トランプ氏にノーベル平和賞を

ノーベル賞のなかでも「平和賞」というのは、「経済学賞」とおなじくらい不思議な賞である。

そもそも、経済学賞はノーベル財団が認めていないから、「ノーベル賞」といっていいのかさえも怪しいのだけども、正式名称の「アルフレッド・ノーベル記念スウェーデン国立銀行経済学賞」といわれることはめったになく、強引に略しているのである。

平和賞は、ノーベルの遺言にあるので、経済学賞ほどのあやしさではないはずだけど、「科学」というノーベル賞の基本からかなりの距離があることは否めない。
それに、(一応経済学賞もいれて)6部門のうちこの平和賞だけ、選考はスウェーデンではなくて、ノルウェー・ノーベル委員会になっている。

これは、1905年まで、スウェーデンとノルウェーが「同君連合」として、おなじ王様の国だった名残でもある。最初の授賞式は1901年だった。
まぁ、事情もさまざまな各賞で、そこに受賞という名誉が「ある」のだから一般人が文句をいってもはじまらない。

コロナ禍、日本のお盆の時期に欧州歴訪した中国の外相が、香港の自由を求める活動家に、もしやノーベル平和賞を差し出すのではないかと懸念して、ノルウェー政府を恫喝してしまったのがニュースになった。
こういうことが、「嫌われる」ことに気づかないことが、相手から本気で嫌われる原因になる。

どういう神経か?と。

もはや、ヨーロッパは話題のベラルーシを除いて、すべてが自由と民主主義の国ばかりになったので、この恫喝のニュースは全ヨーロッパを敵に回す「嫌われる努力」となったし、旧社会主義国の国民にかつての自国の記憶を鮮明に蘇らせる効果ばかりとなった。

なので、「ヨーロッパ最後の独裁者」といわれるベラルーシ大統領に対抗する大規模デモに、周辺国民の支援にも熱がはいっているのは、完全に「反面教師」に対する反抗心の表れとしての「効果」にもなってしまったのだ。

なお、ここでいうヨーロッパにロシアは含まないので念のため。
ちなみに、ベラルーシの「ベラ」とは、直接的には「白」を意味するけど、深いところで現地では「南」のことである。「ルーシ」はロシアが訛ったから、直訳で「白ロシア」、現地の感覚では「南ロシア」をいう。

むかしいってた「白系ロシア」は白人が多いという意味に捉えたひとがいたけれど、そうではない。
ただし、ファッション界のモデルが国家資格になっている国なので、ファッション系でいう「美人大国」であることは間違いない。

中国の外相をここまで追い詰めたのは誰だっけ?ということは脇に置いて、最近驚愕したニュースは、イスラエルとUAEの国交樹立のニュースであった。

UAEとは、アラブ首長国連邦のことで、アラビア半島南東に位置する、7つの首長がいる小国の連邦である。
「アラブ」がつくから、アラビア語を話してイスラム教を信仰しているひとたちの国だ。

地図を見ないといけないのは、7つも国が集まった理由を知るためにも必須だからである。
いまでも「アラブ連盟」は健在で、21カ国が加盟(シリアは資格停止中)していて、本部はエジプトのカイロである。

イスラエルに対抗して「アラブの大義」が声高にいわれたけれど、アラブ各国が集合した「アラブ連合」は、かつてエジプトのナセル大統領が提唱し、実験はしたもののうまく実現していない。
部族社会が歴史的本筋なので、一本化できないのである。

そんなアラブのなかにあって、UAEの結束があるのは、対岸の国を見ればわかる。「ペルシャ湾」に面しているから、イランが目先にあるのである。
ここで、敵の敵は味方という論理が成り立つ。
ならば、もっと前にイスラエルと国交を結べばよかったじゃないか、というわけにはいかない。

その理由が、アラビア半島の大石油産油国、サウジアラビアの存在である。
けれども、いまだってサウジアラビアはある。

では、なにが変化したのか?
アメリカの中東からの撤退という「流れ」なのである。
これは、トランプ政権になって鮮明になった。
彼の票田は、シェールオイル事業者だから、石油価格の適度な維持が重要なのである。

すると、サウジにとって、アメリカの撤退とは、イランとイスラエルとの二方面作戦を強いられることになる。
トランプ氏の婿殿は、バリバリのユダヤ人(=ユダヤ教徒)だから、政権が発足してすぐに、イスラエルのアメリカ大使館をエルサレムに移転させた。

戦後のなかで、アメリカ大使館との距離がある日本大使館は、戦前の一等国の名残であった。なので、戦後の日本大使館は、アメリカ大使館のご近所に必ずある。
これが、イスラエルで破られている。日本大使館は、いまだテル・アビブにあるのだ。戦後日本の、覚悟のなさの象徴ともいえる。

じっさいに、中東和平はトランプ政権になって進展している。
半世紀前の中東戦争によるイスラエルの占領地を「固定させる」という提案は、時間経過の中で、アラブ側にも同意できる環境となっている。

中東の従来秩序を破壊したら、和平が見えてきた。

誰のために?
国家のメンツではなくて、そこに住んでいるひとのために。
これを徹底追求したら、中東と、ヨーロッパ、それに東アジアで、平和の鐘が鳴りそうなのだ。

これは、あたらしい名誉革命なのである。

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