アメリカ国家予算と連邦下院議長解任?

「年度」というかんがえは、基本的に、任意なので、1年間であればいつからでもいい。

わが国は、国も民間企業も、だいたい、4月1日から翌年3月31日としている。
もちろん、民間企業にはすきに決めることができるから、これ以外だって問題はない。
アメリカの企業の場合には、あんがいとカレンダー通り(1月1日から12月31日)もふつうにある。

ついでに、ドラッカーは、「期間損益」というものを、その著書、『すでに起こった未来』(ダイヤモンド社、1994年)で否定していた。

企業活動は基本的に、永続するもの(「ゴーイング・コンサーン」という)だから、1年単位で期間を切ることに何の意味もなく、かえって、「決算」なんてどうにでも表記できるから、こんなものを信じてはいけないと説いた。

国家予算は、民間企業の期間損益よりもややこしい。

おおくのひとは、税収をもって民間企業の売上とみなす悪い癖がある。
学校教育における、重大なウソのひとつである。

国家は、税収で賄ってはいない。
むしろ、税収で賄っているなら、それは、おどろくほど古風な国である。

じつは、国家にはさまざまな収益機会がある。
まずは、手数料収入だ。
それにいろんな財団やら法人を設立して、収益を得ている。

たとえば、道路公団とか、乳製品とかのご禁制に相当する物品輸入における関税やら、手数料は、これら関係財団を通じて、上納される仕組みがあるが、見返りに役人が下ってその一部を報酬としてさらっていく。

大規模なのは、国債発行による、紙の現金化だ。
これには日銀とかの中央銀行が、国家のATMの役割をしている。

しかし、現代の現金とは、単なる数字のデータのことである。
個人だって、通帳には数字が印字されているだけで、残高分の現生をみたことがあるひとはいない。
住宅ローンが通って、いったん数千万円が通帳に書き込まれても、それは数字だけなのだ。

銀行口座から現金を引き出すならまだしも、送金とか振込とかは、ぜんぶ数字が動くだけで終わる。

そんなわけで、国の「出納」は、民間企業よりもややこしいのである。
それで、「証紙」やらを購入させて、手数料収入としたから、どんな行政サービスがいくらの収入になっているのか?をみるには、また面倒が発生する。

「証紙」の収入と、申請用紙に貼られた数を一致させないといけないけど、こんなことを誰がやっているのか?
つまり、売上げ管理をするものも、仕組みもないのである。

そんなわけで、どの国も適当なのが近代国家というものだ。

その代表格のアメリカ合衆国は、予算年度を10月1日から翌年9月30日としている。
とりあげず、議会は「45日間のつなぎ予算」を通して、国家行政が停止するのは1回は回避した。
しかし、この短い期間で、予算案ぜんぶが議会を通過するのか?といえば、かなり厳しい。

アメリカの予算案は、わが国の適当な一括案とはちがって、何本にも別れているのだ。

とくに次年度の柱は、
・歳出削減案
・ウクライナ支援
・国境警備 となっている。

なかでも巨額なのは、ウクライナ支援だが、これには共和党トランプ派だけでなく、民主党にも消極派が多数いる。

実質的に、アメリカらからの支援が止まれば、ウクライナは和平をするしか選択肢がなくなる。
つまり、「平和」に貢献する予算となる。
これを阻止したい勢力とは、戦争屋なのである。

だから、戦争屋をあぶり出す予算案となっている。

しかし、45日間で決められないかもしれないのは、共和党トランプ派が、グズグズしているマッカーシー米下院議長の解任を、並行して発議する可能性があるからだ。

今年はじめ、あたらしくなったアメリカ連邦下院議会は、議長選びで紛糾したのはニュースになった。

もちろん、アメリカもわが国のマスコミも、アメリカ民主党のプロパガンダ機関なので、これを共和党の「党内抗争」としてだけの方向から描いていた。

一面だけをいえば、正しいが、全体を報じないという意味で、プロパガンダである。

マッカーシー氏は、いわゆるRINO(Republican In Name Only:戦争屋)なので、トランプ派からしたら、議長になるべきひとではない、という基本認識があったのである。
それで、「条件闘争」になって、さまざまな条件を呑んだ協定に署名させて、やっとこさ議長に就任できたのである。

マッカーシー氏がそこまでしたのは、「お飾り」とみなされるわが国の議長とちがって、絶大なる権限を付与され、なおかつ、大統領・副大統領につぐ、アメリカのナンバースリーになるからである。
この権限を超えてまでしっかり悪用行使した、前任者の民主党ナンシー・ペロシ氏は、その「悪名」を議長職に残した意味で、歴史的な人物だった。

就任から10カ月が経過して、ぜんぜん協定を守っていない、という怒りが、トランプ派からの解任要求になっているのである。
そのまた証拠が、この予算案への甘い対応(バイデン政権のいうがまま)だ、ということなのである。

そんなわけで、戦争を止めさせたいトランプ派と、戦争でもっと儲けたいという派との攻防なのであるが、マスコミは、戦争でもっと儲けたいに与して、利益を得たいとかんがえている。

現場のウクライナのひとびとの悲惨なんて、関係ないのである。

ただし、予算が尽きれば、アメリカという巨大ロボットの活動が停止する。
プーチン氏にとってもそうだが、「これでいいのだ」という覚悟が、こんどはトランプ派とのチキンレースになったのである。

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