詫びない宿の残念

滅多にないけど、たまに「当たり」があるクジとおなじで、「まいった感」たっぷりの宿に遭遇することがある。
結論を先にいえば、二度と利用しないという決心をすることになるので、改善のためになる文句すらいわずに退散するのが一番いい。ただ、このブログの読者には、「事例研究」として情報提供したい。

山梨県のとある市にある宿である。
この街には来春に、初めてとなる大手ビジネスホテル・チェーンの開業が報道されていて、実際に建設途中の建物を見ることができる。
なぜにこの街に進出するのかをかんがえれば、宿泊施設の空白地帯だからであろう。

かくいうわたしも、この街にこれまで宿泊したことがなかったのは、数少ない施設のため、ほとんど予約がとれないからである。
いってみれば、競争がない状態ともいえる。
これまで通過を余儀なくされたひとたちの需要を見込んだから進出をきめたはずである。

しかして、決定前には現地調査というのを必ずおこなうのが大手である。大きな投資を伴うから、取締役会だけでなく株主にも妥当性の説明義務がある。
果たして、この宿も調査対象になったはずである。そして、まちがいなく「敵にあらず」という結論を出したのは、実際に進出を決めたからである。

蛇足ながら、「調査」とは、実際に企画担当者が利用することをいう。規定のチェックシートもあるはずだ。
それには、建物・施設・設備といったハード面と、人的サービスについてのソフト面とがあって、内部評価するのである。

全国に400店舗以上を運営する大手にあっては、いつもながらの「調査」であるから、かなりお役所的で機械的な調査になっている可能性が高い。
なぜなら、そうでないと一定の基準による評価ができないからである。
だから、この場合の機械的というのは、目的合理的な「いい意味」である。

それで、当該の家族経営による宿に話をもどすと、おそらく大手の進出について、こちら側も「脅威」に感じていないはずである。それは、街の中心にあるという「立地」の有利に変わりはないからであるけれど、悲劇的な「鈍感」さも理由に挙げることができる。

今回、不可能が可能になって予約できたのは、コロナのおかげでもある。
旅行日程上、この地の滞在がポイントになったのでダメ元覚悟で予約の電話をした。
「電話」なのは、いまどきHP上で予約ができないし、ネットの旅行代理店とも契約していない。部屋数が6室しかないためであろう。

トラブル自体は単純で、夫婦での旅なのに、チェックインを終えて部屋に入ればシングル・ルームだった、ということである。
ベッドだけでなく、スリッパからタオルまで「シングル」なので、早速にフロントに電話した。この対応が、「クジに当たった」のである。

ご予約時にシングルと確かにおっしゃいました。

と、フロントの女性は啖呵を切ったが、予約の電話は初老の男性とおぼしきひとだった。なぜに、ここまでいい切れる自信があるのか?理解に苦しむ。それにチェックインでは、夫婦で荷物を持っていたでしょうと伝えると、想像を超えた返答がきた。

お一人様は帰られるのかと思った、と。

しかし、これでは寝むことができないので困ると伝えたら、エキストラベッドを入れるので待ってくれという。
いつまで経っても来ないので、再びフロントに電話すると、同じ女性が忙しいので行けないからもう少し待っていてという。

しかも、素泊まりなので夕食に部屋を出る「はず」だから、そんなに急ぐこともないでしょう?と。
いいえ、当方は部屋から出る予定はない。
地元の「名物」を買い込んで、部屋飲み、をしようという魂胆だからだ。

結局、チェックインしてから1時間後にベットを運んできた。
準備ができたら、帰りがけ、ようやく「お待たせしました」とは口にしたものの、同時に、追加料金がかかるという。ここは、狐の宿か?

しかも、孫の小学低学年とおもう女の子が爺じと一緒にやってきて、「まだなの?早く行こうよ」といっている。爺じはこちらに笑顔で「すみません」といったから、こいつが予約電話の犯人だと確信した。
奇しくも親子三代がやってきたわけだ。

呆れてものがいえないけれど、これは関東人の典型で、関西人なら黙っていないだろう。

室内のライティングテーブルには、山梨県知事の顔写真入りご挨拶文があった。
「感染すな」といいたいのか、「ようこそ」といいたいのかが不明な不思議な文面である。さすがは元財務官僚。お役所言葉が上手である。

どういういきさつでこんなものが部屋にあるのかしらないけれど、どうして県知事のメッセージを読まねばならぬのか?こういう「介入」を許すから、客が優先という発想も失われるのだろう。

なんだかこのひとたちの未来が暗くて気の毒になった。

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