憲法53条による臨時国会の召集

衆議院議長に野党4党(立憲民主、国民民主、共産、社民)の代表たちが、臨時国会の招集を求めることを文書で伝達し、議長は与党の国対委員長を呼んで、「コロナ禍での国会のあるべき姿を与党もよく考えてほしい」と要請したと報道された。

日本国憲法第53条の条文は、以下のとおり。
「内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない」
主語が、「内閣」であることに注意。

現在の衆議院HPによると、令和2年6月17日現在、総数465名、うち会派名「立憲民主・国民・社保・無所属フォーラム」だけで119名だから26%になって、「四分の一以上の要求がある」ことになる。共産党を加えると、28%だ。

また、報道によると、「ただ、開会時期に定めはなく、実際に開くかどうかは事実上、内閣の意向による。安倍内閣は早期召集に否定的だ」とある。

これはいったいどういうことか?

まず、どうして野党代表者たちは、衆議院議長を訪問したのか?
行くべき先は、官邸ではないのか?
本来なら総理大臣に直接訴えるところだが、すくなくても、内閣官房長官に要求すべき事項であって、「国会対策委員会」で話す内容ではない。

つぎは、報道側が書いている、「実際に開くかどうかは事実上、内閣の意向による」という一文である。
憲法の条文のどこに、こんな「解釈」ができる文字があるのか?

むしろ、「四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない」とは、「できるだけ速やかに」と読むのがふつうであろう。
「開くかどうか」ではなくて、数の要件を満たせば「開会を決定しなければならない」と「憲法」に書いてあるのである。

もちろん、野党の要求なのだから、与党とその内閣としては「やりたくない」というのはわかる。
しかし、だからこそ、憲法で「嫌でもやれ」と規定しているのではないのか?

しかも、野党議員といえども、選挙で選ばれている国会議員、すなわち国民の代表なのである。
それが、ちゃんと数の制約も満たしているのだ。

だから、臨時国会は(できるだけ速やかに)開会しなければならない。

開会後、どんな内容の議論が行われるのか?は関係ないのである。
たしかに、与党側が懸念しているように、野党がなにを目的にして開会を求めているのか?という疑問はある。
しかし、それは開会しないという理由にはならない。

憲法は、議論の内容を定めてはおらず、開会の条件を「四分の一以上」としているだけだからだ。
だから、数が満たされれば、しのごといわずに開会すればいいのだ。

そして、国民は固唾を呑んで天下国家の論戦に聞き入る、という順番になるのである。

つまり、憲法は議論の具体的内容を想定はしていないが、国民を代表する議員が国会の「四分の一以上」で要求することの意味として、国民が固唾を呑んで天下国家の論戦に聞き入るような内容の議論が用意されていることを想定しているのである。

すなわち、不毛の議論をするはずがない、ということだ。
近代民主主義国家の憲法とは、主権者たる国民からの命令書、なのだからこうなる。

それで、野党側は、どうやら「コロナ禍」や「大雨災害」を議論したいらしい。
まことに、タイムリーではないか?

巷には9月解散・総選挙のうわさまであるけれど、このタイミングで仕掛ける野党代表は、政権交代を狙うと公言しているのだから、緊張感がある議論になるにちがいない。
果たしてそれで、万が一「不毛の議論」を野党がやたっら、おおコケ、では済まされない。

どんな周到な準備があって、どんな論法で内閣を追いつめるのか?
はたまた、どんな代案をもって、国民がおもわず膝を叩くような妙案を披露するのか?
まったく、楽しみである。

それでこそ、政権交代の一撃となる。
だから、内閣・与党は、真っ向勝負しなければならないのである。
これぞ、憲法が望む国会のあるべき姿にほかならない。

しかして、嫌な予感がするのは、双方ともに、お粗末極まりないグズグズの論戦だ。
あれ?これは「いつものこと」だった。

それよりも、なによりも、米中間におけるわが国の立ち位置をはっきりさせることが必要だ。
世界大手のわが国自動車メーカーや、台湾資本になったとてわが国を代表する電機メーカーが、この期に及んで大陸に新工場をつくると表明している。

まさか、アメリカから名指しされた首相補佐官の出身母体・経産省が、あちらの国へ投資せよと命じているんじゃあるまいな?
それに、前回のアメリカ合衆国大統領選挙では、事前にヒラリー勝利を確信して、完全に読みを間違えた外務省は、今回も大丈夫なのか?

トランプ、バイデン、どちらが勝とうがわが国外交はちゃんと対応します、なんて寝言をいいだしかねない。

そんなわけで、野党のみなさんには、頑張ってほしい。

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