適当なコストコの勝ちかた

国内では「消費不況」といわれて、小売業の軒並みの不振がつたえられているけれど、巨大なアメリカのスーパーというあたらしい概念で成功しているのが「コストコ」である。

年会費という入場料をあらかじめ納めないといけないから、厳密に安さ「だけ」をかんがえると、あんがい元をとるには大量買いがひつようになる。

それに、しらないうちに、年会費が値上げになっているし、提携カード会社も勝手に変えて、さんざん入会キャンペーンをやっていたカードすら使用不可になった。

日本的発想なら、顧客からのクレームがこわくて、こんな一方的なことは極力避けるか、社内で提案しようものなら「バカあつかい」されそうだ。
じっさいに、どのくらいのクレームがあったのかしらないが、店内でトラブルめいたことを目撃したことはない。

これは一体どういうことなのか?

消費者は直接的な価値を買っているの「ではない」、というマーケティングのセオリーをあらためておもいだせば、ふと気がつくのだ。
アメリカの生活という「疑似体験を買っている」のだとおもえば、それはもう「アミューズメント・パーク」だからである。

東京や大阪にある、本物のアメリカのアミューズメント・パークの入場料は、べつに消費者の意見をきいて決めているものではないし、支払方法だって一方的でも文句をいわない。
客が文句をいうのは、「陳腐化」に対してだろう。
つまり、事前期待値が達成されないときに発生する。

ふつうの主婦なら、コストコの商品が「すべて」どこよりも安いとおもっていない。
それよりも、「アメリカらしさ」がうしなわれたら、たいへんな不満がおきるはずなのだ。

ヨーロッパを制したはずのカルフールが、日本の西友を買収しても、そこに「ヨーロッパの香り」はなかった。
おそらく、これがカルフールが不振の原因だとおもうのだが、実際のヨーロッパのカルフールの店舗も、日本の大型スーパーとあまり変わらないから、もともと「ヨーロッパの香り」なんてものはなかった。

「旧大陸」のふるい流通、そして、日本のふるい流通という古いものどおしが「近代的合理性」を追求したのが共通にある。
だから、もはや「新味がない」ということになったのだかんがえれば、これはもう「文化論」になる。

日本にきたときのコストコは、世界ランキングではそんなに目立った存在ではなかったけれど、「アメリカの消費文化伝道師」として、圧倒的な支持をえることに成功し、会社も急成長した。

それは、「大雑把なアメリカ」というイメージと、「個人の大量消費」とがむすびついた、常識破りの「物量」が、細かいことに気を配る、わるくいえば「ちまちました」日本文化との対極にあったから、はじめてこれを体験した日本人は「ぶったまげた」のである。

みたこともない巨大なパッケージの洗濯洗剤や、牛肉のかたまり。
なによりも、ショッピングカートの冗談のような巨大さが、まるで別の世界を演出した。

それは、従業員たちの「人種」もふくまれる。
日本人だけで構成される売り場しかみたことがなかったから、外国そのもので、しかも、かれらの胸には「ファーストネーム」だけが大きくアルファベットで印字されている。

こうなると、細かいことに気をつかうことがすっ飛んで、「大雑把」のお気軽が快適になるのだ。
そうなれば、「個人の大量消費」にはしって、巨大ショッピングカートが満杯になるまで購入する。

スロープ状のエスカレーターでは、みせびらかしの消費に満足するひとたちを見つめながら、これから売り場にむかうひとたちが他人のカートの中身を無言で評価するのだ。
そして、自分たちも一杯になったカートでエスカレーターに乗る姿を想像している。

おどろいたことに、コストコでは「欠品」がふつうにある。
それで、ヘビーユーザーたちが、かってに情報サイトをたちあげて、お勧めの品と、欠品・入荷情報を提供してくれる。

これが、どのくらいコストコ本体の業務量を削減させているのだろうか?
かつてのアップルコンピューター「マッキントッシュ」が、純正品だけではなく、ぜんぜん関係ない「サードパーティー」というひとたちが、欠けている機能を埋めていたような現象とおなじなのだ。

コアなファンを満足させれば、あとからいろんな価値がついてくるのである。
コストコは、この構造をポーカーフェイスでつくりあげているのであって、もはや簡単に他社がまねできないレベルになっている。

適当な大雑把さが周辺を巻きこんでうまれた、あたらしいビジネス・モデルである。

「おもてなし」文化に依存する、日本のサービス業にはできない、と言い切れる。
ということは、「おもてなし」文化に依存するのをやめたら、できるかもしれないことをおしえてくれている。

これは、製造業でいう垂直分業ではなく、水平分業に勝機があるのとおなじことなのだ。
つまり、なんでも自社でかかえこむ従来型のビジネス・モデルを継続することの困難さをしめすのだ。

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