「アベ一強」のほんとうの理由は、かつて、レーガン氏と中曽根氏が個人的関係を築けたように、トランプ氏ともプーチン氏とも個人的関係の構築に成功したからだろう。
わたしは安倍政権を防衛・外交いがいでそんなに評価しないが、このことは簡単に他人にできることではない。
逆にいえば、こうした首脳たちとの個人的関係があるからこそ、防衛・外交分野でそこそこの成果をだせるのである。
それで、東アジアにおける米国外交をささえる形ができたし、中国との「貿易戦争」によって、わが国に一目置くような変化が中国首脳にもみられることになった。
まさに、トランプ大統領は、アメリカ人にとってはしらないがわが国にとって過去最高の大統領、といえた。
発表されている「外交日程」をみれば、令和初の国賓は、5月にやってくるトランプ大統領だし、6月末には大阪でG20もあって、これにもトランプ大統領は参加する。
だから、この4月末に平成最後の日米首脳会談がワシントンであるのは、ずいぶんと回数の間隔がみじかいので、なにが話題なのだろうとおもったら、パンドラの箱をあけるようなはなしが飛び出した。
就任したばかりのトランプがオバマがやっていたしごとをちゃぶ台返しして、いっしょに「TTPはアメリカの陰謀だ」といっていたひとたちもすっ飛んでいった。
「TTP亡国論」は、もうすぐ文化遺産になるから、どこぞから特集して出版してほしいものだ。
しかたがないのでアメリカ抜きの11カ国ではじまったTTPに、わが国は戻ってきてくれるようにしたいのだろうが、トランプ氏の魂胆は二国間交渉にあった。
ここが、従来の延長でしかかんがえない官僚の限界で、ビジネスで鍛えられ成功したアメリカ大統領にはつうじない。
手順として、わが国の二倍になった経済規模の中国を先に締め上げて、白目をむいてギブアップをしそうな詰め段階にきたら、その次にでかいわが国に攻撃をしてきたのだから、まるでプロレスである。
わが国の基本姿勢は変化なしで、売りたい自動車の関税引き下げと、保護したい農業の関税維持、という「わざ」一本やり、なんとかの一つ覚えである。
これにたいして、大統領は、いきなり「農業」だけを貿易交渉のトップにあげたのだ。
わが国官僚は、農業における「維持」の基準は、TTPで決着済みとおもっていたから、この発言の破壊力ははかりしれない。
首相に随行する戦略なき奢りきった役人たちの頭脳が、まっ白になったのではないか?
「補助金」というものがいかがわしいものだというのは正しいが、農業保護を「関税」でおこなうというふるい手法に磨きがかかっているのが、ここでもガラパゴス化しているわが国である。
まるで、真空管で世界一だった東芝がトランジスタ時代になっても、真空管技術に固執して倒産危機をむかえたのににている。
世界はとっくに関税「ではなく」、補助金による農家の個別保障という制度に移行しているからだ。
「関税」方式では、国民全体が高い品物を買わなければならないからである。
すなわち、高いから買わないとか、買えない、という消費者の判断が、その品物の需要をへらして、そもそも輸入しなくなるところまでいく。
けれども、消費者からすれば、その品物本来の価格であれば、買っているのに、というのであれば、関税方式とは消費者の選択の自由をうばうやり方になるのである。
それよりも、消費者を守るためにも、輸入品から打撃をうける生産者に個別に補助する方式なら、消費者の選択の自由はまもられるのである。
どうして、わが国でこれができないのか?
関税方式にあるメリットとは、どんなものなのか?
それは、国の特殊法人や農業団体などが儲かる仕組みがきっちりとできているからだ。
つまり、利権、である。
だから、農業を保護するため、ということを隠れ蓑にして、じつはこうした利権を死守したいのである。
ネット販売なども独自にはじめて、高品質でがんばっている農家がたいへんなことになる、というはなしも、ウソではないが誇大妄想である。
ほんとうにたいへんなことになる農家は、そういう農家ではなく、農協に依存した専業ではない農家のほうなのだ。
わが国では、がんばっている農家がなかなかむくわれず、なんとなくやっている側に有利な状況がうまれている。
しかし、こんなことはアメリカ人だってしっている。
トランプというビジネスマンが、補助金をたっぷりもらっている農家の輸出をふやすために、どんな方法をいいだすのか?
もしかすると、わが国の農家保護の方策が、世界標準にならざるを得ないとしたら、じつは日本国民として、やっぱり最高の大統領になるのかもしれない。
わが国は、民主主義のはずなのに、政府と国民の利害が一致しない国になっている。
これを、外国から強制されないとできない国が、日本なのではあるけれど。
今日は平成最期の日、明日になっても、やっぱり外国から強制されないとできない国はつづく。