TPP(環太平洋パートナーシップ協定:Trans-Pacific Pertnership Agreement)に英国が加盟した理由を書いた。
ひるがえれば、2016年2月にアメリカも含めて署名されたが、大統領がオバマからトランプになった直後の17年1月、アメリカが離脱してそのままになっている。
「TPP亡国論」なる、反米論調が盛んだったけど、アメリカから離脱して驚いたのはこの「論」をいっていたひとたちだろうに、その感謝の念をトランプ氏に向けるものがいない不思議もある。
代わりに、アメリカが抜けたTPPとは、気の抜けたラムネのようだとの評価が盛んになったものだ。
主語がはっきりしないので、日本人にとってよいことなのか?悪いことなのか?がわかりにくい。
これも、「わざと」だとおもうのは、一般の日本人にかんがえさせないための仕掛けだとしかかんがえられないからである。
もはや一般の日本人は、難しいことをかんがえるのを拒否するように訓練されているからである。
かんたんにいえば、TPPは、アメリカによる日本経済あるいは日本人の資産を略奪するための、「仕上げ」になるはずだった。
それは、オバマを支えた背景が、民主党やら共和党RINO(Republican in name only:名ばかり共和党員)であったことを思い出せばいい。
このひとたちは、戦争屋であり、カネのためならなんでもする、という邪悪にみちた集団なのだ。
それが証拠に、当時のアメリカ連邦下院公聴会では、TPP加盟による米国の重要ターゲットが、「日本郵政問題」であると確認されており、それが、簡易保険 93兆円と、ゆうちょ預金 175兆円とあわせた、「ゆうちょマネー約 270兆円」であった。
これは、小泉政権(担当は竹中平蔵大臣)がやった、「郵政改革」の総仕上げに当たる。
当時、「アメリカ・ファースト」をスローガンにしていたトランプ氏は、アメリカさえよければ他国はどうなってもよい、と誤解されたが、これは、「個人主義」の誤解が「利他主義」をよしとするようなもので、「各国ファースト」が彼の主張の重要なポイントなのである。
個人を重要視する個人主義は、他人の「個」も尊重してはじめて成立するから、「利他主義」とはまったく異なる。
元ウクライナ大使で、尊敬する、馬渕睦夫氏をして、ここがずれているのが、わたしにはわからない。
大使は、「個人主義」を否定して、「利他主義」礼賛をいうのである。
「都民ファースト」をあれだけ主張した、小池百合子都知事は、トランプ氏のスローガンにただ乗りしただけの、「自分ファースト」だったことは、いまでは誰も否定できないだろう。
「自分ファースト」が決して「個人主義」でもないのは、たんなるサイコパスだからである。
トランプ氏がどこまで安倍晋三氏を心の友にしていたのかはわからないが、安倍氏に「日本ファースト」を推奨していたことは事実だ。
戦後のアメリカ大統領で、日本の独立を促した、いまでは最初で最後の大統領になっている。
言葉が洗練されていないこともあって、エスタブリッシュメントたちから嫌われるのも、トランプ氏の特徴だが、その主張には一貫性がある。
この意味で、政権発足直後に、TPP離脱を宣言したのは、他国を収奪の対象としない、という宣言でもあった。
では、オバマ氏の子分であるバイデン政権が、なぜにTPP復帰をしないのか?
それは、できない事情ができたからである。
アメリカ(オバマ政権)が狙った、日本収奪のうまみを我々にもよこせ、という意味で、ロシアと中国が加盟を打診してきた。
中国には、表向き、台湾の加盟申請への対抗、という理由があるけど、ロシアはよりストレートなのである。
そんな中での、ウクライナ問題は、日本をロシアから敵国認定されるまでになったので、バイデン政権には障壁がなくなったようにも見える。
しかしながら、「BRICs」が、組織化されて、いまではBRICsの規模が地球を覆っているのである。
サウジアラビアが、「ペトロダラー」を否定して、すでに人民元やロシアルーブルでの石油代金決済がはじまった。
BRICsの域内共通通貨構想は、いよいよ発表段階になっている。
噂では、「金本位制」ではないかとの憶測が有力視されている。
これがまた、国際金融資本家からしたら、「最高!」といわしめるだろう、「うまみ」にあふれている、「仕掛け」だ。
これぞ、国際金融資本家たちの「お家芸」への回帰なのである。
アメリカの通貨覇権に対する、公然とした対抗措置が本当に現実化するのかを、世界が見守っている、というのが常識的見解だろうが、ほんとうは、「よだれが垂れる」のを我慢しているのである。
もちろん、世界人口レベルでは、ロシアに加担する数が、ウクライナに加担する数を大幅に上回っているので、今どきの「G20」とかといっても、とっくにローカルな会合になっているのだ。
アメリカからしたら、BRICsへの対処に忙しくて、TPPどころではない、というのが本音だろう。
彼らは、獲物の計算には長けているのだ。
また、日本分割を決めたなら、ますますTPPには興味がなく、落ちぶれた英国に獲物を分け与える余裕を見せているのも、BRICsからの収奪を練る証拠なのではないか?と疑うのである。