典型的に「正規分布」するのは、小中学生の身長をとったグラフで、全国で百万人規模の身体測定データをあつめてグラフにすると、みごとに「正規分布」する。
横軸は「身長」、縦軸は「人数」としたグラフだ。

これは、なんの操作もなく「正規分布」する例なのだけど、じつは「大学受験」の試験結果だと、そのままではあんがい「正規分布しない」。
出題する問題側にバラツキがあると、結果も歪むからである。
そんなわけで、「正規分布する」ように、「配点を調整する」のである。

それで、正規分布させたら、頂上(最大人数で平均点を示す)を中心にして、山の左側と右側の「稜線」をじっくり眺める。
左側は平均点「未満」となって、右側は平均点を「超えた」ひとの人数を表している。

すると、このグラフの「山の面積」が、そのまま人数の分布をいうことがわかる。
山全部の面積が、グラフの対象となった人数の合計となる。
であるから、平均から左側、あるいは右側のひとたちが、どのように分布しているのかも、その面積でわかるのだ。

「正規分布」の山の場合、どのくらい平均から離れると、面積がどうなるかが決まっている。
山の全部の面積を100とすれば、それぞれを「%」で表せるのだ。

このとき、平均点をとったひとたちを、「50点」として、左側なら「49」から数が減り、右側なら数が増えるように調整して計算すると、「偏差値」となるのである。

たとえば、偏差値30と偏差値70は、平均から左右の距離はおなじだけれど、その意味は面積にするとそれぞれ、「2.275%」しかいない。
偏差値30とは、自分の下に全体の2.275%しかいないという意味だし、70ならその逆になる。

ある意味、「異常値」的な出来の「悪さ」と出来の「よさ」となる。

養老氏によると、かつてのご同僚が、「入学時には最優秀だったはずなのに、卒業時にはバカになる」と怒ったというけど、先生は「偏差値を血圧に置き換えると『治療しなきゃいけない人たち』なんだから、バカになるように補正して世の中に出さなきゃいけない」とこたえている。

さて、2018年に文部科学省は、「朝ごはんを食べると成績がよくなる」として、「早寝早起き朝ごはん運動」なるものをはじめた。
この運動の元になったのが、「全国学力・学習状況調査」で、成績がよい子は朝ごはんを食べていることがわかったのである。

しかし、これは、「統計」における「因果関係」をひっくり返している、典型的な、やってはいけない「間違い」である。
こんな初歩的な間違いをしでかす、文部科学省が、「私学」という「私塾」に対して、余計なことをし、「助成金支給」で脅迫している。

医学生の出口には、厚生労働省が行う「医師国家試験」がある。

縦割り行政の、奇跡的な「メリット」がここにある。

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