先月、8月13日に実施された、アルゼンチンの予備選挙で、第3勢力と見なされていた、例によって「極右」の、ハビエル・ミレイ氏が大躍進してトップに躍り出たので話題になっている。
アルゼンチンの選挙では、大統領選挙だけでなく、予備選挙が行われて、「足切り」をやっている。
これは、わが国の世界一バカ高い「供託金制度」よりはマシだろう。
現政権と左派勢力が結託して、ミレイ氏に対抗すると予想されるが、はたしてどうなのか?
ミレイ氏は、熱烈なトランプ支持者だという。
そのために、超大胆な公約を掲げている。
なによりも、自国通貨の放棄で、アメリカ・ドルを唯一の法定通貨にするのも、中央銀行の廃止を訴えているからである。
これは意表を衝く案だ。
ただし、そこまでアルゼンチン経済はズダズダなのだろう。
すると、こないだのBRICs首脳会議で決まった、来年からのBRICs加盟はどうなるのか?
ドル離れを進めるBRICsとは反対方向になるからで、ミレイ氏は「加盟しない」旨を発言している。
そうはいっても、大胆な公約には、石油公団の民営化ばかりか、中央政府の多くの省庁の廃止も訴えている。
ようは、国民の役に立っていない、と。
これが、国民の拍手喝采を得ているのである。
マフィア化した政府をぶっ壊す!といった感じだろう。
なんだか、アルゼンチンだから、どれほどのマフィア化なのかを想像すると、そら恐ろしくなるけれど、わが国のしれっとしている分スマートなマフィア化の方は、より有効度という意味で恐ろしい。
やっぱりアルゼンチンだから、荒っぽいにちがいない。
これに、国軍の利権がからむ。
さらにいえば、アメリカへの不法移民の供給源でもあって、移民ビジネスが跋扈しているし、当然ながら「お薬」とか、「児童人身売買」もセットにあるだろう。
供給源を断つ、という意味で、どんな連携をトランプ氏ととるのだろうか?
それに、石油に関しては、プーチン氏がやった国益確保という意味の石油政策を、ミレイ氏は参考にするのか?
いまや、BRICsが世界の石油の8割をもつに至っているので、完全加盟ではなくとも、この点では無視できない。
単なる民営化では、アメリカの石油資本にすきにされてしまう。
ただ、ドルを法定通貨にするための条件にされるかもしれないから、しのぎを削る攻防戦となろう。
さてそれで、「金価格」に異常がみられるようになってきている。
歴史的に、ロンドンやニューヨーク市場での金価格形成に、かならず「金利」がまとわりついていたのに、ここ最近、金の独歩高となっているのだ。
金には金利がつかないので、金利が高くなると金価格は低下し、金利が安くなると上昇するということが繰り返されてきたのである。
しかし、いま、金利の動きから金の価格は切り離されて、ずっと「買い」の状態が続いている。
これは、BRICs諸国を中心に、金が買われているからである。
それに、BRICs諸国のGDP合計は、すでにG7を抜き去ったから、その影響度が過去とはちがう。
アメリカ民主党の世界規模での破壊的政策が功を奏してはいるけれど、まさかのBRICsに力を与えることになって、やっと気づいて「まずい」となっている無様がある。
もはや、アメリカは、とうてい一国だけで、世界を牛耳ることができなくなったのである。
この地殻変動ともいえる、力のひずみが、アルゼンチンに噴出しているのである。
ヨーロッパも、EUあるいはNATOが、ほころびだすのは、ウクライナ戦争と気候変動対策という名の、富の無駄遣いに、国民が納得しないからである。
また、アフリカでは「反フランス」の結束ができて、マクロン政権は軍事行動を検討するに至っている。
フランスが通貨発行権をもつ、CFAフランこそ、植民地の証なのである。
数百年単位で時計をみたら、ヨーロッパと(北)アメリカの時代が終わろうとしている。
ロシアは、ユーラシアのヨーロッパから、ユーラシアのアジアへのシフトを鮮明な国家戦略として発表しており、かえってヨーロッパでも親ロの国々に不安をもたらしている。
これら親ロの国々とは、南ルートで天然ガス供給を受けている国をさす。
わが国にとっては、極東ロシアや北極海航路がキーワードになる当然がある。
このようななかで、アルゼンチンはどこへいくのか?
あんがいと他人事ではないのである。
10月22日が本選。