幼稚な既成事実の応酬

「広島サミット」も終わってみたら、なにが決まったか?よりも、元俳優のゼレンスキー氏が主役となった、へんな既成事実だけが目立った。

彼がどうやってわが国まできたのか?は、「フランス政府専用機(フランス軍)」に搭乗していたことがわかって、マクロンがEUとアメリカに折れたこともわかった。

飛行ルートについては、明海大学の小谷哲夫教授が、22日の「テレ東Biz」で解説している。
ウクライナからサウジアラビアを経由し、このとき当初予定の米軍(旅客)機ではなく、上に書いた通りで、なお、インドを横断しベンガル湾からミャンマーを通過して中国上空から広島に到着したという。

当然ながら、「通常の飛行ルート」ではない特別だ。

最低でも、中国上空を米軍機は飛べないし、日本海上空ならロシア軍機にも狙われるから、在日米軍機の支援が必要となる。
そんなわけで、帰国にあたっても、EU内でまだ中立的にみえるフランスの機体が使われたのだ。

教授は、「相当前からアメリカと来日準備の協議をしていたはず」と述べて、「電撃来日」を否定したのだった。
その協議は、言わずもがな、サウジアラビアや、イエメンなど(イランも?)と、インドやミャンマー、中国とに及ぶ「大交渉」がひつようなのだ。

一方で、中国は、サミット前日の18日に二日間の日程で、西安での「中国・中央アジアサミット」を開催していた。
参加国は中国の他5カ国(カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン)で、中国からこれらの参加国へ5000億円の支援が決まった。

個人的には、この地域で興味深い、「世界一の親日国」を自称しているアゼルバイジャンが不参加だったことの理由の詳細をしりたいが、よくわからない。

いまや、「逆神」としての価値しかない、マスコミ報道では、「G7サミットに対抗するため」という理由付けがされているので、おそらく中国の本意は、G7に対抗するため「ではない」とかんがえたくなる。

それがまた、上述の飛行ルートへの協力(国土上空通過許可)でわかるのだ。

これを、遠藤誉筑波大学名誉教授がありがたくも別角度から解説してくれている。

なかでもカザフスタンを例に、中国の心配事についての記述は一読の価値がある。

キーワードの「産出する石油やガスの硫化水素(H2S)成分が多いこと」という指摘は、まことにもっともな物理的理由である。
さすが、理学博士だ。

つまり、カザフスタンも含めたカスピ海の油田やガス田(アゼルバイジャンも)が、この地域の経済発展に欠かせないだけに、硫化水素との技術的な闘いを制さねばならぬのに、西側(アメリカ・ドイツ・日本)の技術を要する、という条件が、中国の世界戦略に立ちはだかっているのである。

だから、単純に「対抗した」というレベルの話ではない。

しかし、あたかも既成事実を積み重ねたようなことが、そのまま国際政治になることを示している。
それでもって、「上海協力機構の首脳会議」とならなかったことも、気になるポイントなのである。
かんたんにいえば、ロシアが不参加だったことだ。

一方で、広島サミットでは、ウクライナの和平を模索するひとがだれもいないで、原爆記念館(「本館」ではないが)に行ったのは、どういうことか?という問題も、日本人に突きつけた。
なんだかしらないが、原爆を投下された日本が悪いことになっているのは、だんぜん納得がいく話ではない。

この一点で、岸田氏は即座に抗議して辞任しないと、またまたのらりくらりとして、歴史になってしまう汚点をつくる。

まるで国家観のない人物を、最長の外務大臣に据えた安倍晋三氏の任命責任だって、いまさらに問いたい大問題だが、もう自民党にこれをいう人物も絶えた。

こんな人物を首相にしていることが、日本人の民族的悲喜劇だ。

それでもって、興味深いのは、最新鋭戦車に続いて、禁断の最新鋭戦闘機F16をウクライナに供与することも決まった。

フライイングとして、東京新聞社会部の名物女性記者が、ツイッターに「日本が保有するF16戦闘機」と書いたことで、プチ炎上したらしい。
わが国は、この戦闘機をアメリカから供与されていないのである。
だから、保有していない。

けれども、ウクライナに戦闘機供与をするという既成事実だけが発信されているのである。
これでロシアの劣勢も、なんだか既成事実になったと書くひともいる。

残念ながら、最新鋭戦車でも書いたが、最新鋭戦闘機ともなれば、だれが操縦するのか?という問題が無視されることの方に驚きがあるし、そもそも「ウクライナ軍」なる国家の軍隊組織は現実に存在しているのか?さえもおおきな疑問だ。

地上を走る戦車ですら、新人が操縦できる、という程度までに最短で8ヶ月の訓練を要する。

戦車の乗員は、「走る」「撃つ」「込める」「指揮する」の4つの分野で、専門的に分化しているから、ただ走行できる、では、戦車にならないし、最新鋭とは「自動化:コンピューターへのプログラミング操作」という意味もあって、そのプログラミングが専門的でまた煩雑なのである。

ましてや、最新鋭戦闘機を操縦して、実戦におもむくまでにいかほどの訓練を要するのか?は、素人の想像を絶するし、その費用と教官をどうやって確保するのか?

すぐさま飛んでいくような、実戦配備なんてできないから、各国が供与する、という政治的パフォーマンスをやって、訓練期間中に、和平協定に応じろ、というのが、ゼレンスキー氏への各国の強い要求になっていることの本音がわかる。

武器さえあれば、戦争に勝てる、なんてかんたんな戦争を現代ではしたくともできないのである。

だから、今回の供与決定という政治判断は、たんに、軍事産業に発注する、という意味でしかなく、それでウクライナがロシアに勝てるかどうか?なんてことは、だれも関心をもっていないのだわかったのである。

つきつめれば、中国は西側技術を欲しがる国をとにかくなだめる努力をしていて、G7各国は、完成された軍事的機械類が売れればいい、ということの「応酬」があった、ということにすぎない。

バイデン氏と下院議長の、連邦予算に関する調性が失敗におわって、いかにアメリカ大統領がF16をウクライナに渡したいといっても、そんなカネがどこにもないのが、いまのアメリカ政府の財布事情である。

一方で、デフォルトをいって、一方で戦闘機供与をいうバイデン民主党政権の無責任がここにある。

東京新聞社会部の名物女性記者の幼稚を嗤うどころか、世界の報道が狂っているのである。

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