アナログをデジタルにする技術

宿泊業で三大経費といえば,人件費,原材料費,水道光熱費である.
この三つで8割ほどにもなるから,事業を左右する重要な費用である.
それぞれに,管理の方法がちがう.

以前,とある宿で月次の資料を見せてもらったことがある.すると,水道光熱費が異様におおい.
これはおかしいと指摘したが,「だいたいこんなものです」と動じない.
水道代は二ヶ月に一回の支払だけど,均すと特に異常はないという.
つまり,相当前から異常になっていることが,気づかずに放置されているにちがいない.
それで,たまたま大浴場の補修のための「閉館」があったから,ついでに専門業者にチェックを依頼したら,水漏れ箇所が発見された.これで,年間数百万が浮いたことがある.

毎日検針していない

電気,水道,ガス,重油など,それぞれには「メーター」がついている.
これを毎日検針するのが,水道光熱費を管理する,といったときの基本である.
しかし,残念な宿では,この基本ができているところがすくない.
だから,請求書のとおりに支払う,ということだけが「業務」になっている.

毎日検針することで,なにがわかるのか?
まず,「使用量」というデータが集まる.
よく,「データは活用されてこそ意味がある」などと耳にする.
じつは,「活用方法がわからない」というのがこの手の事例の問題点である.

しかし,そのことのさらに奥には,「なにがわかるのか?」という興味と想像がない.
だれが使っているのか?をかんがえれば,それはお客様である.
お客様のために,玄関やロビーに電灯がともり,館内には冷暖房がきいている.
お客様のために,お風呂の用意をし,食事の用意をしている.

だから,水道光熱費という費用発生には,「量」が消費されているとかんがえるのが妥当だろう.
であれば,客数との関係はどうなのか?という「関数」が役に立ちそうではないか.

「予想」・「予測」ができるかできないか

おなじ業界なのに,業績に差がつくのはなぜか?を吟味すると,業績のよいところは,「予想」・「予測」が上手で,そうでないところは下手である.
では,なぜ上手い下手というちがいができるのか?
「データの活用力」と一言でいえばこれにつきる.

予想・予測が的確だと,当然に対応が早くなる.この「スピード」こそが分岐点だ.
経営資源はかぎられている.
ひと,もの,かね,情報,というけれど,これに時間がくわわる.
宇宙の存在や地球の自転という,だれにもコントロールできないだけに,時間は貴重だ.

水道光熱費でいえば,予約客数から使用量が予測できる.だから,異常の発見がはやくなるし,請求書がくるまえに支払予測もできるから,資金繰りに直結する.
さらに,季節の変わり目に「判断」を要する,冷暖房の切り替え時期も,独自に計測した温度や湿度のデータが役に立つだろう.

日課ゆえの面倒を楽にする

メーター類は個人の家でも目立たない場所にある.
建て増しをくり返したような旅館では,読み取りに踏み台が必要だったりするから,危険が伴うことがある.
最近の技術は,アナログメーターをカメラで読みとって,それをデジタル化することができる.

これは,表計算ソフトに自動入力してくれる,という意味だ.
それなら,客数や気温など,手軽に計測できるものは手入力でも,ちゃんとデータの活用ができるだろう.

なんのことはない,これがいまはやりの,「IoT:Internet of Things(モノのインターネット)」ではないか?つまり,センサーと通信機能を持ったモノ達,ということだ.
かたひじに力をこめなくても,最先端はそこにあるということだ.

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