名称でいえば、「MJ:三菱ジェット」から、「MRJ:三菱リージョナルジェット」となって、最後に「MSJ:三菱スペースジェット」に変名して、とうとう放棄された。
一体全体、なにが敗因であったのか?は、これから専門家による解説がかまびすしいことになるかとおもうけど、研究開発やらなにやらの予算を国家に依存する体制ができあがっているから、じつは専門家の「公式見解」ほど信用できないのは、流行病とその対策とされた注射薬にまつわる話と構造的にはおなじなのである。
そんなわけで、文系素人目線からの敗因を探っておきたい。
なお、MRJについての批判的な邪推は、ずいぶん前にも書いたから、今回はそのことの続編でもある。
まっ先に重要なのは、日本経済の発展に何の役にも立たないばかりか、邪魔ばかりする「経済産業省」が、本プロジェクトの言いだしっぺであったことだ。
それでまた、邪悪なNHKが放送していた、『プロジェクトX~挑戦者たち~』という、プロパガンダ番組が、「YS11」をテーマに前後編の2本を放送したのが、2000年(平成12年)7月11日、18日のことだった。
ここでは、当時の通産省の赤澤璋一課長が旗振り役を頑張ったことを「前提」とした、ストーリーになっていたことに注目したい。
赤澤氏は、1941年(昭和16年)に、東京帝大法学部から商工省に入省し、すぐに海軍経理学校に入って、その後、戦艦比叡に主計将校として乗艦した経歴のひとだ。
いわば、商工省⇒通産省⇒経産省の有力OBとして、輝かしい業績を残した人物として、放送された。
この人気番組が、その後の国産ジェット旅客機開発プロジェクトになった、というと、邪推が過ぎるかもしれないが、俗人しかいないのが官僚の世界だとすれば、あんがいと無視できない。
なにしろ、経産省が国産ジェット旅客機開発プロジェクトを言い出したのが、2002年のことなのだ。
なので、放送後になにか企んだ可能性があると、邪推するのである。
それでもって、国家予算をつけて、事業者を募集したけど、手を挙げたのは三菱重工「だけ」だという、根回しのよさもある。
もう、YS11(赤澤氏)のパターンの、いつもの焼き直しなのである。
この点で、東大(文系)は「コピー化:ワンパターン化」に優れた人材を輩出する、専門校なのである。
わが国のジェット機開発プロジェクトで対比をなすのが、「ホンダジェット」だ。
「開発の歩み」をみれば、こちらは1986年からの取り組みとなっている。
ただし、ホンダには、自動車製造分野の進出で有名な、通産省からの嫌がらせを受けた歴史がある。
「狭い日本に自動車メーカーが多すぎる」と、何様なのか?文系の役人が、二輪車のメーカーだった本田技研がやりたがった、自動車開発を邪魔したのだ。
民間事業を支援するつもりは毛頭もなく、自分たちの思うように経済運営させたい、という、「致命的な思い上がり」が、この役所の伝統的な思想であって、これはいまも変わらないばかりか強化されている。
世界で最低の成長率となった、日本経済低迷の犯人のひとりだ。
そんなわけで、ホンダは、ジェット機開発にあたって、拠点を最初からアメリカに置いた。
これを、日経クロステックにて、ホンダ エアクラフト カンパニー社長兼CEOの藤野道格氏が、2021年1月20日付け記事に、「日本にいたら成功しなかった可能性もある」と告白している。
直接役所を批判する愚は犯していないけど、やんわりと語っているのである。
三菱が失敗した要因には、カネも出すけど口もだす、しかも技官ではない事務官がしゃしゃり出るから、どんなに三菱側に迷惑だったかは、今後も三菱からは漏れてこないだろう。
天下の三菱をして、防衛分野でも国家予算がほしい乞食に落ちたからである。
しかしながら、直接的なネックになったのは、アメリカ連邦航空局(FAA)が発効する、「耐空証明取得」つまり、「型式証明」が獲れなかったことにある。
これがないと、事実上世界で販売できない。
YS11がぜんぜん売れないで失敗したのは、「売ること」を役人が考えるのを忘れていたからだったけど、今度は、型式証明がなくとも、どんどん販売した。
結局ぜんぶの契約が破棄されて、航空会社から損害賠償まで請求されるマヌケになった。
たぶん、経産省の文系が、「何でもいいから売れ」と三菱に命じたのだろう。
しかし、もっと悲惨なのは、国土交通省なのだ。
この役所は、飛行機事故があると「事故原因の調査」はするけど、世界に通用する「型式証明」を出すことができない。
自動車までの「型式証明」しか、技術対応できないのである。
けれども、自動車なら世界に通じる。
それで、電気自動車(EV)だというトンチンカンは、また別次元なのである。
三菱の悲劇は、わが国の役所の無能の結果なのだ。
ところで、三菱重工の株主は、経産省や国交省に、損害賠償を求めないのか?
この二つの役人たちは、きっと「三菱重工がバカだから」と高をくくっているにちがいないほどの「バカ」なのだと、証明されたのに。