国家による天気の独占

9月になったら、なんだかすごい台風がやって来ている。
番号でいえば10号、名前でいえばハイシェンのことである。

ずいぶん前にテレビの気象情報で「天気図」を観なくなったと書いた。
わが国は、気象庁という役所が天気を仕切っている。
「気象予報士」という「士業」は、この役所の「岡っ引き」である。

岡っ引きだから、正規職員の下に位置する。
気象庁の正規職員には、「技官」と「事務官」がいるのは、わが国の役所だからどこでも同じだ。
たとえば、厚生労働省なら、医師免許を持っている「技官」と、一般職公務員試験の「上級、中級、初級」に受かった事務官、という構造と同じである。

それでもって、役人になって出世するのは上級職の事務官ということになっている。
これを一般に「官僚」とか「キャリア」呼んでいて、初級なら「官吏(かんり)」という。
地方公務員なら「吏員(りいん)」という言いかたもあった。

技術職の専門家を、「技官」とするから、気象庁なら「予報官」とは「技官」のことをいう。
予報官は予報をすることが仕事だから、他のことはしないし、しては「いけない」ことになっている。

してはいけないことを決めるのは、事務官だ。
庁内事務を取り仕切るのが、キャリアの事務官である。
なので、予報官が予報に使う「生データ」とか、予報の詳細とかのうち、国民に発表する内容を決めるのも、「事務官」である。

役所では、ひとりの事務官がずっと同じ席にいるのではなく、だいたい二年ばかしで異動する。それでもって、「キャリアを積む」から、「キャリア」という。

だから、役所に40年も勤めると、20人ほどの「キャリア」が異動でやってきてはいなくなる。
やることが決まっている欧米的な行政機関なら、ほとんどやることがない「席」であれば削減される。

けれども、お役人の数に応じて「席をつくる」のがわが国の役所なので、やることがなくても「席」はある。
人間とは不思議なもので、二年の辛抱がなかなかできない。
それで、なにかと仕事を作って、なんだか「システマティック」にしてしまうのだ。

それは、「キャリア」がふつうに優秀だからで、自分が在籍した証を残したくなる。
そんなわけで、国民に役に立とうが立つまいが関係なく、役人の中の価値観だけで、業務が変化するのである。

たとえば、警察のキャリア事務官がいいだしたらしい、自動車ヘッドライトをハイビームにするような「指導」がある。
道路交通法のいつの時代の条文かしらないが、「法にある」という理由から、これをやったら、勘違いしたドライバーが何が何でもハイビームにして危険なほどにまぶしかったりすることになった。

すると、これをやめてもとにもどす指導をするのではなくて、自動車メーカーに自動点灯して自動調整できるヘッドライトを義務化させようというのだから、どうかしている。
高いコストを払わされる国民へのイジメになった。

そんなわけで、気象庁も、気象予報士という岡っ引きが発表できる範囲を決めたから、どのチャンネルの気象予報士を観ても、同じことしかいわないくなった。
国民にはこの程度の情報で十分だと、キャリア事務官が決めている。

それで、各局とも気象予報士は、若くて清楚な女性ばかりになったのだ。

ところが、天気情報の大元である観測網のデータを独占しているのも気象庁だから、気象予報士が得た情報とおなじものしか発表もしない。
まさに、気象庁が「大本営化」しているのである。

これは現代の異常ではなくて、わが国の役人の行動原理が戦前と変わっていないからである。

ならば世界はどうなっているのか?
ヨーロッパには中期予報センター(「ECMWF」)という機関があって、世界一の数値予報精度を誇っている。
ちゃんと台風10号だって予報しているのである。

そんな遠くのひとたちが出す予報なんて、という方には、ハワイのアメリカ太平洋艦隊が発表している天気予報は、かなり充実している。
「軍」の運用にかかわるからだけれども、米軍はぜんぜん「機密」にしておらず、データもなにも一般公開しているのである。

理由が不明であっても「隠す」のが日本の役所である。
こうすれば、なんだか自分たちがコントロールしている気になるからだろう。
それが、相手が天気でもだ。

気象現象をコントロールできるとかんがえることの倒錯は、国民の税金で賄われている、という感覚の欠如がさせるとしかいいようがない。
要するに、天気までもが、民主主義かそうでないかの指標になるのだ。

なるほど、だから「命を守るためにはやめの避難」といって、責任回避をするのだ。

隣の大国の体制を嗤えない、じゅうぶんに恥ずかしい話である。
誰であっても、あたらしい総理大臣に期待できない理由がこれなのだ。
与党と役人がつくってきたシステムだからである。

気象庁も解体して民営化した方がいい。

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