JTBの情けない「広告」

「神奈川県にお住まいの方へ」として、都道府県民限定プランというタイトルの配信が、「るるぶトラベル」から着信した。
そして、直下に以下の文章が掲載されている。

新型コロナウィルス感染症防止のため、各地域により外出自粛要請等が実施されている場合があります。
お出かけの際は最新の情報をご確認ください。
また、ご旅行にあたっては旅のエチケットの実施等、感染拡大防止へのご協力・ご配慮をお願いいたします。

こういうのを、「マッチポンプ」というのである。

確かに、JTBは「日本交通公社」という、国家が仕切る電電公社とおなじ「公社」だったという歴史的背景があるのは理解できる。
しかし、電電公社がその後「NTT]となって、厚顔無恥にも国民財産を横取りした腹黒さを臆面もしないのに対して、なんというお行儀のよさであろうか。

例えば、「電話加入権」がその典型で、今とは金銭価値が違う時代に、数万円もの「債権」を強制的に買わされた。
そうしないと、電話線を引いてくれなかったからである。
しかし、「民営化」の折、一切の返金をしない、という強奪が白昼堂々と行われたのだ。
個人だけでなく、大量に回線を要したホテルは、従順にもこれに従っているけれど、どうして「株主」が文句を言わないのかいまだに不思議である。

それに、高利貸しの代名詞でもあった「電話金融」という、電信柱によくみた看板も、担保となる電話債権が紙切れになってこの世から消えて、サラ金地獄に変換された。
それでもって、法定金利の上限が過去に遡及するという「法外」で、現代の徳政令となって、それが「救済措置」になったのだけど、法人クライアントがいない司法書士や弁護士を救済することにもなった。

これを「恥の上塗り」というひともいない。

かつての大卒就職で、人気を誇ったのが、分割民営化された「JTB」で、もう一方の「公益財団法人日本交通公社」は、観光を研究する機関として生き残っている。
「わが国の観光文化の振興に寄与」とあるけれど、どんな「振興」があって「寄与」しているのか不明の、「公益」がつく不思議組織ではある。

もちろん、「エリート校」の卒業生が大挙して入社したのは、JTBの方である。
それでもって、他の大手旅行会社(昔は「旅行代理店」といった)とは一線を画して、「お山の大将」のような振る舞いも、あるいは万年赤字の「国鉄」をも見下しても、文句を言われない存在でいられたのは、なんとなく、かつての「興銀」のような匂いがしたものである。

興銀の東大偏重は、長銀の京大偏重という文化をつくって、日債銀のその他を見下しながらも、三社ともバブルの泡とともに、この世から消えた。
みずほ銀行のシステム不安は、興銀の呪いがあるとしか思えない。
「うどの大木」といわれた第一勧銀と、東京都の金庫番だった富士銀を、潰れた興銀マンたちが見下しているにちがいないからである。

ところが、見下される側にも「矜持」が乏しい。
受験の「偏差値」による格付けが、おとなになってもとれない「秩序」が、社内だけでなく業界にも形成されるからである。
このパターンが、旅行業界にもあるのだ。

それは、旅行業のなかだけでなく、宿泊業にも及ぶ。
鼻っ柱が強いホテルマンたちは、「士農工商エージェント」といってはいたが、客室販売の「流通ルート」を握る「エージェント」に、結局は頭が上がらない。
これを払拭するチャンスは、「ネットエージェント」が勃興したときだったけど、「業界が違う」という「堅気」の理由で、宿泊大手が買収して傘下に置くことなく、おなじパターンで支配下に入ったのだった。

ただし、当時の宿泊業経営者が、「インターネット社会」を理解できていなかったのは否めない。
航空会社系の「ディストリビューター」の天下でもあった時代背景を「常識」としていたのである。
これは、「天下のJTB」もおなじだったはずで、今日の苦境の原因といえるからである。
けれども、なにもJTBだけでなく、業界が読み間違ったのではあるけれど。

すると、いかなるマネジメント(社風)だったのか?ということになって、やっぱり「興銀」を連想してしまうのだ。

日本の報道はなくても、あるいは外国でも報道されなくても、ヨーロッパでは、どんなことが起きているのかの「生」情報は、旅行会社なら入手できるはずだ。
すると、なぜに日本政府のいう「緊急事態宣言」やら「まんぼう」に従順であるのかが問われるのである。
むしろ、「意味なし」を発信してこその「信頼」というものだ。

旅行会社の経営者は、この期に及んでもまだ「旅行商品を売る」と考えていることの証明が冒頭の配信だ。
そうではなくて、「情報を売る」ことが本業なのである。
このブログのタイトルを飾る、拙著の副題(本当は「本題」)の『観光、ホテル、旅館業のための情報産業論』を手前味噌ながら読めばわかることである。

なぜに「天下の興銀」が滅亡したのか?を、「間に合う」うちにJTBの社員は再考すべきであろう。

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