報道によると,ロシアの富豪が所有する全長119m,5959トン,乗組員50人のモーターヨットが,台風25号を避けるため,天橋立がある京都宮津に寄港した.家族は,内部にあるクルーザーに乗り換えて上陸し,丹後の海の幸を楽しんでいるという.
ありがたいことである.
外国の「超お金持ち」が,わが国を訪れることはめったにないから,こうしたニュースにもなる.
訪日客の「人数」ばかりを,なぜか「目標」にしている観光行政にかかわる役所の存在価値がいかにないかの示唆でもある.
日本の沿岸には,2866の漁港があるが,「漁港」なので,プレジャーボートの入港はできない,と思いがちだが,水産庁はこれを否定しているし,公益社団法人全国漁港漁場協会で「フィッシュアリーナ」という漁港をレクリエーションの場にしようという試みがおこなわれている.
しかし,以上のはなしは建前で,個別の漁港では,漁協が事実上の管理をしていて,つまり,裏を返せば役所が管理を漁協に丸投げしていて,おいそれと利用できないのが実態のようである.
事前に申し込めば,根拠不明な利用料が請求され,入港時に「現金での支払い」をその場で要求されて,領収書もくれない,などということがあるそうだ.
税金でつくったコンクリートのかたまりである堤防をふくめた漁港は,いったい誰のものであるのか?をかんがえると,占有者が所有者になる,という鎌倉時代の習慣がそのまま残っている.
また,高圧的態度で接するから,楽しいはずの入港がだいなしになるとも聞く.
一方,漁協の言い分にも一理あって,ボートオーナーの我が物顔での横柄な態度や,業務に差し障る場所への勝手な立ち入りなどがあるというから,ある意味どっちもどっちであるが,ボートオーナーの全員が対象者にはなるまい.
それで,これを「分離」するための,「フィッシュアリーナ」ということなのだろうが,これも例によって例の如く,建設予算がつくから,「事前の利用ルール確立」による,紳士的でおだやかな利用をいたしましょう,というお金をかけない「おとな」の発想がない.
さすがは「子どもの国 ニッポン」である.
だから,特定の漁港しか利用できないように仕向けているのは,役所の方になる.
水産庁のHPは,自己矛盾も甚だしい.
こういうのを「マッチポンプ」というのだ.
入国のための交通手段で,主たるモノが航空機になってひさしいが,そのなかでも贅沢なのは「プライベートジェット」といわれる,小型のジェット旅客機だ.
ホンダジェットが,販売開始してすぐに100機の注文があったというのは有名なニュースなったが,どんなひとが注文したのかの突っ込みがない.
一機3億円以上する「自家用機」だから,陸を走る超高級車が10台以上買えるお値段である.
しかし,自動車のガレージは自宅にも持てるが,飛行機の格納庫を自宅に用意できるひとは,すくなくても日本ではいないだろう.飛行機だから,動かすには飛行場が必要だ.
だから,結局どこかの飛行場に用意しないといけない.
すると,駐車場ならぬ駐機のための費用もばかにならず,運転免許ならぬ操縦免許だって,取得するには大変な訓練を受けなければならないし,そもそも,オーナーはプライベートジェットの客室に乗ることを想定するから,運転士ならぬ操縦士を雇わなければならない.
ビックリするほどの維持費がかかるのが,プライベートジェットだから,高級車のオーナーがちいさく見えるのも納得できる.
外国人の成功したビジネスマンは,「見せびらかしの消費」のために,こぞってプライベートジェットを購入するという.
ところが,スピードでは亜音速の最新大型ジェット旅客機にぜんぜんかなわないから,太平洋を横断して日本に来るには,それ相応の割増時間をかけてやってくる.
それでも,たとえファーストクラスをつかっても,一般人扱いされる入国審査とはちがって,プライベートジェットには国賓向けの特別室の利用もできるから,この「特別感」がたまらないのだという.用意した自動車が玄関に待機しているから,人目につかずにすばらしく快適な入国,および出国ができるというのは,たしかに特権である.
ところが,羽田や成田の駐機場がいっぱいで,なおかつ駐機料がこれまた「日本特別価格」で高いから,さすがのオーナーもひるむそうだ.
そこで,東京に用事があるオーナーが降りると,機体は「富士山静岡空港」にむかうという流れができた.
この飛行場も県知事の鳴り物入りでつくられたものだが,定期便がほとんどこないので,格納庫に空きがあったのだ.
いまでは,プライベートジェット用の格納庫があるというから,収入という「カネ」は重い腰のはずの行政だってかんたんにうごかすのだ.
あるとき,オーナーが機長に,どこに「駐車」しにいくんだ?と質問して,「SIZUOKA」とこたえたら.「Where is(Izu) SIZUOKA?」となって,地図をみた.
地元にくわしくなった機長が,「ONSEN」があると言ったから,たちまちオーナーがくらいついた.
伊豆半島の修善寺には,むかし修善寺町営の有名な「菖蒲園」があったが,菖蒲が咲く季節だけでは勝負にならないと,第三セクターという破滅的な組織で「修善寺虹の郷」というテーマが不明のテーマパークをつくった.
先に「修善寺町」が合併で行政地域として消滅したが,ふつうの「町名」になって残った.
パークの方はいじらしく,いまも営業している.
それで,第二駐車場をヘリポートにして,静岡空港からの連絡便を飛ばしたのは正解だった.
こうして,修善寺の高級温泉旅館は,プライベートジェットのオーナーが常連客になったので,一般客をとらなくなった.
超お金持ちの「一組」に全力をかけて接遇すれば,一晩で十組以上の売上よりも得るものがおおきいからだ.
正しく,楽して儲ける,とはこれをいう.
これが,生産性革命になる,ということを政府は絶対にみとめない.
たくさんの数を,いかに「効率的」にさばくかが「生産性向上」だと,高度成長期の製造業(大量生産大量消費)しか頭にない.
その製造業はとっくに,多品種少量生産に移行したのをしらないのか?
半世紀前の製造業の成功を,サービス業でやらせようと躍起になっている姿は,じつにお気軽で,しかも邪魔である.
その政府の介入を受け入れようと努力する「業界」も,どうかしているとおもうがいかに?