組織を構築して、その目的や目標を達成しようとしたとき、ひとは、システム化をかんがえてこれを実行するものだ。
なので、システム化に成功すればするほど、強固に見えてじつは脆弱性(もろさ)を抱えてしまうという矛盾が生じる。
残念だが、複雑化したシステムの中に必ずアキレス腱ができてしまうからである。
それがいくつできるのか?もあるが、ひとつでも認識することができれば、当然にそれを補強する、サブシステムが構築される。
こうして、脆弱性を補強すればするほど、システムはさらに複雑化して、あらたな脆弱性のアキレス腱を作り出すのである。
ならば、そんな複雑化をしないとしたらどうなるのか?
日常が、「モグラたたき」状態になっていくのである。
だから、ひとは、その原因を追及して、これを、「カイゼンする」活動をしないわけにはいけなくなっていく。
現場レベルではうまくいくものの、経営レベルでは困難なのは、「ビジネス・モデル」に内包されたアキレス腱のことをいいたいからである。
たとえば、「デパート業界の衰退」を挙げれば、「小売業の最高峰」と自他ともに許すような評価だったのに、リスク回避のシステム化によって、売り場を「不動産業化」してしまったのである。
これは、いま地方にいったら必ずある、大型SC(ショッピングセンター)の、元になる相似形なのである。
つまり、デパートは、あのビルの中の売り場を細分化・不動産化して、賃貸物件(最低保証固定賃料と売上比率連動賃料の両建て)にしたのだった。
後者の賃料が前者を上回れば、後者の賃料が請求される。
これを計算するために、「レジ」を介した売上金管理が採用されて、いわゆる、何が何個、いつ売れたことがわかる、スパーやコンビニでは常識のPOSレジが相変わらず採用されない理由である。
あくまでも、賃料計算のための手段なのだ。
ここで、デパートが客の目を誤魔化した方法が、賃貸先の従業員にも、デパート社員とおなじ制服を着用させることだった。
それで、あたかも、デパートの自社バイヤーが仕入れた商品を自社販売員が販売し続けているのだと、客に勘違いさせたのである。
デパートが小売の最高峰というのは、あらゆる商品の仕入れを、自社バイヤーがやっていて売れないリスクを抱えていた商売の鉄則があったからだ。
つまり、本来デパートとは、巨大かつ強大な、セレクトショップ(SS)だったのである。
しかしながら、70年代からはじまった、「多様化」に、対向する術を、リサーチ力に求めず、なんと不動産化に求めてしまった。
このときの、「多様化」とは、消費者側の価値観の多様化という意味と、商品をセレクトする側における多様化の不一致のことも指す。
かんたんにいえば、デパートは重要顧客層の設定を、「購買者全員」としてしまう致命的な間違いをしたために、バイヤーがセレクトできないほどにあふれかえった商品の取り扱いを、「あきらめた」のである。
そこではじめた、売り場の不動産化が、やがてブランドショップの誘致合戦となって、路面する最高面積を、有名ブランドの店舗として「貸し出す(売り渡す)」ことが、消費者へのイメージアップにもなるという、あたらしくもないシステム化をしたのだった。
もちろん、これを煽ったのは経済紙とか、経済誌だった。
デパートの経営者も、総じて真面目でないと社内昇格しないので、こうした新聞や雑誌を必ず読んでいるだろうから、「あたらしい」とか、「どこそこのデパートがブランドショップの誘致で優位になった」とかを読み込んで、一層のトンチンカンに走ったのである。
経営トップは、自分自身の再選のために、株主総会での、戦略説明に、こうした「ガセネタ」を利用したのである。
つまり、経営者として何もかんがえなくてもよいというサラリーマン的安易の結果でもあるし、これを、「歴代」がやったのは、そうした人物を後継者として「歴代」が選んだからである。
そんなわけで、悲惨な目にあうかもしれないのは、いつも顧客と働く側なのである。
顧客はとっくに半世紀前に見棄てられたので、いまさら感がある。
ならば、従業員は?といえば、不動産化で売り場にはもうほとんどいない。
逆に、不動産化のための実務としての方策を練ってきたのが、いまの従業員ではないのか?
トップからの命だから、仕方がないといえばそれまでだが、従業員から社内昇格してトップになるのだから、その前になんとか戦略の変更をかんがえなかったのか?と恨まれるのである。
すると、かんがえる文化そのものが、不動産化というリスク回避の中で組織的に喪失したのがデパート業界だといえて、これを、「小売の最高峰」といい続けるマスコミの無責任をいま恨んでもせんないことになっている。
その「最高峰」を買ったのが、コンビニ業界であった。
コンビニ業界の元は、スーパーマーケット業界である。
しかして、スーパーマーケット業界には、「チェーンストア理論」という、バイブルがある。
ファミレスもファストフード業界も、チェーンストア理論によっている。
ところが、コンビニ業界も、2位以下は、みんな「総合商社」の子会社となった。
圧倒的1位の、あの企業の経営基盤は、あたかも盤石にみえるけど、そうはいかないのが世の常で、だからこその脆弱性をかんがえないといけないのである。
以上、「小売」を中心として例としたけど、もって「他山の石」とすべきなのである。