反逆の阿波おどりのゆくえ

昨夜,徳島の阿波おどりで,市長が中止を強く要請した「総おどり」が強行された.
市役所職員や警察による妨害もなく,「静観していた」というからまずまずだろう.
しかしこれは,地元の「祭り」が行政に乗っ取られた一例になった.

報道によると,阿波おどりの主催者は,チケット販売や広告などを担当する地元徳島新聞社と,会計を担当する徳島市観光協会の二者だった.
この観光協会に累積赤字が4億円あまりもあって,ずさんな経理が問題となり,補助金と協会の赤字補填のための金融機関からの融資保証(6億円まで)をしていた市が,これを取りやめて協会は破産処理とし,あらたな祭り運営組織を立ち上げることになった.
それで,一方の主催者だった新聞社が3億円を寄付して基金とし,市と新聞社による「阿波おどり実行委員会」がつくられた.今年は,新体制で最初の「祭り」になった.

一見なんの変哲もないはなしである.
どこに揉める要素があるのか?ややふつうでないのは,役所と一心同体のはずの観光協会が,どうしてこうなったのか?くらいである.

深く調べたのは週刊誌の記者で,破産処理をされる前年の観光協会は3千万円弱の単年度黒字に転換していたのをつきとめた.ならば何故に「破産」処理を急がなければならなかったのか?
あたかも原因は「4億円以上の赤字の『発覚』」というけれど,6億円までの債務保証をしていた市側が,発覚まで知らなかったはずがないし,なぜ4億ではなくて6億の保証だったのか?
融資した金融機関からの厳しい取り立てで破産したのではなく,市が金融機関から債権を買い取って破産させているから,「強引」なイメージがある.

市の調査団による観光協会の監査では,随意契約ばかり,しかも契約書もなく請求書すらみあたらないことがあると厳しく指摘され,これが「そのまま」公表された.どうしようもない観光協会,というストーリーである.徳島新聞社もこの論に同調していて,共催者として道義的責任はあると「反省」文を公表している.

ところが,記者の取材でわかったのは,観光協会の取り引きの相手先が,一方の主催者である新聞社のグループ企業ばかりだったのだ.
この点に関して徳島新聞は公表した「反省」文に,一切触れていないから,確信犯的でかえって構図をわかりやすくしている.また,報道機関でありながら観光協会の不届きを突っ込んで取材しなかったと「反省」する厚顔無恥ぶりで,なかなかの悪質ぶりを自供している.

まさに,自作自演ではないか.
本来は市役所と観光協会が一緒に損害賠償請求をしてもいいくらいで,司直が公金横領で捜査しないのも不思議だ.
前に書いた映画「原子力戦争」と構図がそっくりである.

徳島新聞のHPによると,朝刊世帯普及率71.92%(2018年1月現在)ですごいのだが,人口減少で近年の購読数の下落に歯止めがかからず,発行部数は朝刊222,159/夕刊27,188(2018年1月現在)となっている.
朝刊の購読料が2864円/月だから,年にして76億円というのが単純計算である.
会社HPには,90億6600万円(2017年3月末)従業員数 285人とある.ちなにみこの新聞社は「一般社団法人」で,出資金は「10万円」という珍しさだ.
失礼ながら,新聞事業では将来がない,という経営環境なのはなにも徳島にかぎらないが,だからといって「祭り」で甘い汁を吸いすぎていないか.

当時の観光協会の担当者は,証拠書類を要求しても相手にしてくれなかったと証言している.また,有料席のチケットも発売10万枚のうち上席ばかり2・3万枚が新聞社の販売とされ,一般人は実質購入不可の状態だった.しかも,開演1時間前になって売れ残ったチケットを協会に引き取り要請されたというから,観光協会は新聞社にとって便利な「機関」だった.
徳島市民は,新聞購読者ならただで配付されるのが常識らしい.

そういうわけで,協会側は「独自に改革案」を作成したが,新聞社と市長にかえって反発されたようで,それが急いだ破産処理の理由だとすれば合理性がうまれる.
この独自改革案とは,もちろん「徳島新聞離れ」にほかならない.
それで,すこし実行したら黒字になったのである.ゼロサムだから,新聞社の利益が減ったはずである.

ここで,あまり報道されていないが,地裁の破産決定に観光協会は即時抗告しているから,以上の構図が垣間見えるというものだ.
破産決定は高裁によるものだが,ここでもおかしなことがある.
自主改革に乗り出した観光協会を破産させまいと,踊り子たちでつくる「阿波おどり振興協会」が個人から寄付を募って,なんと協会の残存資産とあわせ累積赤字分を供出しているのだ.この供出金を,高裁は「借入金」としてはねつけ破産決定している.残念だがこの詳細はわからない.うわさでは,地元選出の有力衆議院議員の存在がうたがわれているが,定かではない.

こうして今回の騒動のややこしい下地ができた.
阿波おどりのメインイベントといえば,「総踊り」.
これを新主催者の実行委員会が独断で「中止」を決めた.
実行委員長は市長である.

市長は元四国放送のアナウンサーだ.
四国放送は徳島新聞系列で,主に日本テレビ系の局である.だから,関東にいながら局によってのワイドショーでの取扱いのちがいも楽しめるようになっている.
「総おどり」は,観光協会救済の供出金を用意した「阿波おどり振興協会」の所属団体で行われるものだった.意趣返しを地でゆく展開は,かつての勧善懲悪もの時代劇を観ているようである.

かつては役所と一体だったはずの観光協会だから,それに近い「阿波おどり振興協会」の事務所は市役所内にあったというが,これも今年追い出されている.一方,「徳島県阿波踊り協会」という団体があって,こちらは徳島新聞本社に事務局をおいている.
だから,これらの「協会」を合併させるための振興協会分断工作も,これからの観ものになるはずだ.

「総おどり」中止決定前にチケットは一般販売されていたから,これに驚いた購入者は「総おどり」がないならいらないと,返金を求めたが実行委員会は,これに一切応じていない.
メインイベントがなくなったらコンサートにしろスポーツにしろ,観客にとっては価値半減である.「価値」を理解しない実行委員会とは何者か?
だから,このゴタゴタはチケット購入者にまで波及した.

むき出しの利権構造だが,これを鉄板にしているおとなたちの姿が衆人にさらされている.
すこし古いが,絵に描いたような「守旧派」と「改革派」の対立構造になっている.
日本にはまだこんなことが残っている.残念だが徳島だけではないだろう.

ラテン系なら暴動になりそうな事態である.冒頭の「総おどり」の強行は,まさに気分は「暴動」だろう.
ネット上では,市長へのリコールと新聞購読中止が呼びかけられている.
さては「大衆の反逆」のつづきを今後リアルにみることができるかもしれない.

似たような経験がある.
市民が手弁当ではじめた「祭り」が,やはり市に乗っ取られた.
分裂開催となったとき,行政側の嫌がらせはみごとに組織的だった.
町内会の掲示板へのポスターに許可を出さない.回覧板もだめ.
手作り御神輿も,地元警察に要請して道路使用許可を出させないから,歩道を行く.
保健所が食品の作り売りを許可しないから,無料で振る舞う.

しかし,不思議と盛り上がったのは,しらない市民まで気がついたからである.
その異様さは,気がつかない方がおかしいくらいだった.
いかめしい風情の役所の職員が,嫌がらせのためのダメダメを大声で連発している横で,交通規制の警官が勝手違いなかおをしている.

「なんで御神輿が車道にでちゃだめなの?」「許可がとれていません」
「なんで許可がとれないの?」「許可しないからです」
「これが権力」を確認できる「お祭り」になって,その異様な雰囲気をみんなで味わうことができた.

400年前,阿波おどりを蜂須賀家政が許したのは,徳島城の完成祝いという説があるから,民衆パーワーのガス抜きを兼ねたにちがいない.蜂須賀家は徳川時代を生きぬき,明治には侯爵となっている.
それがいま,お金が欲しい人たちの餌食になって,民衆パーワーが溜まってしまった.

今後,市と新聞社の実行委員会は,あらゆる手段で阿波おどり振興協会に対して牙をむくこと確実である.
しかし,彼らが「振興協会つぶし」に夢中になっているうちに,チケットがぜんぜん売れないで肝心のことしの祭りの収支は「完全赤字」になるのではないか?もし,「黒字」なら,それは「今年だけ」というせこい条件で,新聞社が利益を減らす合意をしたからだろう.

けれども,「祭りの収支」発表と,「新聞社の業績」発表を「連結」しないと詳しくはわからないから,かならず一般財団法人の新聞社は「業績」の詳細を発表しないだろう.
こうすれば,すべては闇の中,という筋書きどおりとなる.

来年は,分裂開催になるかもしれないが,「振興協会」は徳島市での「おどり」にこだわらないという手もある.
近隣市町村での「おどり」をオークションにかけるのはどうだろう?
有名連ばかりなのだから,いっそのこと自分たちで「稼いでしまう」という発想だ.
大道芸の収金方法を参考にしたい.
市長の任期はあと二年.とにかく市民を味方につけることが重要だ.

げにおそろしきは補助金という悪魔である.
いったん受け取れば,魂が抜かれる.
そして,祭りがおおきくなればなるほど,利権がうまれる.
そうなっても,祭りに参加する市民は,かならず無報酬である.
ここに付けいられるスキができるのだ.

明治から150年.
市民のための役所になるのに,あと何年いるのだろう?

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