習氏は天に逆らっているのか?

日本でもNHKが放送して大人気をえたのが、『宮廷女官 チャングムの誓い』(2004年10月7日から2005年10月27日)だった。
本国の放送から、約1年遅れで放送された、NHKとしては初の「韓流時代劇」であった。

このドラマの歴史的事実は、王朝の記録に残る「たった数文字」の、「王の身体はひとりの女医がしっている」である。
この記述の発見から、1年にわたる「大河ドラマ」をつくりだした、そのファンタジー創出力には感心するしかない。

また、その「時代考証」のめちゃくちゃも、研究者が目をむくファンタジーで、およそ日本が舞台では通用しないともいわれた。

わたしが子供だった時代には、さまざまなファンタジードラマが次々とできてきて、なにも『ウルトラマン』だけではなかった。
時代物なら、『河童の三平』とか、『仮面の忍者赤影』とかが忘れられない。

 

これら作品にも「時代背景」はあって、あんがいとちゃんとつじつまは合わせていたから、『チャングム』のハチャメチャは、やはり日本人にはやれといってもできないのかもしれない。

おなじハチャメチャでも、歌舞伎ともちがう。

「幕」と「場」の展開のなかでのドラマ作りは、たとえ七変化であろうともいきなり「近代」に化けることはない。
観客すら、劇中の時代における想定を共有しているからである。

まさに感覚の相違というか、歴史を創り出す能力というか、その民族性のちがいは計り知れない。

しかし、その朝鮮を実質的に治めていたのは、ずっと大陸の大国だったのである。
一応、『チャングム』では、相手国を「明」としている。
あの大国には、「国名がなかった」ので、王朝名をいう。

朝貢国の悲哀が所々にでてくるけれども、ドラマにあるような「まとも」な生活を一般人がしていたという「記録」はない。

さて、どんな汚い手をつかおうとも、一族の繁栄のために歴代がそうしてきたように、「王の台所」である、スラッカンの責任者たる位につくための悪だくみをして、「正義」のチャングムたちを無実の罪に追い込んだヒール役に、高齢のため引退が間近な現職が放った台詞が、

「そこまでしてお前は天に背くのか?」であった。

習氏が実質的に「終身皇帝」の座についた、この度の共産党大会では、党中央人事を決める最後の最後に、驚くべき「クーデター」が起きて、この瞬間を外国人記者たちが目撃したのだった。

それが、前総書記だった胡錦濤氏の「強制退場の場」だったのである。

このとき、舞台上のひとたちには、「一幕の終わり」での「幕間」での出来事にみえただろう。

なぜならば、外部への秘密大会が終わって、休憩を挟んで「公開」するための準備時間中であったのだ。
つまり、外で待っていた外国人記者たちが入場しているさなかの出来事だった。

しかし、習氏にとっては「本番中の本番」なのだった。

党中央委員から選出される、「常務委員」候補の名簿に、前日までは「李克強氏」ら胡錦濤派の名前があったという。
それが、最終局面で配布された紙に「なかった」のである。

それでもって、胡氏が異議を申し立てようとしたところ、「健康を気遣う」という名目で退場を促し、胡氏がこれを拒否すると、強制的に退去させたのであった。
なお、胡氏の発言は、マイクが切られており広い会場では聞こえなかった、という。

すなわち、会場の音声さんも「加担」した、習氏によるクーデターなのだ。

これが、「前代未聞」というのは、メンツを重んじる彼のひとたちだから、どんなに激しい権力闘争でも、大衆の面前ではさもなにもなかったこととするのが常識なのだ。
しかして、まさか外国人記者たちの目前でやるとは?ということだ。

ここから見えてくるのは、習氏側の焦りともとれる強引さだ。

すると、これからあからさまな権力闘争が起きる可能性が高いし、これを武力で制圧すると宣言したも同然だ。
胡氏からしたら、「そこまでしてお前は天に背くのか?」であろう。

しかしながら、しょせんは共産主義・全体主義者のなかでの話だし、そもそもが共産主義・全体主義を「天」が許すはずもないのだ。

われわれが注目すべきは、習氏の天下が長続きするのか?どうなのか?だ。

少なくとも、英国では、反グローバリズムの旗を掲げた新政権が、レタスより早く腐ってしまった。
習氏が微妙なのは、共産党というグローバリズムにあって、ナショナリストという立場だからである。

彼は、一見、バイデン氏と同じく、自国経済を崩壊に導いているようにみえるのだが、グローバル全体主義を世界にもたらしたいバイデンがやる「ぶっ壊し」とちがって、中国経済をグローバル全体主義にしてきた者たちの「排除」にあることだ。

それで、中国が貧しくなっても、元が共産主義・全体主義だからどうでもいいのである。

しかし、どうでもよくないのは、バイデンや民主党、EUからなにからの「富豪社会主義者たち」なのである。

中国国内だけでなく、強烈な闘いが習氏降ろしとなって炸裂するはずである。
その「流れ弾」が、台湾・尖閣・沖縄に飛んでくるのだろう。

わが国産業界は、自らすすんで「人質」になったけど、どうやって脱出するのか?
駐在している社員を見殺しにするのが、いまのエリート経営者だけど、果たして耐えられるものか?

アップルとダイキンは、もう脱出したけど。

おまけは、この「大会」の参加者たちの「口元」だった。
胡錦濤氏も含めた「ひな壇」のひとたちの口元にマスクは一切ないけれど、他の全員が「おなじデザインのマスク」を着用している。

なるほど、真の支配者は、マスクを必要としない「神世界」だと、全世界に披露したのだった。
わが国の「国会」で、マスクをしない議員に、マスクを強要する与党は、「平等」を最優先する、もっとも進化した共産主義を披露している。

おそらく、このことが、中国共産党に対するわが国与党の唯一の心の拠り所となる「優越感」なのだろう。

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