昨年末に115円/ドルだったのに、いまは150円/ドルの状況になってきた。
つまり、1年もしないで3割も円は下落したのである。
たとえば、韓国ウォンの下落といって騒ぐけれど、昨年末の終値、1,187.9600/ドルが、18日の終値で、1,425.0200/ドルだから、ほぼ2割の下落にすぎない。
これを対円でみると、昨年末の終値、0.0969/円が、18日の終値で、0.1047/円なので、約1割の下落でしかない。
つまり、韓国ウォンの下落を心配するよりも、日本円の下落の方がよほど深刻なのだ。
それで、円については、他の通過でみても、たとえば、発足したばかりの政権がとうとうコケた「大暴落」の英ポンドに対しても、エネルギー危機のユーロに対しても、「全面安」なのである。
つまり、円の「ひとり負け」状態なのである。
にもかかわらず、韓国経済の崩壊とか何とかというのは、日本の危機をごまかす策略なのか?と疑いたくなる。
気分として、反日の韓国を懲らしめてやりたい、というのはあるのだろうが、事実にもとづかないばかりか、日本の状況を隠そうとする方がよほど反日なのである。
国際政治学者の藤井厳喜氏は、50年間にわたる「円高の時代の終焉」と主張している。
これは、文明論的な視点からだし、ときどき間違えるアメリカの世界戦略の方向転換が背景にあることの結論なのだ。
また、経済学者の野口悠紀雄教授は、9年前のユーチューブ番組で、120円/ドルがひとつの目安と解説している。
この水準を突破した円安になると、日本経済は危険水域に突入すると指摘した。
もちろん、ネット上では「嘘をつけ」という非難囂々もあったけど、教授の丁寧な説明が理解できないひとたちの感情論であるし、また、意図的な誹謗中傷でもあったろう。
このときから、8年が過ぎた、いまから8ヶ月前、やはり教授は「おなじ説明」を、『ABEMAニュース』で発言している。
しかも、「経済学の基本が崩壊している」という指摘は、「業界」に対する勇気ある発言として注目したい。
いま、「名誉教活」たちが「現役」に渇を入れているけど、役人が仕切る、研究費削減がなにより恐ろしいので、見て見ぬ振りをしているのである。
それもあって、政治学と経済学という、ちがった目線からの「分析」が、おなじ「頂点」を示しているのである。
ちなみにわたしは、「政治学」を学問として「わからないもの」として認識している。
社会科学といえるのか?が怪しいからである。
なので、「人文科学」として、もっといえば「哲学」の分野に位置づけた方がよほどすっきりする。
これは、リベラルアーツの観点からのはなしだ。
さて、野口悠紀雄教授は、いわずと知れた「元大蔵官僚」である。
しかしながら、東京大学工学部応用物理学科卒にして修士課程途中で、大蔵省に入ったひとだ。
この点で、いまや「論客」として有名になった、高橋洋一教授(東京大学理学部数学科卒・経済学科卒)と似ている。
要は、本来が「理系」なのだ。
一方で、大蔵省の「王道」は、法学部出身者(文系)だと何度も書いてきた。
今をときめく「財務官」の、神田眞人氏は、法学部から入省して英国オックスフォード大に官費留学し、「経済学修士」となった経歴だ。
日銀の黒田総裁も、「財務官」だった。
けれども、黒田氏は、もっぱら「法律」の専門家で、国際金融と主税畑だったのは「人事」によるところ大ではないかとおもわれる。
もちろん、官僚と学者はちがう。
企業でも、企業内官僚と学者はちがうものだけど、民間であろうが官僚は、実務と学問的知識の「バランス」が求められるのだ。
すなわち、学問的知識が基礎にあって「実務」を構築する。
ただし、官僚にはかならず「上役」としての、政治家や経営者がいるので、このひとたちの「意向」が、先に「結論」となるのである。
なので「優秀な官僚」とは、このひとたちの「扱い方」に長けたひとをいう。
官僚の発案をいかに「通すか?」という目先の問題に長ければ、「優秀」なのである。
だから究極的に、「中身」は関係ない。
一方で、学者は業界内での作法である、「論文」を生産しないといけなくて、さらにこの生産物が、他の業界人から「多数回」引用されることがないと生きていけない。
この「引用回数」という指標をつかっているのが、ノーベル賞に至る道なのである。
だから、論文は「英語」で書かないといけない。
鈴木梅太郎が、世界で最初に「ビタミン」を発見した、という「伝説」は、日本語の論文を根拠にしている。
しかしながら、白人社会はこれを認めず、ポーランド人をビタミン発見者として「歴史」にしている。
何語であろうが「中身」が問われる、という世界ではないことが、学者業界の落とし穴なのだ。
そんなわけで、金融業界という俗人社会は、もっとも単純に「儲かることしかしない」という原則に貫かれていて、そこに「あるべき論」は存在しない。
それがどんなに「汚くても」だ。
この意味には、ハイエナやハゲタカのように、スカベンジャーとしての「掃除役」もしている、がある。
その「スカベンジャー:Scavenger」の原義とは、「税関長」なのである。
なるほど、いまや大蔵省から名を変えた財務省とは、日本経済を屍肉にして、ハイエナたちに与える役目を負っているのである。
それはまた、日本国民の生活破壊、という意味である。
円が信用崩壊を起こしている可能性が高いのは、野口教授がいうところの「円安=麻薬」を、大量の赤字国債で賄ってきた構造にある。
麻薬中毒者に無料で麻薬を与えて、犯罪を犯させないのは、スイスがやった手法であった。
そして、市民に迷惑をかけずに死んでくれ、と。
いま、これを日本経済が世界からやられているのである。