長期政権の実質無成果どころか

「モラル・ハザード」(moral hazard)についてかんがえたい。

この言葉は、主に三つの要素的な意味があって、そのなかの「日本語」の意味は、外来語としてというよりも「和製英語化」したという特徴がある。
それは、「moral」を「倫理」と訳したことが原因とされる。

辞書によれば、単数形での「moral」には「教訓」という意味合いがつよく、「道徳」の意味ならば複数形「morals」や「morality」を用いるとある。

また、おおくの辞書で「moral」は、先に「形容詞」としての解説があって、名詞の解説はあとになっている。
これにくわえて、「morale」という発音も綴りもことなる名詞が、日本語の「やる気」とか「士気」の意味になる。

あんがいややこしいのだ。

それで、英米人がいう「moral hazard」は、
・プリンシパル・エージェント問題
・保険業界用語
という二つの意味を、状況によってつかいわけている。

・プリンシパル・エージェント問題
プリンシパルとは、部下に業務を任せたひとという意味で、エージェントとは、任されたひとをいう。
たとえば、営業マンの社外でのサボりとか、経営者の判断が株主に高いリスクをもたらす場合などをいう。

・保険業界用語
保険を掛けているから安心だとして、かえって注意散漫になって事故率が高まることをいう。
また、金融危機のときにアメリカ合衆国政府が金融機関に公的資金を投じようとしたとき、議会がこれを「moral hazard」だとして否決したときのつかいかただ。

さて、そんなわけで、わが国をながめて、歴代最長を誇る現政権には、どんな成果があるのか?と問えば、ほとんどなにもないばかりか、「moral hazard」すら起きている。

これに、野党のまったくの無為・無力という、「moral hazard」がそえられて、政権の無成果を補助している感すらある。
野党による本質的な質問がないから、政権に打撃をあたえることができないばかりか、その無能・無責任さが、かえって政権の支持率を維持する役割を果たしているからである。

つまり、国家中枢における「moral hazard」が発生しているのがわが国なのだ。
実質「全党相乗り」が、国家で起きている。
このときの「moral hazard」は、上述のすべてを指す。

新型ウィルスの問題が、「防疫」という概念から、「経済政策」という分野にまで「感染」して、さまざまな「moral hazard」を一生懸命やります、と首相が発言したという「moral hazard」が起きた。

たとえば、学校を休みにしたから、子どもの面倒をみる必要が親に生じて、そのために仕事を休むばあい、賃金を政府が保障するとか、給食センターに働くひとや、仕入れ先業者、あるいは農家に補助金をだすとか。
もちろん、これに「中小零細」へ、実質無利子・無担保の貸付制度を創設することもふくまれる。

なんでもありなのは、「前例にとらわれず」ということだというが、その「前例」とは、「moral hazard 防止」のことだったのではないか?

この政権は、成果が無いことでしられてきたが、とうとう「反政府的」な政策を打ち出した。
つまり、日本政府の理念であるはずの「自由と民主主義」に対する、重大な攻撃を開始したということだ。

まったくもって、超強力な「社会主義」をおこなう、と宣言したに等しい。
「党」が「政府」を支配する形式は、どんな「党」がやっているのかをかんがえれば、もはや自民党こそ国民の敵である。
自民党内に、自由主義者が絶滅した証拠である。

有給休暇なら、仕事を休む理由をいちいち会社に説明する必要はそもそもない。
すると、有給休暇を超えて休むときの「保障」を指すのだろうが、どうやってこれを政府がしるのか?そのための企業の事務負担はいかに?

北海道では、給食用の牛乳が余りだしたが、バターは余っていない。
なぜか?
おなじ牛乳なのに、飲用の場合と加工用の場合とで、政府がさだめる引き取り価格がことなるからである。

これを「自由化」すればよい。

民間の銀行経営が行き詰まっているのに、政府系の金融機関、たとえば「日本政策金融公庫」が、無利子・無担保貸し付けをおこなうのは、民間金融機関に「死ね」といっているようなものだ。
金融庁は、なにがあっても「担保をとれ」といっている。

いったい、どんな「理由」で、無利子・無担保貸し付けをおこなうのか?
ゾンビ企業がふえるだけである。
焦げ付いたときは、自動的に国民負担になる。

こんな「経済政策」が、「自由主義」の名の下であっていいのか?
「moral hazard」をこえて、もはや「革命」だ。
自民党政権は、「社会主義革命」を「無血」で、しかも、選挙結果を経て、世界史ではじめてを開始した。

もはや、わが国は滅亡の崖っぷちに立っている。

もう、自由主義者はわが国にいないのか?

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください