国体のおもてなし

外国人観光客の数がずいぶんのびたから,政府が設定した目標は達成できるかもしれない.
もっとも,その目標値が,どういう根拠だったのかは知らないけれど.

関係者は,半世紀前の成功をもう一度,と「東京オリンピック命」になっている.
分母の数がちがいすぎる状況なので,今度のオリンピックで,「ものすごく外国人が増えた」ということは,あまり感じないかもしれない.
それでも,ホテルや民泊の供給はふえている.

「オリンピック」にばかり目がいくが,ドメスティックなレベルで「国体」というイベントが毎年ある.47都道府県の持ち回りで順繰りするから,約半世紀に一回,順番がまわってくるしくみだ.「国体護持」の「国体」ではなく,「国民体育大会」というイベントの略語である.
簡単にいえば「大運動会」なのだが,内容が「オリンピック競技」に準じるようになっているから,「国内競技大会」である.「国民運動会」としたら,なにやら政治的な集会のよう,それで「体育大会」としたのだろうか?
地元は,半世紀に一回の「理由」がやってくるから,公共事業ができる,という面もあるようだ.これも,オリンピックに準じているのだろう.
今年は福井県が会場だ.それで,福井の街には,さまざまな槌音がひびいている.

あと二年になった東京オリンピックでは,例によって,世間がわからない政府は,飛行場などにロボットをおいて,世界最先端の国ニッポン,をアピールしたいらしいが,すでにおおくの観光客から,「意外なニッポン」として不便さを指摘されているのが,決済,である.

「いまどき『現金の円』しかつかえない不便な国」

日本は,世界の尖端をいきすぎて,スイカなどの交通系では,処理能力が高すぎるために,外国人がもっているスマホ端末の世界標準にはあわない.

だから,しょうがないじゃいないか.

ならば,せめてもっとクレジットカードがつかえないモノか.
キャッシュレスのはずが,ガラパゴスだったりするのは,やはり交通系しかつかえない「コインロッカー」である.
これが「最新式」なのだ.

JRという会社は,ドメスティックである.
それでいて,駅舎の建設では,あいかわらずポスト・モダンという日本建築学会の言いなりである.
「発注者」としての矜持はないのか?

福井駅の駅前には,恐竜の模型がいくつもあって,それが首を振って唸り声をあげる.
日本一,恐竜の化石をだしているのが福井県だから,福井は恐竜,になったのだろうが,どうしてこうなったのかが不思議である.
あらためて,専門家に「恐竜はほんとうに唸り声をあげていたのか?」と聞いてみたくはなった.

幕末の大秀才,橋本左内を生んだ土地として,恥ずかしくないのか?などと,他県の人間でもおもうから,きっと福井のひとでも駅に行くたびに憂鬱になるひとはいるだろう.

そのJR福井駅は,自動改札ではない.しかし,あたらしい駅舎構内の店舗では交通系の電子決済ができるようになっている.けだし,「交通系」だから,これも国際標準ではない.
改札は,「福井国体にあわせて」自動化される予定と掲示があった.周辺の駅もみな自動化しないと意味がないから,改札の自動化はたいへんな投資になる.

どうして国体開催と自動改札化が一緒になるのか,そのへんの理屈はわからないが,他県の選手をむかえいれる「おもてなし」だという.その理屈で,路面電車の線路も交換されていて,かわりに工事中のいまはバスがはしっている.ついでに,電停の駅名が,「市役所前」から「福井城址大名町」に変更されるらしいが,それも他県からの観光客への「おもてなし」だそうだ.

ああ,なるほど,自動改札化もあくまでも「国内」基準なのだ.
他県の人間がいちいちたてつくわけでもないが,「市役所前」のどこが不都合なのかがわからない.
「市役所前」電停からもっとも近い「市役所」からさらに歩くと,「福井城址」がみえてくる.かつての福井城はいま「県庁」というお城になっている.
立派なお堀に石垣がある.
けれども,白いコンクリートの無粋な県庁が鎮座しているさまは,まさに明治新政府による徳川親藩,それも幕末の名君松平春嶽への当てつけ以外のなにものでもない.
こんな県庁を撤去・移転するくらいの福井県人の根性がほしいものだが,なんとも不思議な発想をなさるものだと感心した.

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