「祝?」国家警察の誕生

今年度発足予定の、「サイバー警察部隊」は、「国家管轄」の特別部隊になるという。
すなわち、戦後初の「国家警察」の誕生である。

わが国を代表する「日本経済新聞」での報道記事の「初見」は、昨年の6月24日「朝刊」で、翌25日には、「社説」でも扱っていて、基本的に「歓迎」の主張をしていた。
そして、昨28日夕刊に、「いよいよ」という記事がでた。

社説の「主張」が、もっともなのは、従来の「縦割り」体制の不備と、被害実態の把握が出来ないこと、それに、被害企業が「公表しないこと」を挙げていることだ。
もちろん、「諸外国の事例」は、はなから国境の概念が希薄な「サイバー上」のことだから、「国家警察」が扱うという事実もある。

国境の概念がないから「国家警察」というのは、なんだかよくわからないけど、「地方警察」では間に合わない、ということしか「それらしい」理由はない。

警察組織がややこしいのは、階級と所属が合致しないことによる。
最高の階級は、所属組織としては、「東京都警察」にあたる「警視庁」のトップである「警視総監」だ。
しかし、東京の治安に関する「最高責任者」は、「都知事」なのである。

これは、その他の各道府県もおなじで、道府県知事の下に道府県警察本部長がいる「建て付け」だからだ。
なぜなら、各都道府県警察の「予算」は、それぞれの各都道府県の管轄だからである。

それで、警視総監の上に、「警察庁長官」というひとをつくって、このひとが「警察庁」のトップとして、「管区警察局」とか、各都道府県警察の「連絡役」ということになっている。

上から見ると複雑だから、下の「採用」という目線でいけば、各都道府県警察の直接採用か、国家採用かで分かれる。
もちろん、各都道府県警察採用なら、いわゆる「地方公務員」のなかに分類されるし、国家採用なら、当然に「国家公務員」だ。

一般職の公務員と同様に、「上・中・初」の三段で別々に採用が行われるが、都道府県警察採用では、「上」がない。
ただし、「術科(柔道・剣道)」という枠での「中・初」がある。
「上」は、いわゆるキャリア、「中」は一般大卒、「初」は高卒だ。

つまり、「警察官僚」とは、キャリア採用の国家公務員を指す。

なお、国家採用の「中と初」は、「皇宮警察」に配属となることがある。
警察庁直轄なのだ。

すると、都道府県警察の直接採用者たちは、おおむね「警視」あるいは「警視正」までで定年退職となる。
警察署長、あるいは本部の部長級である。
それより「上」が、国家採用の「上」のひとたちで占めることになっている。

ちなみに、警視正の「上」は、警視長、その「上」が警視監、その「上」が警視総監である。

東京の警視庁を除いて、残りの「警察本部長」は、たいがいが「警視監」の階級だけど、警察庁「本庁」の役職的には、「課長級」である。
なにしろ警視総監を除くと、「支店長」が46人いるので、長官が出席する全国本部長会議は、「ロの字型」にずらーっと並ぶ。

これは、「日本銀行」の「支店長会議」とおなじだ。

なので、警察庁の「部長級」とか「局長級」の凄みは、県警本部長が雑魚になることで理解できる。
「本庁(本社)」には、「警視監」がうじゃうじゃいるのである。

だから、『踊る大捜査線』の織田裕二演じる「青島クン」と、柳葉敏郎演じる「室井審議官」との関係とか、デフォルメし過ぎではあるけれど、北村総一朗以下「スリーアミーゴス」は、まんざらではない話なのである。

とはいえ、キャリア官僚の世界は、なんでもあり、なので、「他省庁との人事交流」という名目とかで、「出向者」の受け入れや「差し出し」もやっているけど、地方の「中」から国家への「出向」もある。

都道府県警察採用の警察官が、警察庁や内閣情報調査室に「出向」するし、「在外公館」の警備担当書記官は、警察庁から外務省への「出向」なのだ。
ただし、国際慣例上、「軍」(自衛隊)からの「駐在武官」は、直接派遣されるので、外務省への出向という「オブラート」での在外勤務ではない。

それでもって、キャリアなら、「本部長」とか、そのほかの役職が、たとえば、財務省とか外務省とかという、ぜんぜんちがう「畑」のひとがいきなりやってくることも珍しくない。

これで「業務が廻る」のは、「組織だから」であるけれど、そこが「官僚」という「テクノクラート」の仲間うちの世界なのだ。
わからないことは、若い警察キャリア官僚が、そっと教えてくれるから、支障がない。

むしろ、いいなりで「個性を出さない」努力をすれば、無事任期をまっとうして、出身省庁に帰れるし、それが、また「キャリア」となっていく。

そんなわけで、エライひとは山ほどいるから、「部隊」として実動するのは誰なのか?という問題になる。
「本庁」に設置の「サイバー警察局」には240人、そしてなぜか「関東管区警察局だけ」に設置の「サイバー特別捜査隊」には200人体制とするようである。

こんな「人材」がどこにいたのか?
とりあえず、自衛隊のサイバー部隊から出向させるのかしらん?

けれども、「どんな法律」で検挙の根拠にするのかということが、あんがいと「灯台もと暗し」なのではないのか?
なぜなら、「警察法改正」という「手段」をもって、「捜査権限を持つ」ことの根拠としているからである。

法務省(=検察)が所管する、「刑法改正」ではない。
それに、さんざんに「スパイ防止法」の制定を言っても、いっこうに立法の議論にならない。

根っこをたどれば、おのずと「憲法」の話に行きついて、例によっていつもの野党たちは、審議に応じない、という戦術をとって、なぜか「絶対安定多数」の自民党が、これを、「認める」ということをやっている。

実は「55年体制」のままなのである。

つい先日は、「スパイ防止法」がダメなら、「ハニトラ防止法」を制定せよという、笑えない提案をした評論家がいた。
両者とも、反対するひとたちは、「おなじ理由」が思い浮かぶから、なかなか「スパイス」が効いたものではあった。

どちらにせよ、「特別高等警察(特高)」と「憲兵」の苦い想い出があるひとたちが「絶滅」したので、このへんで「国家警察」をつくるには、それなりのタイミングである。
ただし、捜査分野が拡大すること必定なので、「特別高等警察」と「憲兵」の歴史を紐解くことぐらいはしたほうがよさそうだ。

なお、戦後の占領期における「軍の解体」と、「警察の再編」をGHQはセットで実行した。
アメリカ軍の意向で「日本警察」は生まれて、さらに、軍に対抗した日本監視のためにCIAがつくったのが「東京地検特捜部(=法務省)」であったことは、脳の中にあっていい。

要は、アメリカの「縦割り」が日本に持ち込まれたのである。

この「矛盾」をいまだに解消できないばかりか、ずっと「上塗り」をしているので、なんだかわからないことになるのだ。
「サイバー」といえども、他国からの「攻撃」ならば、「軍」の管轄で「防御」と「反撃」となるのが、「諸外国のふつう」だけど、そうはいかないからこうなった。

そもそも「インターネット」は、アメリカ軍が開発して、「その一部」を民間に「解放」したことがはじまりだ。

とはいえ、いろんな「理由」をつくって、関東管区警察局から全国の管区に広げるのが当然なのは、国内犯なら、関東以外でやればいいからだ。
でも、「警察法改正」で「捜査」をしても、どうやって「起訴」するのか?
外国にいる外国人をどうやって逮捕して、どうやって日本の裁判にかけるのか?

むしろ、検察にサイバー捜査隊をつくらないことの不思議があるのは、GHQ(軍)とCIA(国家安全保障)の対立を、いまだに引き摺っているからなのかと疑う。

「特定野党」は、この「改正」にどう対応するのか?はかんたんに予想できるけど、暗いご時世になること確実である。
それは、なんだかよくわからないけど、「別分野」で理由をつくれば、「国家警察」を編成できる、という「前例」ができたことは、確か、だからである。

社会主義国を目指す、と明言した首相方針に従えば、「警察国家」になるというのは、「セット」だ。

だからどんどん「警察国家」になっていく。
そのための、「憲法改正」は、間違いなく「改悪」なのである。

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