ついに菅新政権初の外交相手として、アメリカのポンペオ国務長官が来日した。
「ついに」というのは、7月にアメリカの対中戦略を変更したと公言して、世界を驚かせて、双方の当事国があの手この手で味方につける競争を開始したから、「コウモリ君」では「ついに」すまされない事態がやってきた、という意味である。
しかしながら、「コウモリ君」ではなくて、確信的に親中の幹事長が与党にいるから、政府と与党が「股裂き」になることが予想される。
それで、アメリカは政府の息のかかっているシンクタンクの「研究レポート」として、安倍前政権での首相秘書官だったひとと一緒に、「名指し」するという先手を打っている。
この「一手」に対して、わが国は、名指しされた秘書官を内閣官房参与に横滑りさせ、さらには共同通信で「執拗な安倍政権批判」を繰り広げた、論説副委員長を「首相補佐官」とする、ウルトラC級の人事技を二連発で立て続けに披露した。
また、一方で、昨日書いたように、韓国に「安全保障上の問題」として、「輸出管理規制強化」の説明をしないのと同じ説明で、日本学術会議の人事を拒否しているから、「人事技」でいえば、こちらは、「従順」のウルトラC級をだしている。
はたして、「コウモリ君」をやり遂げて、このあとに続くあちら様の外務大臣を迎えるのか?
じつは、かなりの「正念場」なのである。
「戦略の変更」を公言している相手に、戦後このかたの「従来通り」で対処しようという魂胆がなんだか透けて見えるけど、こうした「変化」に対応できないのが「官僚制」の特徴なので、政治家と官僚の内輪のバトルがどうなっているのか?も、アメリカにはじっくり読まれるのだろう。
来日早々、さっそく、ポンペオ氏は、大技の一手を打ってきた。
アジア安保枠の構想を披露したのである。
ヨーロッパには、かつてのソ連圏に対抗した「NATO」が、いまでは「ロシア」をにらんで健在である。
日米印豪の4カ国外相があつまって、「クアッド」だという程度のはなしではない。
どこまで事前に知らされていたものか?
3国の外相に驚いた様子がないのは、ポーカーフェイスなのか?
しかし、今年の6月に、アメリカはもっと先手を打っている。
それが、「EPN(経済繁栄ネットワーク)構想」である。
これはわが国では、「化学業界」の話題になってはいたが、初耳の方も多かろう。
この構想の狙いはズバリ、「グローバルな供給網の脱中国」なのである。
そこで、対象となる供給網とはなにか?をかんがえると、さいしょに思いつくのは、産業の米である「半導体」である。
ここにきてアメリカが、アメリカの技術をつかった生産方式でつくられた半導体の供給規制を開始したのは、この「構想」を「実施」しているからである。
さらに、トランプ氏は、「G7」とか「G20」ではなく、「G10」あるいは「G11」という国際協調の枠組み構想まで発言している。
もちろん、この「10カ国」あるいは「11カ国」のなかに中国はカウントされていない。
けれども、意外な国がカウントされている。
それが、「韓国」なのである。
彼の国民が、この構想に大喜びしていると伝えられているのは、「先進国」の中に入ったということである。
しかし、肝心の政府・あるいは政権は、先月の国連総会での「核放棄なき戦争終結」を突然発言したように、果たしてアメリカからの離脱を図っている。
つまり、「コウモリ君」ではなくて、あちら側に行くことを宣言したようなものだ。
トランプ氏が来月、再選を決めたなら、いきなり「米韓関係」が注目される。
その意味で、今回、国務長官の韓国訪問がキャンセルされた意味は、「深い」のだけれど、これは、わが国の地図上の立ち位置からも「大問題」である。
何のために、日清日露の両戦争で日本人が血を流したのか?が、振り出しに戻ってしまう大事態である。
つまり、わが国周辺の「流動化」が著しいのである。
アメリカが韓国を誘ったのは、サムソンの半導体を確保したいからであろう。
残念だけど、わが国がこの分野で直接誘われることはない。ただし、サムソンの技術はわが国の技術である。
そんなわけで、ものすごくダイナミックな戦略構想が立てられていて、これを着実に実行しているのがアメリカなのだ。
これを侮ってはいけない。
だから、わが国でいう「ウルトラC級」が、そのダイナミックさからすると、爪の垢ほどに見える。
アメリカ人の用意周到は、かの戦争でもそうであったように、相手を「雪隠詰め」まで追いつめることにある。
すると、次のダイナミックは「台湾承認」だ。
なんと、国民党がアメリカと国交回復せよと台湾議会に提案し、これが通過した。
ポンペオ氏は、もしや、今回の帰りがけに、台湾訪問というサプライズをやるかもしれない。
ちまいところでは、与党幹事長を検察が逮捕するという事態だってありうる。
アメリカに逆らった、二階氏の師匠、田中角栄氏がどうなったかを忘れたわけではあるまい。
おビックリは続く。