安くしないと売れない

日本がいまだに「先進国」といえるのか?といえば、2008年通常国会における大田弘子経済財政政策担当大臣の「経済演説」で、「もはや日本は『経済は一流』と呼ばれるような状況ではなくなってしまった」と認めたのは、歴史の転換点であった。

それでも、いまだ、先進国クラブである「OECD」のメンバーには一応とどまっているのだとかんがえた方がいい。
つまり、建前上は先進国だが、実態は「ふつうの国」になって、もう10年以上が経過しているということを、ちゃんとしっていた方がいいという意味だ。

それに、デフレ脱却をするために白川総裁を事実上更迭して、あたらしく日銀総裁になった黒田氏は、「2%のインフレ目標」を異次元政策で達成するといい放ったが、とうとうさいきん、あきらめたようである。
ならば、みずから辞任するのかと思いきや、ほかにやるべき手段をわかるひとがいないからではなく、だれも引き受けないから続行するしかないのだろう。

なんだか、颯爽と現れた天下の財務省「財務官」が、いまは焦燥して目の下のクマがめだつようになったようにみえる。
それは、インフレ目標が達成されれば、金利が上昇してたっぷり買い込んだ国債価格が暴落してしまうし、すでに日本株の5%ほどを保有するのが日銀だから、それをきっかけにした信用不安から株価暴落ともなれば、なんと前代未聞の「日銀が倒産」の危機をむかえる構造になっている。

だから、金解禁に邁進して昭和恐慌をひきおこした汚名をいまだに払拭できない井上準之助のように、末代までの恥辱をかぶる総裁にだれもなりたくないだろう。

日本経済は、「日銀天狗」という大天狗さまが一本歯の超高下駄をはかしてくれているが、その下駄の歯が折れたら大崩壊がやってくるようなおそるべき脆弱性があるのである。

日本銀行の資産は、昨年でわが国のGDPをこえてしまっているのだ。
じっさいに、日銀はじぶんで決めた方策で、インフレ目標を「達成してはいけない」状況をつくってしまった。

まさに、「八方ふさがり」なのだ。
これにくわえて、さいしょから現在まで一貫して「出口戦略」がまったくない。

真珠湾攻撃と構図がおなじなのである。
はじめたものの、終わり方をかんがえないのは、歴史に学ぶ謙虚な姿勢がないからだ。

黒田氏は3月4日の参議院予算委員会の答弁で、金融仲介機能の低下や金融システムの不安定化に関して、先行きの動向に十分注意していくと述べている。
精いっぱいの「他人ごと」にしてみせたものの、背中には大量の冷や汗がながれていただろうと推察するが、同情はできない。

金融仲介機能の低下、とは、おカネがまわらないという意味である。
つまり、経済の血液といわれるおカネがまわらないとは、たんに血行不良というものではなく、深刻な「貧血」になっているから、突然卒倒してもおかしくない。

それを、民間に「資金需要がない」と民間のせいにしてうそぶくが、そんなことはない。
内部留保を溜めこむのは、将来があぶないと予想しているからで、その元凶は政府の経済政策そのものからのリスクであるのに、しらないふりをするたちの悪さだ。

税引後利益が内部留保にまわるのに、内部留保はけしからんから課税せよ、とは、むちゃくちゃな二重課税のはなしだと気がつかない国会議員は、次期選挙でちゃんと落選してもらわないといけない。
マスコミは、こうした人物のリストをつくって報道する義務がある。

需要があっても借りられない。
不動産担保を要求しながら、静岡県の銀行不祥事で、全国に不動産「事業用」に貸し出すなというマッチポンプをやったから、おカネの行き場所が「個人用住宅」だけになってしまった。
人口が減少して、世帯数も減っている。

にもかかわらず、ついに、新築戸数が、世帯数をこえてしまった。
いったい誰が購入し、誰が住むのかしらないが、つくるだけつくる、という無責任が、将来の廃墟を建設している。
これは、すでに、「住宅を建てるだけ『バブル』」になっているということだ。

それではこまるから、移民を受け入れるはなしになって、日本の大学を卒業した留学生が国内企業に就職したなら、本国から家族も呼んで永久に日本に住める「告示」を改正するという。
「告示」をだすのは役人なので、国会議員も介入できない、と青山繁晴参院議員がネットニュースで暴露した。

金融機関は国内に投資先が「ない」から、資金を海外資産にかえていて、それが円安原因になっている。
生活者にとってみれば、原油や食料品など輸入物価が下落する「円高」がむしろ望ましいのにだ。

原発を稼働させたい希望から、もう稼働したものとして、輸出中心の経済なら望ましい円安を誘導するのは、3.11前からの「惰性」でしかない。

ほんらい、新規事業に挑戦したくても、金融庁のあらっぽい一括した管理で、それぞれの金融機関の機能に差がなくなった。
メガバンク、地銀、第二地銀、信用金庫、信用組合、どちらをみても特徴がなくて、顧客のビジネスをみきわめる能力もない。
これに、恣意的な政策投資銀行や機構が、さらなる余計なお世話をするという、政府のでしゃばりが経済を機能させない。

まさに、未来の人類のための痛い教訓になる「政府の失敗」の教科書のためにやっているとしかおもえない。
しかし、そんな教科書は、20世紀の終わりのソ連崩壊でだれでもしっていることだから、たんなる二番煎じにすぎない。

経済学は科学なのか?という批判があるなかで、もちろんマルクス経済学は文学かつ宗教学だったけれど、日本の政策に利用されている経済学も、データをつかわないという点において、いかがわしいものだ。
本来は、日銀や金融庁が主役なのではなくて、規制改革会議が主役にならなければならないのに、あいかわらず地味な脇役になっている。

そんなわけでわが国は、魅力に乏しいので、外国資本も流入しないから、海外からの直接投資(対内直接投資)が他国に比べて極端にすくない国になっている。
かつて、英国を復活させたサッチャー氏が、強力なリーダーシップで当時好調だった日本企業からの投資をあおいだのと対照的である。

これは、投資をしてもリターンがすくないと判断されているからだ。
このリスクは、ジャパン・プレミアムとなってはねかえる。
邦銀によるドル調達にかかわる金利に上乗せ分(プレミアム)がつくことをいう。

お金持ちの外国人が訪日してくれればいいが、そうはいかないとすると、「高級」を柱とするサービス業が疲弊する。
それが、「安くしないと売れない」になってしまうのだ。
これを「デフレ」と呼ぶのか?

「デフレ」とは、ものに対しての貨幣価値が高くなること=価格下落のことをいい、それは、個別の物価・価格「ではなく」、全体を総合した物価・価格の下落を指す。
高級旅館が安くなったのと、石油価格や電気代や水道代が値上がりするのを「総合して」どうか?だということに注意しないといけない。

だから、あの旅館が安くなったのは、デフレだ、といういい方はちがう。

あえていえば、外国人であろうが日本人であろうが、日本に投資すれば儲かる、という、そういう「政策」がもとめられている。

そんなわけで、日銀の黒田総裁だけではなく、彼に命じたひとがいる。

あしたは、それを書いておこうとおもう。

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