電子決済が普及しないのは

韓国や中国の利用状況に大きく水をあけられた電子決済.
なぜかこの二国の名前がでてくると,躍起になるのはわるい癖である.
それで,また中央政府がしゃしゃり出て,あれこれ命令して電子決済の普及と利用率の向上を図るという.
ちなみに,現金主義をつらぬいているのは,ロシアと日本になっている.また,韓国はクレジットカードが圧倒的という特徴がある.

自由主義経済への移行に失敗したロシアと,自由主義経済のまね事をしている日本で,現金ばかりが使われているのは,なかなか興味深いテーマである.
その筋の専門家による深い分析を期待したい.

アフリカ諸国やインドでの普及は,一種の「ワープ」であるから,これに中国も加えてよいだろう.
アナログ時代に,発明や開発の投資をコツコツやってきた先進国と,デジタル時代の恩恵をいきなり受けた後発国が,一気にアナログ時代を飛び越えてしまったのだ.

しかしそうはいっても,日本以外の先進国も一斉に現金主義をやめて,なんらかの決済手段が日常になっているから,わが国の「遅れ」を周回遅れというひともいる.
これらのひとたちは,店舗側に負担を強いる「端末」設置と,利用「手数料」,入金までの「日数」が普及の足かせになっていると分析している.

けれども,一定以上の売上高があるなら,現金を取り扱うことに関する「手間」がもっと議論されてよいはずである.
「手間」がかかるだけでなく,盗難や事故の「危険」もある.
これらは,ぜんぶ「コスト」だから,どちらが得かの損得勘定をすれば,なるべく現金以外が望ましい,になるはずである.にもかかわらず,普及しないのは何故か?

ニーズがないから.
これがこたえではないのか?
なぜ,日本の消費者は現金決済を優先させて,それ以外を嫌がるのか?
それ以外,とは,クレジットカードとデビットカード,あるいは携帯電話や交通系,流通系電子マネーのことである.

じつは,日本人はこれら「カード」を持っている.
決済手段として持っているのに使わないで,現金を財布からだしている.
その現金は,ほとんどが銀行のCDから「キャッシュカード」をつかって引きだしている.
ならば,デビットカードを使えば手間がはぶけるのにつかわない.
ヨーロッパで普及しているデビットカードが,日本では普及しない.

これは、「信用創造」のしくみがちがうからではないか?とおもう.
そもそも,クレジットカードの概念がちがう.
おなじデザインのカードでも,日本とヨーロッパでは意味がちがう.

ヨーロッパ人は「小切手」をつかう文化があった.
小切手は当座預金(個人普通口座もある)で決済する.
日本の銀行における当座預金も,やはり小切手を振り出せる.
おなじに見えるが,ぜんぜんちがう.

ヨーロッパでは,「信用」がついている.
つまり,個人資産を含めて限度額がきまるから,信用があるひとには当座貸し越しもする.
口座にお金がなくても,小切手が有効につかえるのだ.
日本なら,別の口座から振り替えて当座預金額を確保しないと不渡になる.

この「小切手」がプラスチック・カードに変身したのがヨーロッパのクレジットカードだ.
だから,クレジットカード伝票に「サイン」をする習慣がのこった.
日本のクレジットカードは,信販会社が最初につくったから,「月額限度額」という概念でできている.つまり,小切手という出発点ではない.月額限度額をこえれば,そのカードは当月につかえなくなってしまうから,銀行の残高とリンクしない.

「高級カード」といわれるカード会社のキャッチコピーが,「カード所持があなたの信用の証拠」と宣伝をするのは,ヨーロッパ感覚で言っている.
ヨーロッパ人がクレジットカードをつかうと,自分の信用額がつかった分減ると同時に,ちゃんと引落ができれば,つかった額以上の信用分がふえるとかんがえるのだ.
そして,現実に信用ポイントが増加する.

だから,少額の買い物なら,クレジットカードよりもデビットカードをつかって,自分の「資産信用」には直接の影響がないようにしている.
こうした「便利さ」が,日本人にはわからない.
日本の個人が個人の資産信用を問われるのは,住宅ローンの設定時ぐらいで,あとは口座残高しか気にしない.

「信用創造」という金融にとっての最大機能が「ない」ことが,現金主義にしている.
政府が「命令」しても,うまくいくはずがないけど,通貨危機の韓国のように「宝くじ」でも付与してやれば,普及するかもしれないとかんがえるひとはいるだろう.

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