なにを変えずに維持し、なにを変えるかを、きめる。
「経営」の仕事の中でも,難易度が高いもののひとつである.
「本業」のなかで,なにが「コア(核)」なのかを経営者が識っていないと,きめろといわれてもきめられない.
ドラッカーがいうように,じつは自社の「コア」を特定するのはむずかしい.
だから、しょうがないじゃないか,にはならない.
なんとか見つける努力をして,ほんとうに見つけださなければならない.
でないと,なにを変えずに維持し、なにを変えるかを、きめることができないからだ.
外目には,なにも変えない,変えられない,という評価になる.
なにを変えずに維持し、なにを変えるかを、きめることができないままで,「経営」ができるか?
こたえは,だれにでもわかる.
それは,「経営」ではなく,「運営」にすぎない.
ところが,消費者の価値が流動化する時代には,昔からやっている,という理由だけでは「運営」すら困難だ.
デジタルトランスフォーメーション(DX)
東京ビッグサイトにおける「ホテレスショー」が開催中である.
訪ねてみると,神奈川県を代表する高級温泉旅館「陣屋」さんの展示が目立った.
売上の1/3がデジタル関連で占める企業を「リーダー企業」,それ以外を「フォロワー(従属)企業」という区分がある.
「陣屋」は,旅館という本業では一時困窮化してしまった歴史がある.
それを,いまとなっては「DX」によってウルトラV字復活させた.
困窮化は,KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)をもたず,KGI(Key Goal Indicator:重要目標達成指標)だけにたよった「経営」が原因だろう.
これらを,システム(仕組み)として,構築し,そのシステム(仕組み)を,「本業」でつかうことで,実用に耐えるものにした.
そして,これを「パッケージ化」して他社に販売して成功した.
だから,「本業」である高級旅館は,パッケージシステムの開発にあたっての実験台である.
そこで,他店舗展開ではなく,つねにブラッシュアップの対象施設にした.
まさに,「クルマの両輪」である.
ご母堂から経営を引き継いだ,現社長は,大手自動車メーカーのエンジン開発エンジニアだった.
かつて,こんな「宿」はない.
デジタルトランスフォーメーションでの成功は,「なにを変えずに維持し,なにを変えるのかを,きめた」からできた成功だということに注目したい.
さて,その本業の旅館は,完全週休二日を実現している.
「完全」だから、チェックアウト日とチェックイン日をかんがえると,実動週四日しかない旅館である.
これで,従業員の働きかたが変わらないはずがない.
この人手不足があたりまえの時代に,募集すれば応募がたえない旅館になった.
まねのできないビジネスモデルである.