生類憐みの令を笑えない

ばかな独裁者がばかな法律で国民を苦しめたとして,世界的に有名なのは五代将軍綱吉による「生類憐みの令」だ.
これを習うと,だれでもが愚か者「綱吉」の名前を覚え,独裁政治の怖さをしる.
そして,人間より「犬」や「蚊」までが大事にされた本末転倒の倒錯を笑うのだ.

しかし,バランスが崩れたひとには画期的な法律にみえて,動物愛護も極端にはしると「生類憐みの令」になりかねない.
それが「鯨類」保護の国際問題にもなるし,犬や猫の殺処分ゼロ運動にもなる.
そして、「保護」という概念が拡大に転じて,「地球環境『保護』」も極端にはしると,あたらしい生類憐みの令にもなる可能性がある.

ひとつひとつに異論があるわけではない.
ここでいいたいのは,バランスが崩れたひとたちが極端にはしることの恐怖である.
たとえば,犬や猫の殺処分ゼロをいえば,その数字の拾いかたではなしがおおきく変わる問題がある.

従来は,都道府県などの各自治体が,むかしは保健所,いまは動物愛護センターという施設で,大量の殺処分をおこなっていた.
とくに,街のペットショップで売れ残った「在庫」としての子犬や子ネコが,だんだん育って「子」でなくなってしまうと,こうした施設に運ばれて処分されていたことがある.

こうした「業者」の「業務用在庫」の持ち込みを,施設が受け入れ拒否できるように法律が改正されたら,より深刻な事態になっていまにいたっている.
つまり,ペット生体の「流通システム」という視点を考慮しての「法改正」ではなく,事象だけをみての改正だったから,急に処分場の入口が閉鎖された「だけ」という事態になった.

施設側は,もう「業務用在庫」の処分をしなくてよいから,正規の「殺処分数報告」では「激減」が記録されるのは当然である.それで,とにかく「ゼロ」ならよいのだ,になった.
しかし,物理的に業務用在庫が「減った」事実はないので,引き受け業というあたらしい業種が生まれて,対象となる生体自身の運命から「悲惨」がなくなることはないどころか,一生粗悪な環境に放置される「生き地獄」が出現した.

スーツを着た国会議員たちの「議員立法」だったというが,残念を通り越したお粗末である.
だから役人が起草すればいいと,いいたいのではない.
この国の国会議員は,立法府という権威をいいことに,ほとんどの法律は役人が起草することになってしまって,議員が起草するという本分を忘れたことを嘆くのである.
だから,この法改正を起草した議員たちには,はやく次の法改正での改善を強く期待したい.

先日は,これと反対の,役人による起草とおもわれるとんでもないニュースがあった.
「レジ袋の有料化」である.
環境保護が歪んでバランスが崩れたひとたちによる極端の極地だ.
この国を仕切る文系の高級官僚が,いよいよ「化学」という人類の知見を無視して,「独裁」にはしる例である.もはや「野蛮」の領域ではないか?

民間には残業を減らせと命令するが,もっともブラックなのは官庁の残業だろう.
高級官僚でも働き盛りは課長級であるのは,民間とかわらない.
男であろうが女であろうが,このクラスの官僚はまともに家に帰れない生活をしているからか,なぜか「レジ袋」だけが目の敵にされるのだ.
自分で買い物をしたことがないのだろう.

先月書いたが,野菜を買うとプラゴミがふえるのである.
レジ袋はすくなくても「ゴミ袋」というべつの使い途が用意されているが,野菜の包材はそのままゴミである.
つまり,日本で生活をしていればかならず疑問におもうのは,野菜の包材からでる山のようなプラゴミの方である.
だから,役人の,この生活臭のなさは異常である.

国民生活を苦しめる「政策」が,なぜか国民受けするのは,化学をわすれた「科学技術立国」の素顔になった.
まるで戦時中の標語が,ゾンビのように生き返って,「お国のためなら我慢する」が「環境のためなら我慢する」にすり替わっただけである.

江戸時代の将軍は,愚かさで歴史に名を残したが,ほんとうは将軍をささえる官僚機構が幕府にもあった.
しかし,封建制の専制政治ゆえ,歴史における愚かさの責任は,この将軍ひとりが背負うのだ.

すると,民主主義を標榜する現代にあって,化学を無視した国民生活を苦しめる法律が,将来どのように「愚か」であったかを,「犯人は誰?」に展開すれば,それは「日本国民である」という結論がかんたんに見出されることになる.

今さえよければそれでよい,とする刹那主義が,将来に責任があることをすっかり忘れているくせに,将来の地球環境のために「レジ袋を有料化」すれば問題が解決すると信じるのは「偽善」であり「詭弁」である.
流通業界に経費削減の儲けをつくって,税収をあげようとする姑息な手段にすぎないものを,「地球環境」などという大言壮語に惑わされるの愚でしかない.

あゝ,この国の凋落がとまらない.

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