米国カジノ事業者撤退の衝撃

一兆円以上を投資する景気のいい話だった。

ラスベガスを本拠に置く世界最大のカジノ事業者、サンズが13日、突如日本への進出計画を撤回した。
「新型コロナウイルス禍」は「関係ない」とだけ発表し、「理由」の詳細は明らかにしていないと報道されている。

しかし、理由は容易に予想できる。
「投資額」に見合った「回収が困難」だと、判断したにちがいないからだ。
それは、日本政府が突きつけた「ライセンス期間」が10年では、不可能ということだ。

一般に、欧米投資家がかんがえる「投資期間」とは、長くて5年である。
しかし、一兆円の投資を計画する「IR」の建設期間は、はやくて5年かかる。
この間、収益は発生しないから、かれらにとっては「マイナス5年」という投資回収計算における設定をせざるを得ない。

すると、10年というライセンス設定では、「実質5年で回収」という条件に見えるのだろう。

日本政府との水面下での交渉において、ライセンス期間の「見直しもある」という政府側の発言が、より一層の「不信」を招いたともいわれているのは、「長くなる」ということよりも、恣意的に政府が介入することを「リスク」とみなしたにちがいないからである。

だったら、最初から「期限を見直す」として、契約上の期限を設定し直すべきだと主張するのが当然だからである。
しかし、日本政府はこれができない。
こういう「恣意的なやり方」が、役人支配の「セオリー」だからである。

すると、ここからわかるのは、「政府の計画」における、「事業者の利益」についての設定が、事実上なかった、ということである。
これぞ、「武士の商法」。
優秀な役人は、優秀なビジネスマンになりえないという法則そのものの証明である。

もちろん、撤退の理由はこれだけではないはずで、もっとも大きなリスクとは、上述の「政府の恣意的なやり方」だろう。
すなわち、事前に決めたことが決めたことにならない、ということだ。
これでは、「契約」にならない。

わが国における「契約」は、世界標準の「契約」とはちがうのだ。
その端的な例は、日本におけるたいがいの契約書の最終条項にいれる「双方が誠意をもって話し合うこととする」に象徴される。
つまり、この「条文だけ」しか、決めごとがないのである。

べつのいい方をすれば、この「条文」が、契約書全部の「エッセンス」になっている。
だから、さまざまな条文に書いた決めごとを、たとえ契約者のどちらかが破っても「誠意をもって話し合う」ことになる。

この話し合いの結果が「不調」になったとき「だけ」、裁判になるのだ。
「誠意がない」からである。
クレーマーがいう「誠意を見せろ」につながる概念で、わが国が「契約社会」ではないことを示す例になるのである。

欧米人との契約書には、「誠意をもって話し合う」という概念そのものが「ない」から、事細かく双方の権利義務が記述される。
どちらかが、この権利義務を怠る事実があれば、即裁判になるのはこのためだ。

もちろん、裁判所だって、日本のばあいは「よく話し合った結果ですか?」を前提とするのに対して、あちらは、条文の記述と事実の判断をする「だけ」だ。

この「文化の差」が、カジノで出た。

元気に手を挙げていた横浜市は、市長が「驚きはない」と、ポーカーフェースを決め込んだから、なかなかの「ギャンブラー」である。
それに、今回のことが、他の候補となる事業者にも影響をあたえるか?との質問に「想像もできない」とこたえている。

この市長は、大手民間事業会社の役員経験者との触れこみだったが、「女性枠」という性別における「優遇」でなっちゃったのではないか?とおもわざるをえない。
女性管理職比率とかを「目標値」にする不思議が優先される国ゆえの「利得者」のひとりなのかもしれない。

そして、国の「ポチ」として、あくまでもお国が目指すIRをやる、というのも、「やめられない」という先の大戦の状態に近似している。

今後、活発化が予想されるのは中国の業者の動向だ。
こちらの文化は、わが国の契約の概念よりも欧米から遠い。
アフリカなどの国々を、借金漬けにしてコントロールするように、より「やくざ」に近いのは、近代ではなく近代以前の中世社会だからである。

世界最大の中華街といわれた横浜中華街も、この三十年で大変貌し、あたらしく大陸からやってきたひとたちの店が過半になった。
その意味で、あちらからのIR事業者こそ、地元中華街と連携する地域メリットがある、とかなんとかいって、横浜市民や日本人の資産を吸い上げるマシンを、自虐的に誘致することになるのだろう。

役人栄えて国滅ぶ。

コロナ禍による日本経済の打撃は、フローだけでなくストックにも及ぶこと確実で、アメリカのカジノ事業者は、わが国に吸い上げるべき資産がない、と判断した。
つまり、貧乏国だというレッテルを貼られたことが「衝撃」なのだ。

さては、横浜市議会議員のみなさんは、どんな活動をするものか?
市民にわかりやすい状況になってきてはいる。

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