県外だが有名な温泉なので,経験しにいってみた.
山道の途中,何台もの自動車とすれ違って,おおくが他県ナンバーだったから,この温泉の帰りなのだと推測した.
しかし,時間はまだはやい.
「もう帰っちゃうのか?」と,いぶかしくおもった.
行ってみてわかった.
この温泉は,内湯と露天とがあるが,圧倒的に露天がおおきい.
湯温はぬるめで結構なのだが,まさに「露天」で,屋根がない.
すさまじい夏の太陽が照りつける温泉であった.
そして,なぜか内湯の湯温がたかく,こちらはそれなりに熱い.
だからか,はいっているひとはほとんどいないし,すぐに出ていく.
外にでても,日陰をもとめて落ち着かない.
さて,どうしたものか?
棚に,むかしながらの編んだ笠があった.
雨用なのだろかとも思うが,かぶって露天にふたたび挑戦した.
頭と顔周辺にはあきらかな効果があるが,肩から胸・背中は無防備で,ジリジリする.
湯より熱い太陽光を浴びて,とうとう我慢ができなくなってあがった.
休憩所では,「日陰がない」とか「夏は簡易な方法でも屋根をつけられないものか」という声がきこえた.
どちらも,女性の声であったから,どうやら女湯も平等におなじ構造らしい.
山の上の眺望がすばらしい温泉なのだが,ひとは眺望に五分で飽きる.
京都市中の有名旅館は,中庭をもつが外の眺望は望むべくもない.
二時間ほどしたら,体調に異変をかんじた.
宿周辺の街を散歩していたら,なんだかふらふらするし,暑いからでる汗ではない,じっとりとした汗がでてきて,力がはいらない
そのうち,気持ち悪くなった.
ちょうどこの街一番のデパートがあったので,迷わず入店した.
「ああ涼しい」
どこかにベンチはないか?と探すと,エスカレーター横に発見した.しばらく休んですこしよくなったので,店内を散策した.
地下の食品売り場に,「ほかでは買えません」と書いた紙の下に「練り梅」のパックだが口が工夫されていて,そのまま絞り出してもキャップがついている.「無添加」だが「塩分20%」と案内書きが添えてある.
減塩志向だから倦厭されるのだろか?
いまの自分にピッタリで,これはいい,と早速手に取り,ついでに「有機野菜」のきゅうりを購入した.
宿に戻って,きゅうりに練り梅をたっぷりつけて食べた.
「うまい!」
どちらもいけるが,練り梅がいい.
食べているうちから元気がでてきた.
梅の主成分といえばクエン酸である.
梅干しを作るには塩漬けにするが,梅の実だけで梅エキスがつくられる.
できあがりは,およそ1/10になるから,手間も含めて高価なのである.
梅干しも手間がかかる食品だが,夏にできるからよくしたものだ.
クエン酸と塩分が,急速に体調を整えてくれた.
これを体験できたから,あの温泉の「効用」とも言えなくはない.
人間万事塞翁が馬.
こういうこともある.
復活したので,ふたたびデパートへ.
ネットで本品がみつからないことも確認した.「ほかでは買えません」はウソではなさそうだ.
しっかりくだんの練り梅を追加購入した.