アメリカの「侮日派」

1954年(昭和29年)12月10日から、翌年3月19日までのわが国は、第一次鳩山一郎内閣(日本民主党)だった。
副総理、外務大臣は、1945年9月2日に東久邇宮内閣の外務大臣として降伏文書に署名した重光葵であった。
なお、この人は元来の職業外交官で、「人種差別撤廃論者」であった。

それで、戦時中は、東條内閣、小磯内閣の外務大臣を引き受けて、「大東亜会議」の成功に奔走している。

ちなみに、わが国の降伏文書に署名した「全権」は、政府を代表した重光外相とは別にもうひとり、軍(大本営)を代表して、梅津美治郎参謀総長がいた。
政府と軍は、別だったのである。
戦後教育は、このような手続き上の重大なことも隠蔽している。

さてそれで、あたかも重光氏がピエロであるかのような評価をする日本人がいるが、民主党トルーマン政権から代わった、共和党アイゼンハワー政権のダレス国務長官に、「日本は自主防衛するから、米軍は6年後に日本から撤退して欲しい」と面と向かって述べた大臣であった。
ダレスは、「お前たち日本人に、そんなことはさせない」と一蹴したという。

以来、日本の外交官・外務大臣で、重光のような度胸と見識のある人物は絶えてしまったのである。
降伏文書に調印した後、「願はくは 御國の末の 栄え行き 我が名さけすむ 人の多さを」と詠んだ心境は、お見事である、と伊藤貫氏はその著作に書いている。

じつはアメリカの衰退は、ベビーブーム世代が引退をはじめる、2011年から30年にかけてがピークになる。
アメリカは、日本も酷いが老いていくのだ。
このタイミングと、政府債務の拡大膨張が、反比例する。

つまり、アメリカの覇権はとっくに財政的に耐えられなくなっている。

これに、BRICsと加盟を決めたサウジによる、ペトラダラーの終わりで、アメリカドルは、その通貨価値の根拠を急速に失うこととなる。

しかして、アメリカのグランドストラテジーは、これらの事情を無視して、アメリカ一極支配の世界を半永久的に継続させることに集中している。
それが、ロシアと中国の封じ込めと、日本とドイツに自主防衛させないで属国におきつづけることなのだ。

もちろん、アメリカ一極主義は、他国の反米連合を形成させる動機となるし、それがBRICsとして現れてきたのである。

したがって、アメリカの知日派の中には、親日的知日派と、侮日派とに分けることができる。

この場合、親日的知日派とは、なにも日本だけを特別視してくれている、日本贔屓ではない。
だいたいにおいて、異国文化を尊重しようというかんがえの持ち主で、そのほとんどが、リアリストなのである。
だから、世界のいろいろな地域特性(歴史や文化)に対しての理解も深い。

その一部が、親日的知日派として、日本で受け止められているに過ぎない。

すると、「侮日派」とは、やはり日本だけを侮蔑している、ということではなくて、異文化を尊重する気がはじめからない、浅はかなひとをさすことになって、こういった人物たちの特徴として、アメリカン・エクセプショナリズム(アメリカは例外的に優れている国)という思想背景がある。

この思想のはじまりは、17世紀に、英国(王)政府が押し付けた、英国国教会に反発したひとたちが新大陸に渡ってきたことと直接関係している。
つまり、彼らは、アメリカに神の国を建設しようと本気だったのである。
これが、道徳的優越感に変容する。

トランプ氏を支持するために立ち上がった、アーミッシュしかり。
そのトランプ氏も、この伝統を引き継ぐ、プロテスタント長老派の重鎮なのである。

しかし、トランプ氏はややマイルドで、「アメリカ・ファースト」はいうが、「エクセプショナリズム」はいわない。
むしろ、各国ファーストを他国に促しているのである。

それがまた、ハンガリーのオルバン首相が望んでいる、「カムバック・トランプ」の意味である。

ただし、かつて、まだ副大統領になる前のバイデン上院議員(上院外交委員長)も、「1994年から99年のための国防プラン・ガイダンス:DPG」(国防総省の機密文書がリークされた)において、日本とドイツを属国に置くその戦略に、「日本とドイツの横っ面を張り倒すようなものだ。(中略)日本とドイツをこのように侮蔑し、敵対視することが、本当にアメリカ外交の利益となるのだろうか」と、今となっては信じ難いほど「まとも」な見解を発表している。

日本人にとって、バブルとバブルの崩壊が、アメリカの対日戦略発動と合致していることを、ドイツ人にとっては、東ドイツとの統一も忘れてはならない。

侮日派が、実際のところのアメリカ外交を牛耳っていて、これには「超党派」の議員団も賛同している。

その対日(および対独)重要戦略は、「エントラップメント」(永遠の罠にかける)というもので、なんとしてもこの2国は、これら国民の自由にさせない、という第二次大戦後のアメリカの「誓い」ともなっている。

トランプ政権は、この誓いを破棄して、安倍氏に「日本独立を促す」戦後秩序の破壊を試みた。

これが、アメリカの主流をなす侮日派からの大反発を呼んだのである。
しかし、残念ながら、日本側に、「独立の気概も準備もなかった」のである。

24年の大統領選は、2度目の日本独立のチャンスだが、やっぱり気概も準備もしないのが、わが国の実態で、よくよくそれは、国内の侮日派が根を張っているということなのである。

911から22年が経った日に。

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