経済同友会はだいじょうぶか?

昨日、経済同友会代表幹事の小林喜光三菱ケミカルホールディングス取締役社長兼三菱化学取締役会長兼地球快適化インスティテュート取締役社長が、消費税率は14~17%まで引き上げないと国の(財政再建)目標は達成できないと述べたという報道があった。

このひとはもともと、化学人である。
三菱化成に入社した翌年に、東京大学から理学博士号をうけている。
それで、放射性物質の反応がすすむ福島原発をかかえた東京電力や、どうにもならないジャパンディスプレイの社外取締役も引き受けたのだろう。

冒頭の報道は、政府というフラスコのなかで、財政をおさめる反応には増税でのおカネを投下しないと、ちゃんといかないと発想しているのだろうとかんたんに予測がつく。

だが、この「実験」には、化学実験とことなる条件があって、それは、政府のコストをコントロールする政治の可能性をいう。
つまり、完全成り行きベースなら、財政再建にはおカネがいるといいたかったはずだ。

そんな政府よりのトンデモ発言をしていいのか?
と、経済評論家の百家争鳴議論はつづくだろう。

ジャパンディスプレイは、「中・台」の会社にバルクで売却されるのがきまったから、損は確定した。
しかし、問題は東京電力である。
福島の処理にいくらかかるのか?

そこで、おもいきり穿った視線で書いてみる。

2016年に経産省は、11兆円が22兆円になるとの試算結果を発表している。
この内訳として、廃炉費用が2兆円から8兆円になるといったのだ。

ところが、トリチウムの汚染水がたっぷりでてきていて、原発周辺がタンクだらけの状況で、間に合わない分は海に棄てるはなしまであったのはこの間のことだ。
もちろん、地元自治体と漁協関係者が、納得するはずがない。

外国も納得していないと、この間のブログで書いたし、じっさい韓国はふたたび「輸入拒否」を表明している。

それで、この処理をどうするのかというときに、画期的技術がないから、「ふげん」で開発された技術をつかえば、1トンあたり2000万円なので、すぐに兆単位の増加が計算できる。

わたしは、とある講演で国立大学の原子力技術の専門家である教授が、「わからない」けど「ざっと70兆円」というはなしを聴いたことがある。

じつは、この「わからない」には、金額の見積もりだけでなく、時間もふくまれていて、おなじ教授が「おおむね最低1000年」と発言した。
だいたい百年単位であたらしい技術が確立されるはずだから、1000年でも10回しかあたらしい技術に期待できない。

となると、1000年で70兆円なら、一年でいくらなのか?
とはいかないから、現在をもって、はっきりわからない、というのがほんとうなのだ。

むしろ、科学を志望する学生を、原子力事故の後始末というしごとに、1000年間ものあいだ人材をたやさずに供給できるのか?
それは、どんな仕組みで可能なのか?さえも、見当がつかない。
「源氏物語」は、1000年間読み継がれてきたが、ことはリアルな事故処理なのだ。

だから、きっと小林喜光氏は、化学人としての矜持をかけて、まずはおカネがかかるから、消費税の増税はすくなくても年金や医療費につかうのではなくて、事故処理に必要なのだと主張したにちがいないとかんがえる。

つらいのは、ここで述べた事実を、こわくてだれも言わないから、ただ「増税容認発言をした」という、部分を切り取っただけのはなしになってしまい、きっと労働界や消費者からも反発をうけることになるのが歴然だからだ。

「今日の事故現場」という報道などだれもしないし、「風評被害」になるといってむしろ遠ざけるのだろう。
中途半端な知識しか国民にあたえず、溶け出した「デブリ」を取りだす作業がうんぬんという報道も、わかったようなわからないような。

そもそも、放射能たっぷりの「デブリ」を取りだしてなにがしたいのか?
ひとが近づくことも触ることもできっこない。
それで、「廃炉」が進んでいる、とでもいいたいのなら、国民は「1000年」をどうやって耐えるのか?

わたしたちは、そういう国に住んでいるのである。

ダチョウは敵から逃れて、もうだめだと判断したら、すさまじいはやさであのちいさな「頭」だけがかくれる穴を掘って、そこに頭をいれて敵がどこかに行くことを待つという。
もちろん、敵がそれでダチョウを見失う可能性などありはしない。

見えなくなれば、こわくない。
一瞬の平穏ののち、このダチョウはエサになる。

わたしたちは、ダチョウになってしまったのか?

経済同友会は、この深遠なる代表幹事の発言を、ダチョウとしてではなく、人間として受けとめられるのだろうか?
おそらく、ダチョウの会員もいるだろうが、ぜひとも「だいじょうぶ」なすがたで、つぎは国民をダチョウから人間にもどしてもらいたいものだ。

経団連と政治という化学反応がとまってしまった国の、せめてもの希望が経済同友会である。

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