「BRICs」とは、2003年にゴールドマン・サックスのレポートで、B:ブラジル、R:ロシア、I:インド、C:中国、s:南アフリカの5ヵ国を、今後の成長が期待できる「新興国」として、投資家に売り出したことを発端とする。
なかでも、このレポートで「大文字」表記している4ヵ国(つまり「s」の南アフリカを除く)は、広大な「資源国」でもあるために、2050年にはGDPで世界上位6ヵ国に入ると予想されたので、大注目を集めることになった。
現在GDPで世界3位に位置するわが国でいうと、既に中国が2位なので、同時期には、世界上位6ヵ国から「外れる」という予想になっていることに注意したい。
BRICsは当初、勝手につけたグループ名だったので、とくに「機構」というものではなかったけれども、その注目度があがったことから、徐々に「機構らしきもの」になってきている。
既に、「首脳会議」は、今年で14回目となり、この会議の下に「フォーラム組織」を形成していて、まさに「ひょうたんから駒」状態なのである。
今年の外相会議は、5月に中国を議長国として北京で開催されて、習主席がオンライン演説を行ったと、スプートニク社が伝えている。
また、翌6月に開催された首脳会議後の同月27日に、イランとアルゼンチンが、「加盟申請」をしたと、翌日の28日付けロイターが伝えている。
なお、同記事で、アルゼンチンの加盟申請については、ロシア外務省の報道官の発言として伝えているから、リークである。
さらに今月4日には、同フォーラム責任者であるプルニマ・アナンド氏が、「トルコとエジプト、サウジアラビアが速やかにBRICsに参加する可能性がある」と、イズベスチャ紙のインタービューにこたえている。
ちなみに、わが国はウクライナに関係して、ロシア政府から「敵対国認定」を受けているなかで、ロシア国防省は26日、大規模軍事演習「ボストーク2022」が8月30日から9月5日まで行われると発表したことに対して次のようにスプートニク社が伝えている。
日本の磯崎官房副長官は28日、日本政府は外交ルートを通じて、クリル諸島南部(日本側の定義では「北方領土」)を今度の演習から除外するよう「強く求めた」と明らかにした。
対して、ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は、日本政府は太陽が西から昇ることを要求しているのと同じだと揶揄した。
こうした「動き」を、日本の既存メディアは、ほとんど報じていない。
BRICsの「組織的成長」が意味するのは、対米・対西側における明確な「反対」の表明で、これは一義的には「国連秩序の否定」でもある。
このことは、スプートニク社が6月27日に伝えた、中国外交部国際経済問題課課長の名前も記載した発言として、BRICs拡大の目的は新陣営の形成ではない、にその本意が透けて見える。
なぜなら、前月の5月半ば、王毅外相(外交部長)は、中国側はBRICs拡大プロセスの開始を提案すると発言していて、BRICsの開示性と包括性を誇示し、プレゼンスと影響を高め、全世界の平和と発展へ大きく貢献する一助となるとの考えを示している、からである。
いつもの「ダブル・スタンダード」であるから、かえって「本音」がわかりやすい。
しかしながら、隠された二義的な「ナショナリズムの台頭」という切り口で見れば、「西側=グローバル全体主義」にすると、その対立構造が明確になるのである。
このブログでも書いてきた、習政権の、共産主義・全体主義のなかにある、「ナショナリズム=毛沢東主義」が、鄧小平以来の改革開放路線(グローバル全体主義)と対抗している複雑さを秘めていることを思い出すとよい。
なので、グローバリズム代表格の、ジョージ・ソロスが習政権を容赦なく批判するのである。
ここで、「C国」以外の立場はどうか?をみておくと、ブラジルとロシアは完全な反グローバリズム、インドは中立、南アフリカもどちらかといえば、反グローバリズムだ。
すると、グローバリズムで稼いでいる、ゴールドマン・サックスの思惑を大きく超えたのが、いまのBRICsだといえる。
これは、グローバリズム勢力=国際金融資本やら軍産複合体、世界経済フォーラムからしたら、育ててみたら「ノーコン」になった、を意味するのである。
彼らからしたら『フランケンシュタイン』をつくってしまった。
伝統的に軍産複合体の「手先」である、アメリカ民主党バイデン政権が、高齢の大統領に頭を下げさせてでも、原油の増産を頼み込んだサウジアラビアをして、BRICs加盟に邁進させた「愚策」は、あえて、アメリカを崩壊させて共産化したい、というなら成功しているが、「な、はずはない」反動が共和党の存在だ。
それで、自暴自棄になったペロシ連邦下院議長が、台湾を訪問するかもしれないところまでやってきている。
そこまでして、大陸を刺戟して武器を消費したいのか?
これはもう、ウクライナが「収まっている」からだろう。
とはいえ、「ガス供給のロシア依存」が決定的のヨーロッパ側は、結局のところBRICsに跪かないわけにはいかない。
これは、サウジ加盟後のわが国もおなじなのである。
わが国に「親ロシア政権=ナショナリズム政権」が誕生する気運がみえないのは、国際情勢を国民に伝えない「効果」だといえる。
この点でも、ゴールドマン・サックスの予想をはるかに超えた「凋落」が、わが国に起きるのだろうけど、それがどんな悲惨になるか?
まことに歯がゆいかぎりなのである。