「ニューヨーク・ダウ」と「日経平均」のことである。
投票日以後、日経平均株価は今年の最高どころか29年ぶりの高値をつけた。
バイデン政権になれば、対中強硬策が弛む、という期待が数字になっているのだろう。
トランプ氏の「訴訟戦略」を、悪あがきと市場はとらえている、という記事報道もみられるからである。
一方、ニューヨーク・ダウも上げている。
こちらは、単純な読みではなく、あんがい複雑だ。
日本人が軽視して気にしない、「議会」がやっぱり「ねじれ」たままで、下院は「民主党」、上院が「共和党」に変化はなさそうだが、まさかの下院も「共和党」だってありうる状況だから目が離せない。
これを、「好感」している。
大統領選挙での票の「伸び」やらに疑念があるけど、議会選挙は「予想通り」というよりは、民主党の敗北に近い。
下院の議席は、民主党が減らしているからである。
つまり、大統領選挙との連関が「変」なのである。
事前のバイデン氏圧勝という話が、ギリギリになった上に、議会選挙では負けている。
有権者の投票行動として、大統領は民主党に、地元の上・下院議員には共和党を入れるものか?ということである。
このことはさておき、ダウ株価の複雑さは、アメリカ上院に独特の権限があるからだ。
・大統領指名人事の承認
・条約の批准
この二点は、下院に権限はない。
また、正副大統領、連邦公務員に対する「弾劾」にあたっては、下院が「訴追決議」をして、上院が「裁判所」となって「判決」をくだす。
昨年のトランプ大統領弾劾は、下院で訴追されたけど、上院は相手にしなかった。
わが国の衆議院(下院)優先ということも、アメリカ連邦議会にはなく、上記の上院権限のほかは、両院とも「対等」である。
予算を含む各種法案も、両院の可決がないと成立しないのだ。
だから、アメリカ上院の大統領職に対する「監視」は、強力に作用する。
なお、上院議長は副大統領が兼務する。
上院議員は、各州2人で50州だから全部で100人。
もし、賛成と反対が50ずつで半数となったら上院議員ではない、議長の副大統領の票で決まる仕組みになっている。
だから、野党の安定多数には52議席の確保が必要だ。
そんなわけで、二期目のオバマ政権が機能不全だったのは、中間選挙における上院の惨敗で、共和党が安定多数を占めたからだった。
すなわち、バイデン政権となっても、「機能不全」は確実なのだ。
なんとこれが、株価を支えている理由なのである。
政権が思うに任せないことを、株式市場が期待している。
このことをしっておかないと、あたかもバイデン政権の成立を市場が好感していると勘違いしてしまうし、おそらくマスコミもこれを誘導するだろう。
つまり、日米の株価同時上昇の理由が、ぜんぜんちがうのである。
これは、冷静にかんがえれば当然で、共和党トランプ政権の経済政策は、「減税」と「規制緩和」を二本柱に、「絶好調」を現出させたし、コロナ禍にあっての第3四半期は、先週書いたように空前の成長率を達成した。
アメリカ経済という視点でいえば、こうした政策と「真逆」である民主党バイデン候補が主張した、「増税」と「規制強化」がなにをもたらすかは、火を見るよりも明らかだし、実質の大統領になる、副大統領候補のカマラ・ハリス氏は、計画経済を行う意欲にあふれている。
そんなわけで、アメリカの景気減速は、本来ならわが国経済を直撃するから、一大事なはずなのに、株価はこれに反応しないばかりか、むしろ正反対の反応として「大幅な値上がり」になったのだ。
このことは、わが国経済のアメリカからの「離反」を示している。
大丈夫なのか?
もちろん、わたしは「熱狂的親米派」ではない。
むしろ、これまでの人生で、アメリカ合衆国の領土に入ったことがない。
厳密にいえば、独立記念日の祭典で、横浜の米軍基地に行ったことは幼児期に二度あるけれど。
逆に、お隣のアジアの大国への「依存」ばかりが、「へつらい」に映って見えるのである。
バイデン氏も、おなじく「へつらう」だろうと予測できるのは、バイデン氏一家の所業を見ればわかることである。
これが、デカップリングからの反転になれば、日本学術会議が禁止した分野の研究だって、やっぱり「禁止」が正しいことにもなる。
すなわち、「売国」が正当化されるのだ。
すると、コウモリ君の菅政権が放った、方向ちがいの矢が、一本、ド真ん中を射抜いたこともわかる。
2050年までの温暖化ガス・ゼロは、アメリカ民主党政権との共同歩調と、お隣がいう「電気自動車への全面転換」とを同時に当てるスゴ技だったのである。
しかし、相手の「魔弾」は、次元のちがう空間を飛んでくる。
台湾と尖閣、それに南シナ海である。
わが国の生命線が遮断されることを喜ぶ、愚民がわが国の経済人なのであった。