およそ経営者ならだれでもがなんとかしようとかんがえるのが,「経営の効率化」なのだが,なかなかおもうようにいかない,ということがおおいだろう.
ことばで,「効率化」とはいうけれど,なにをもって効率化の「評価」をするのか?をすっかりわすれてしまっていることがある.
こたえをさきにいえば,「総資本回転率」の変化をみればよい.
これは,「売上高÷総資本(=総資産)」で計算できる.
ようは,手持ちの資本すべて(=資産すべて)を一年間でつかって,いくらの売上金(=収益)を得たのか?を「倍数」で知ることができる,という意味である.
ホテルや旅館などの宿泊業は,とくに「高級」を標榜するするほどに,この数値は小さくて,場合によっては「小数点以下」のこともあるという傾向がある.
つまり,計算結果が,たとえば,「0.98」とかになることである.この意味は,一年間の売上高よりも総資本のほうが大きい,ということだから,自社がもっているものを使い切らなかった,ということでもあるし,自社がもっているものをもてあました,ということでもあって,じつに「効率が悪い」ということだ.
しかし,現実には,昨年が,「0.98」であっても,ことし,「0.99」になったなら,それはそれで「よい評価ができる」というものだ.
だから,「小数点以下」だからといっても,あきらめることはない.
ところで,このブログでも何回か書いたが,「損益計算書の誤謬(勘違い)」にはまってしまっている経営者はあんがいおおいから,「総資本回転率」をあげるために,まっさきに「売上高」をふやそうとして,従来の売上増のやりかたを「強化」しようとこころみることがある.
おそらく,その結果が,「低い倍率」であらわれているはずだから,この方法は,もっと数字を悪化させる可能性があることに気づくべきだ.
まず,第一に,分母に注目すれば,それは「総資本」なのであるから,貸借対照表には,調達方法が書いてある.そこで,自社の資本の調達方法について検討しなければならない.
第二に,さまざまな方法で調達された資本が,どんな形態で社内に存在しているか?をしめすのが「総資産」だから、こちらにおかしなものはないか?を検討しなければならない.
第三に,「財務諸表」には記載のない重要な資産である,「社員」について検討しなければならない.
社員(就業形態は問わない)を,どのように調達しているのか?
その社員を,どのような部署に配置し,どのような業務をおこなっているのか?
この,「どのような業務」のなかに,販売活動もあるはずだし,ムダな業務があるかもしれない.
「ムダな業務」とはどんな業務をいうのか?も決めなければならない.
つまり,経営者が自社の「効率化」をかんがえるとは,その基礎に,上述の内容がなければならない.
これをせずして,物理的強制的に退勤させ,残業を削減させたところで,本来やらなければならない業務もできなくなるから,かえって仕事が停滞することがあるのは,もうじゅうぶん経験済みだろう.
さて,人的資産の活動には,販売活動もあるのだから,こんどは,分子の「売上高」の検討になる.
世の中が,損益計算書の順番でない,ということに注意すれば,
「販売活動」(経費の使用)⇒「売上高」(使用した経費=資本の回収)
という,当然の順番であることに気づく.
だから,いかなる「販売活動」が,もっとも自社に最適なのか?という命題を解かねばならない.
「販売活動」には,「商品」も含めれるから,壮大なはなしである.
つまり,「新商品開発」までもが対象になるからだ.
「総資本回転率」は,たいへん重要な指標であるが,式が単純であるかわりに,式のなかの「項」がおおきなかたまりであるために,一種つかみどころがないようにみえてしまう.
これを「分解清掃」するのが,経営者たる「職人」のなせるわざなのだ.